「8mm」1999年アメリカ


ジョエル・シューマッハー監督 ニコラス・ケイジ

「<セブン>だの<ザ・ゲーム>だのを書いたAKウォーカーの脚本を、<バットマン>シリーズのシューマッハー監督が演出した、というわけで、これはまた内容・映像ともにダークな映画
「う〜〜〜〜ん。ちょっと、楽しめなかったなあ、わたし。ズンとは来たけどね」
「まあ一般的に女の子ウケする映画じゃないよね。SM殺人の8ミリ映画の出所を探るように依頼された私立探偵が、ロスだのNYだののエログロ・アングラワールドに潜入して調査を進めるうちに、なんと仕舞いには・・という内容だしね。僕は好きだけど(笑)」
「人間の欲望の暗部を抉った、という感じもあるけれど、それだけじゃこの映画はツメ切れてないようにも思うの。罪は描かれているけど、それに相応しい罰の部分ていうか、罪のいかにおぞましいものか、というところは踏み込み不足だったし。この作品のニコラスは決して笑わない。最後に赦しを得たように思って、やっと微笑む」
「その赦しが、結局は救いようがなくてね。そこは<セブン>と似たような趣向だよね。ところで僕はCイーストウッド監督の<タイトロープ>とかも思い出した。好むと好まざるとに関わらずダークサイドに堕ちていく人間の姿というのは、僕には魅力的に見える」
「もう少し練り上がった工夫があっても、という気はしたのよ。奥さんとの会話がいつも同じでちょっと平板だったとか、最愛の娘がまだ赤ちゃんでニコラスの愛情表現がモノ足りないとか、殺人映画の被害者の母親との心の交流みたいなものがもっとはっきりと欲しかったとか」
「ちょっと今回のニコは、演技が中途半端だったよね。演技というより人物設定とか人間関係とかの問題もある。全般的に例えば彼の家族を軸にした『絆』とか『家族愛』みたいなものをもっと前面に出して、それとの対比で、アングラエログロワールドのおぞましさ、その深みを描くみたいなやり方もあったかも知れないな」
「それはちょっとありがち。わたしは狩刈くんの大好きな<ブルーベルベット>とかも思い出したの。日常生活の奥底に隠されている異常な世界を描くところ」
「けれどその異常さというのは<ブルーベルベット>とはちょっと違うよ。不可知論のリンチに比べて今回のモチーフは単なるスナッフムービー。で、実際にそれを作ったエログロ映画会社の連中たちと、一方では大金を出してそれを作らせた大富豪。そのふたつの狂気の間に、どちらにも属せない小市民で家庭第一のニコラス、という図式。結局ニコラスの日常生活とは異質な世界という描き方にすぎなかったし」
「ああ。そう言われると尚更ニコラスの、あの仕置人的な結末の背景は見えないし。止むに止まれぬ衝動っていうかたちで映画は描きたかったのかもしれないけど、市民的正義感とか被害者や遺族への同情とか、またはあの種の世界への嫌悪感や恐怖感とか、なにかしら説得力ある動機が欲しかった」
「まあ、僕なんかは、この映画見ても、そ〜ゆ〜世界もあるだろ〜な〜、くらいにしか思わないから(笑)、被害者の敵討ちをしようなんてニコラスの行動は心の底から共感はできない。一般の倫理的、道義的な常識?に照らし合わせてみても、決してニコのとった行動は良しとされないだろうし。であれば、もっと違った結末もありえたはずで、俳優としてのNケイジ自身も、そこが納得出来てなかったんじゃないかあって思う」
「例えばニコ自身も殺人の誘惑に抗しがたくなって快楽殺人鬼みたくなっちゃうとか?(笑)」
「(爆)そりゃもっと納得できないよ!」
「(笑)そうね。むしろただひたすらハイウェイを突っ走って家路を急ごうとする孤独で取り付くシマのないニコの横顔のアップ、とか、そういうイメージショット的な突き放しで映画を終えても良かったと思う」
「この映画、結構饒舌でね。あまり抑えが効いていない。それで却ってツメ切れてないのかもね」(2000.1.17)

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