「54(フィフティ★フォー)」1998年アメリカ


マーク・クリストファー監督 ライアン・フィリップ マイク・マイヤーズ

「楽しみたい映画だとは思うの。でも生理的にちょっと受け付けないの。こういう、なんていうか無軌道な若者映画は(笑)」
「無軌道な若者(爆)とは女史らしいお言葉だね。でも例えば<アナザー・デイ・イン・パラダイス>みたいに無軌道なことがカッコいいって風潮は確実に映画界の一部を席巻してるし、その元凶はもちろん<トレインスポッティング>とかにある(笑)」
「ま、あのテのバイオレンスもどきの犯罪的無軌道さが若い人にとって『自由』をはき違える元凶になってるとしたら、狩刈くんの心酔する<気狂いピエロ>なんか元凶の元凶ね(笑)いつの時代にもそういう作品はあったってことね」
「・・と、まあ、全然違うタイプの映画の話をしてもしょうがないけど、僕はこの作品は無軌道な若者映画というふうには見なかったんだけど。ニュージャージー州の19才の少年が、セレブリティばかりが集まるニューヨークの酒池肉林ディスコ54のバーテンになって有名人たちにチヤホヤされて明日のスターを夢見るサクセス物語だよね」
「ホントにそう思ってるの?(笑)」
「思ってない(笑)。一応そういうストーリーを構えて最後はそんなスターを目指した少年たちの青春群像って感じで締めくくったけれど、この映画が描きたかったのは単にディスコで繰り広げられるサーカスにも似た乱痴気パーティの数々と、マイク・マイヤーズ扮するディスコ・オーナーの圧倒的な存在感だね」
「そうなのね。時代は79年、昔のようだし最近のようだけど(笑)。それほど懐古趣味に走っているわけでもなくて、ただその頃、ヤクとセックスが氾濫する有名人御用達のディスコがあった、ということしか描いていないのよ。例えば主人公の少年からは、ホントにスターになりたいっていうような熱意とか努力とかが伝わってこないし、途中に出てくるソープドラマの新進女優とかもハングリー精神に欠けるし、だから二人のロマンスもどきも学芸会だし」
「役者たちはMマイヤーズを除いて全員、芝居の出来ないデクノボーだったからね(笑)。まだ<フラッシュダンス>とかの方が汗と涙でいいか(笑)本当はもっと細かい機微の豊かなドラマにもなり得たと思う。けど葛藤が感じられない。スターになるのを諦めたにしても、それが清々しい次のステップアップに繋がっていかないし、全てに渡って消化不良だね」
「スターへの憧憬っていうか、要するに、観客の方にも芸能界や有名人に対する熱烈な憧れと羨望がないと、ただ自分を見失っていく男の子の無軌道な映画っていう感じで、どうにもツライ」
「ところでMマイヤーズ。彼だけは、さすがの存在感だった。隠し金云々はともかく、あれだけ巨大なバビロン・ディスコの経営者という役回りは難しかったと思うけど、それが実にリアルに伝わったんだ」
「彼にはどういうわけか、秘められたヒューマンなものを感じるのよね(笑)人間くさくて、しかも独創的で。ドクターイーブルにしてもそうだったけど(笑)」
「ちょっとウォーホルを意識したようなワケの分からなさだったけど、彼の深みが唯一、この映画の奥行きを作ってた。さすがだ」
「ディスコのパーティの場面なんかは、もっとフェッリーニ映画を勉強した方がいいよ(笑)あまりにも平板。カメラを回しただけ」
「<ベルベット・ゴールドマイン>とか<ブギーナイツ>とか、ちょっとナツメロ風の70年代映画が話題になるなかで思うのは、じゃ80年代はどういうかたちで回顧されるかってことだなあ」
「狩刈くんの青春時代ね(笑)」
「そう達観しないでよ(笑)」(1999.11.6)

シネマ・ギロテスクに戻る