「血ぬられた墓標」1960年イタリア


Mバーヴァ監督 バーバラ・スティール

「B級カルトホラーの傑作でファンには伝説的な映画なんですって?」
「そうなのです!」
「です!って、ずいぶん気合い入ってるわね」
「Bスティールは僕の銀幕の恋人たちの一人でね、新旧スクリーミングクイーンたちの中でも群を抜いてる。特にあの病弱そうで神経質そうでいつも恐怖と仲良しの顔はぞくぞくしてたまらん。ガキみたいな大きな瞳。繊細に尖った顎。あの顔でフェッリーニの<8 1/2>にも登場した。読心術の芸人に頭の中を覗かれて、やっぱり恐れおののく女の役だ。さすがの巨匠も彼女の目に惚れたんだ」
「とまあBスティールへの熱い想いは置いておくとして、全体に古典的な怪奇映画ね。おどろおどろしい先祖代々の呪いとかゴシック風のセットとか。全体に後のコーマンプロのボー映画を思い出させるし、この影響力はありありって感じ、その意味ではやっぱり映画史的傑作なのかしら」
「この映画、原作はロシアの文豪ゴーゴリ。例えばボーの陥穽と振り子を原作にしたコーマン映画<ペンデュラム>なんかは、Bスティールも出ていることもあって、この作品と共通するものが多いとは思うな、先祖代々ゆかりの謎とかいったあたりも。とはいえこっちの方が断然いい! なにしろ今回の彼女は一人二役! 存分に堪能できるしね。さて、この作品で僕が一番感心したのは実はオープニングでありまして・・」
「中に釘が生えた鉄仮面?を被せられるところ?」
「彼女の殺し方としては、あれ以上納得性を得るものはない!」
「はいはい(笑)おつきあいしましょ(笑)」
「<ペンデュラム>でもこの拷問具『鉄の処女』が出てくるけれど、あっちでは彼女は生き埋めみたいにして殺される。ま、それもいい。いいというか、彼女には生殺しが似合うわけですよ、永遠に続く死の恐怖のなかで、恐怖のゆえに死んでいくみたいな死に方がね。ひくひくしながら弱っていってって感じかな。ところで、後々の世になって棺が開けられて王女の死体が出てくると彼女の顔は釘の穴だらけ。あそこは泣かせるねぇ。それなのに復活するとカッとあの大きな目を見開いて、ギロっと睨む、あのおぞましさは、いやほんと、いいねぇ。彼女に匹敵する独特の雰囲気を持つこの手の女優はざらにいなくてソルダッド・ミランダくらいかな、Sミランダの方はやや生身を感じさせる、肉感的だけれどね、ま、いいや。繰り返すけどカッと見開いた王女の目。そしてその目を傷つけることで王女にとどめを刺すという展開。やはりあの目なんだ! これはBスティールとその恋人たち(ファン)!のために作られた映画なんだよ。いくつくらいだろ、二十代半ばってところ? 年齢不詳だよね彼女。モノクロがよく似合うというか、カラーで見ると、ちょっと雰囲気違 うんだ。生身らしさが強調されてしまう。だから僕は、思い入れからいったら例えばDクローネンバーグの<シーバース>とかで、もうお婆さんになってしまった彼女はあんまり見たくはないな。ところでMバーヴァ監督といえば・・って、あれ女史、どっか行っちゃったかい?」(1998.4.30)

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