「アルビノ・アリゲーター」1996年アメリカ

ケヴィンスペイシー監督 ゲーリーシニーズ フェイダナウェイ

「無計画の犯罪は最後にどうなるか・・という映画だわね」
「押し込み強盗に失敗した三人組が、別件で警察に追われていた男の潜む酒場に立てこもってしまい・・・あと、何だったっけ(笑)」
「なんとなく予想された結末を迎える(笑)という映画」
「立てこもりに至る導入の仕方は、結構イイと思った。どーしてこんなことに??って感じの巻き込まれ方。そして早くも仲間割れの気配がする三人組」
「この映画はGシニーズの、ワンパターンながらテンション高い演技がなかったらかなりツライ、見所が少ない、間が持たないと思うのよ」
「ま、けなすことは誰にでも出来るけど、じゃどういうところをどうすればもっと面白くなったのかな・・実は僕も大体は同感で、もっと面白くなるはずだったろうに、とは思うんだけど、まあそこそこ満足しとくかっていうか(笑)面白かったけど」
「籠城事件の映画といえば<狼たちの午後>。警察との駆け引きや人質たちとの応酬、マスコミ報道・・そうした一触即発状況のなかでギリギリ胃が痛むみたいなサスペンスが・・この映画にあったかしら?」
「ない(笑)。道具立てとしては、あった。だから尚更に、ナイ。でも、そういう映画をまた作ってもねぇという気がする。見終わって僕はこれ、フェイダナウェイのドラマだったって気がするけど」
「ま、わたしもそうは思うの。仲間割れを誘おうとかして、さすがにアレコレと危ない橋を渡ってきた海千山千の彼女だけのことはある、一番スゴイ演技をしてたから思わず唸ったわ。特にあの化粧のシーン!でもそこには最後まで映画の焦点が合わされなかった。なんていうかしら、ちょっとあそこまで筋金入りの演技は要求してなかったのに図らずも彼女がやってくれちゃった、脇が主役を食っちゃった、実は誤算だったんじゃないかって思っちゃった」
「警察は三人組が犯人ではなくて、元から追っていた別人が籠城犯だと思っている、そこがこの映画の最大のトリックではあったし、マヌケ三人組がそこのところをどう知るか、どう利用するか、けれどどう失敗するか、そういうサスペンスに僕は期待したんだな。その別人はまたカネとブツの引き替えとかで外部との連絡をなんとかして取らなきゃならないわけだし・・で彼と三人組との知恵比べ。で、そこの展開は<身代金>で見せたようなGシニーズの悪巧みの本領発揮なんだろうって・・ところが」
「意外にもというか予定通りに彼は善悪の彼岸に立てない、倫理的に複雑な人物なのね、だからこそこの映画、見たかったんだけど」
「シニーズのファンなの?」
「恥ずかしながら、そうなの」
「僕も!(笑)彼はいつも内部に葛藤を抱え込んでいて、自己相克にジタバタしてる、それがいつも・・まあ<ガンプ>とかは別にしても、大抵は身の破滅を招く。けどその苦悩があるからこそ最後まで憎めない・・ドラマチックな風貌でないだけになおさら人間的な弱さを伝えるよね」
「ま、彼を語るには他の映画の方が良さそうよ、少なくともこの映画にはMディロンがいて、配役から行ってわたしには結末は最初から分かってた(笑)。ディロンとシニーズの二人を一人の人物に融合させて、それをシニーズが演じていたら、もっと厚みのある人間像であり結末になっていたと思うわ」
「ははは、シニーズが生き残ったら、それはもう葛藤の極みだよね(笑)」
「総じて警察の造形・・も造形なんて言えないほどにお粗末な描き方。事件中の緊迫感のなさは三人組のマヌケさの反映だとしても、人質側の描き方もまるで不十分。魅力ある人物はダナウェイとシニーズだけ。あの活躍美人のテレビレポーターも邪魔。あそこはゼッタイにウダツの上がらないオッサンレポーターにするべき」
「ケヴィンスペイシーその人とかね(笑)。要するにこの映画の焦点はどこに合っていたかというと、ガランとした事件現場の酒場。無闇にダダッ広くて薄ら寒いようなフロア。人気なく虚しく連帯感も目的意識もない展開にはピッタリの舞台空間だった。そう、これは舞台で演じる類の密室劇にはなりうるとは思うね」
「遅すぎたけど最後にグッとこの映画のテンションは劇的に高まる・・そこはちょっと見応えはあると思った、ここでは明かさないけど(笑)」
「きっともう分かっちゃったよ(笑)」(1999.1.9)

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