「ブギーナイツ」1997年アメリカ



ポール・トーマス・アンダーソン監督 バート・レイノルズ マーク・ワールバーグ

「これはなかなか面白い〜んだけど、僕は70年代後半以降の洋物ポルノにはよっくお世話になってる方なんで、あの安っぽくもアブラっ濃いXXXな雰囲気がもっと欲しかったかな〜(笑)
「若いポルノ男優を軸にすえた70年代から80年代初めの懐古趣味映画ね・・そこに青春モノの味付けをして、群像劇にもしたかったという感じ?」
「あ。なんかクールですな、今日の女史は(笑)」
「ていうかコレ、わたしには・・まぁ楽しめたけれど長かった・・描きたいことがいっぱいあったっていうのはいいけれど、なぁんか途中でどうでもよくなっちゃう・・っていうか、もうちょっと全体にシェイプアップしたら?っていう気がしたよ」
「ま、ね。この映画にはいろいろな楽しみ方があるとは思う。オープニングの長回しなんか実に爽快なノリだよね、そして70年代ディスコの懐古趣味。エルヴィン・ビショップ♪とかの音楽も懐かしいし、ハリウッド大作なんかにゃ見向きもしないC級ポルノ映画出演者やスタッフたちの素人っぽさとか仲間内なパーティ風景、時折挿入されるおバカなアクション映画風のレイノルズ作品、さらに筋立てとしても・・女史が言うとおり次第に群像劇になりそうでいながらなんとかディグラー君に収束させていこうという語り口の諸々で語られているのは、要するに若さであり、くっだらない映画への愛であったりする・・」
「狩刈くんたちが昔やってたエログロスプラッター映画作りとそこは似たような青春群像ではあったよね〜ってわたしも思い出さずにいられない(笑)」
「すいませんね〜懐かしいでしょ?ひとたび思い出すと歯止めがきかないくらい次から次へと思い出すでしょ〜?」
「おかげさまで赤面モノ(爆)だから、そうしたなんていうか、安っぽいモンに夢中になれる熱意っていうか、それが若さの燃焼の熱さだ〜なんて言い切れる人にとってはすごく面白いだろうな、っていう気はする。ただそれでも全体にもうちょっとスキッとした作りでも良かったんじゃないかしらって思うだけ。たとえばコメディとして一本スジを通すとか・・」
アレもコレもやりたかった、っていうのはあったんだろうな。だから僕が最初に言った洋物XXXな雰囲気、ダミアーノ監督とかさ、ミッチェルブラザースとかアネット・ヘヴンとかベロニカ・フォス・・じゃなくて(笑)ええと、誰だったっけ、ベロニカ・・ええと、まあいいや(笑)要するに70年代ポルノのテイストが薄まっちゃってる、とゆー不満はある」
「はいはい(笑)要するにもっとアヘアヘなシーンの演出もちゃんとやってね、ってことでしょ?」
「そ〜なんです(笑)・・ていうかさぁ、ま、ジュリアン・ムーアじゃそうはいかないよね〜ってことは百も承知で、でも映画作りとして考えると、たとえばバート・レイノルズが自分の映画に『傑作だ・・』と感動するんなら、そこは僕ら観客にもそれなりの感動が伝わってこないと、ただのご都合主義でいかんよねぇぇ〜ということで」
「あらら急に真面目なこと言っちゃって(笑)でも同感。ところどころ観客をバカにしてるっていうか、エモーションのシンクロをスッ飛ばしちゃうところもあって、たとえば最初にクラブの仕事から朝帰りしたエディ君に対して母親が猛然と噛み付くあたり。あららこのお母さんどうしてここまで逆上してるのかしら?ああ、アル中かぁ、でもそんなことをここで掘り下げるより今はエディ君を勘当同然、家出同然にしておかないと後々カレシに期待されるはずのハングリー精神とか浮かれ騒ぎとかその後の凋落とかのコントラスト、メリハリが発揮されないしね〜って感じ(笑)そういう雑な、っていうか、さもありなん、っていう予定調和感で主人公が有頂天になったり転落したりしていく中盤以降、それに最後はなんとかリカバリーしていこうとする気持ち、バート・レイノルズとのカンドー的な和解なんかも、全体として『まあ、そうでしょーよ、ありがちな作り話ね』って感じで脚本が見え透いちゃうの
「けどこれはディグラー君だけに着目すればあくまでもまず予定調和なストーリーありきの作り物映画であって・・そんなストーリーなんてものは、実は僕にはどうでも良くってね(笑)この映画はあんまりマジに見るもんでなくそれよりディテールを楽しむのかな・・っていうトーンが最初の長回しにあったような気がしたし。ハイファイ売りの黒人の彼がひょっこり大金を手にしちゃういきさつとかはタランティーノ風なマンガだし、妻を殺して自殺しちゃう製作主任の滑稽さとか、バクチク鳴りっぱなしのフランク・ザッパな金持ち(笑)のところでアホな撃ち合いとか、とにかく見ていて飽きない展開だけはあった。その反面、確かに妙に長くダルく思えるのは、ところどころにBGMを聞かせたがってるようなカメラの長い凝視があったせいで、それは役者たちの演技がもっと真に迫っていたらもっと印象的に強烈だったはずなのにっていう恨みもある。この映画は実はほとんど役者たちに演技らしい演技をさせてない・・役者をそこに置いてただカメラを回したっていうシーンがすごく多かった」
「若い監督だから細部に対する思い入れをバシっとキレなかったのかも・・演技のことを言ったらジュリアン・ムーアが子供と引き離されちゃう家裁の調停で泣くあたりは、エモーションが深まってたよね・・」
「だよね。けどヘザー・グラハムがリムジンで街頭セックスするあたりは無闇に長くてね・・全体に予定調和な物語の場合、各シーンでナニを伝えたいのか、映画のベクトルがどこに向かっていってるのか、観客には大体すぐに分かってしまう、それなのに監督の思い入れがスカラー的に強すぎて寸止めに出来なかったり、あえて長々と見せてしまったり、といった不手際はあったとは思う・・けどコレ、そんなにツラくあたる映画じゃないし」
「わたしとしてはいつか見た似たような<54☆フィフティフォー>だっけ?あれよりは良かったけどそれは主人公たちがイヤミなスター志願の上昇志向を振りかざさないでいてくれた、ポルノならポルノでやっていこうっていうようなハラを括った爽やかさが気持ちよかったって感じ、かな」
「ま、所詮がポルノ映画、っていう意味ではレイノルズ監督ほか全員が使い捨ての、ね、入れ替え可能なスタッフ・俳優ばっかり。つまりC級映画産業においては、登場人物は全員が使い捨ての消耗品である、というのがポルノの世界。なればこそ録音係や製作主任にいたるまで一人ひとりの人生にスポットを当ててやりたい、素描にすぎないにせよ例えばプロデューサーの大佐についてもちょっとしたエピソードを入れてやりたい、というこの映画全体の優しさは、僕には心地よいって気がする。ただ全体のまとめかたについては女史の言うとおりだな、とも思ったね」
「その意味ではもっと人情話っぽくても良かったかな〜って思うんだけど」
「ついでに言えば、同じ題材でホンモノのポルノとして撮ったら〜っても、思うんだけどね(笑)」
(2005/05/22)




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