「新・愛と復讐の挽歌」1992年香港


テイラー・ウォン監督 ジャッキー・チュン レオン・ライ ロザムンド・クワン

「香港電影と言えば、<男たちの挽歌>シリーズといったフィルム・ノワールの百花繚乱が魅力のひとつだけど、なかでも僕は、この作品はとてもハイクォリティだと思う」
「わたしはあんまりそのテのドンパチ映画は好きになれないの・・ウォン・カーウァイ監督の<天使の涙>だって乗れなかったし。でも、この映画は、まあカチッと出来上がっていて短いし、楽しめた」
「僕もね、殺し屋とか香港ヤクザが警察とバンバン撃ち合う類の映画は好きこのんでは見ないんだ、結局、どれもこれも同工異曲だからね」
「同工異曲なんて難しいコト言って・・」
「四字熟語ってなんとなく香港テイストでしょ?(笑)それはともかく、この作品は、刑事と殺し屋が同じホステスを愛した、それだけで出来てる映画で、このホステスを演じたロザムンドが実に存在感をアピールしていてね
「狩刈くん好みよね彼女は。ちょっとバタくさくて」
「そこがいいんだよ。男二人はそれぞれアッサリ系で、すんごい美男子でもマッチョでもないヤサ男。彼らが彼女に惚れるのは、なんか分かるなあ〜〜」
「まあね。この映画で一番肉厚な立場にいたのは彼女だったかもね。あのクラブではナンバー1のホステスで、スティーヴ・ブシェーミの香港版みたいな(笑)聾唖の客引きの面倒も見てやったりしていて、姉御って貫禄もあるし、とにかく海千山千の経験をしてて、ちょっとやそっとではビビらないけど、でもどこか可愛い感じ、気丈さと裏腹に孤独な感じ、そんな風に思ったよ」
「まさに僕の印象とピッタリ。この映画は本来なら彼女の映画だね」
「でも・・だからこそ最後のジャッキー対レオンの対決になっても、どうも彼女が煮え切らないっていうかなあ・・渦中にある女の側のエモーションの深まり、葛藤がなかった」
「うーん。彼女自身にも迷いがあるんだよね。ああいう境遇の女性は必要以上にクールを装わなきゃいけないんだよ、保身のために・・」
「へぇよく知ってるね、そんなこと(笑)」
「ところでジャッキー扮する殺し屋の存在感はとにかく圧倒的で、あれは<ブラックレイン>の松田優作を完全に意識した、メを向いた殺気だった。あの毒気に煽られると、僕だって彼にフラフラついて行っちゃうかも(笑)」
「なにも爆弾巻いてなくても良かったけれどね。かたやレオン刑事はというと、彼、どことなくノッペリした俳優で<天使の涙>の無表情な殺し屋はハマってたけど、今回はちょっと迫力不足だったかも」
「そこを同僚のン・マンタがコミカルにカバーして彼をヒーローのように仕立てていたね。でも完全無欠なヒーローでなく、拳銃なくしたりするちょっと頼りなさの残る熱血刑事という役は、僕は彼には似合うと思うな」
「とにかく映画のスケールっていうか、物語の中心はとても小さくて、ただの三角関係ね。でもそれだけにもっと感情的に深まって欲しかったし、もっと言えばジャッキーの出番が少なすぎて、彼の強引で暴力的で勝手気ままな振る舞いがロザムンドへの『一途な愛』としてハッキリ伝わってこなかったこと、そこは残念だった。彼の凶暴さはこの映画のひとつの魅力だったけどね」
「そのあたりはね、実はこの作品には続編ていうか前編ていうか、とにかくジャッキーの生い立ちから始まってロザムンドへの愛を描いた作品が別にあって、まあ多分、製作者側もそのあたりに物語の残っちゃってる余地を十分感じていたんだろうな・・」
「まあとにかくわたしはジョン・ウー監督みたいに火薬の量で勝負するだけの映画にはあまり興味はないんだけど、その火薬が登場人物のエモーションの深いところに火を付けるような作品だったら、また香港ノワールも見てみたいよ」
「そんじゃ<友よ風の彼方に>を見なくちゃ」(2000.7.20)

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