名阪カラーワーク研究会の
ミニ色彩講座(10)
均等色空間はどんな空間?


 まず、空間という言葉を聞くと、からっぽの三次元で拡がった世界を想像します。
宇宙空間なら果てしなく拡がる空間、部屋空間なら壁と床、天井で仕切られる有限の世界です。
とすると、色空間はそれらを色で満たした空間ということになりましょうか。

このページでは「均等色空間」を独断と偏見で解説したいと思います。

さて、均等色という言葉を聞くと、或る色で均一に彩られているという意味にとれて、均等色空間は均一な色で満たされた空間、と解釈したくなりますが、そうでは無いらしい!?
どうやら色のグラデーションの段階が均一な空間という意味のようですので、それだったら均等色差空間とでも云った方がよかったのに…と思ってしまいます。
しかし、uniform color spaceを直訳すると、均等色空間になる。仕方ないのでしょうね。

マンセルでは駄目だろうか?
さて、色彩を少し勉強した方なら、どなたもよくご存じのマンセルについて色空間を考えてみましょう。マンセルシステムは物体色用の色立体ですが、色相、明度、彩度の三次元で構成されているので無理矢理に三次元の色空間に置き換えてみます。
円筒形の箱を考えましょう。その上下方向の中心軸を明度にとります(下の図、左)。
 
 

上の図の右は、上から見た場合で、中心軸の各階から水平に彩度の枝を出してみます。枝は四方八方に出すことができますから、上から見た場合の枝の角度を色相に設定することができます。
大阪駅前のマルビルのような建物を想像し、中心軸にエレベータを設置したとして、1階を明度1とすると、最上階の10階は明度10です。そしてビルの外まわりの部屋を最も彩度が高い部屋と考え、エレベータまでの間には10室あるとして内側に向かうほど彩度の低い部屋になると考えます。
色相は東西南北の方位によって決まることになります。

こうして各部屋の色を、たとえば色相(南南西)、明度(3階)、彩度(エレベータから2つ目)、というように位置づけることが出来ます。
ただし、実在しない色に該当する部屋、たとえば、高い明度や低い明度で高彩度という色はあり得ませんからそこに色をいれることはできません。
さて、マルビル全体を空間に見立てるために、部屋の間仕切りや床・天井を取り払って色だけを残すことにします。そうしますとマルビルは、グラデーションされた沢山な色で満たされたビル空間になります。

マンセルシステムを作ったマンセルさんは、当時手に入れることのできた最も彩度の高い色材の色を、ビルの外まわりにおき、彩度10としました。
その色の明度が4ならば4階におき、4/10としたのです。

マンセルシステムの欠点
ここで、マンセルさんはひとつのミスをしています。
例えばルビーの赤色とエメラルドの緑色を、赤と緑の最も鮮やかな色と決めた場合、彩度を十分に比べることなく、どちらも彩度10にしてしまったことです。
絵具や染料、塗料などを網羅的に集めたとき、非常に高い彩度に恵まれている色相がある一方で、彩度開発の遅れている色相もあります。これは現代についても同じ事情だと思いますが…。
にもかかわらず、色相ごとに選んだ最高彩度の色材の色を一番外回りの部屋に置き、いずれも彩度10としました。

そして、内側のエレベータまでの距離を、均等な知覚的段差で(これを等歩度といいます)10に区切り、内から順に1,2,3…9と番号を付けたのです。
すると、彩度の段差は、同一色相については同じになりますが、別の色相の段差と比べるとどうでしょうか。
非常に鮮やかな色を10と置いた場合と、それより鮮やかさの劣る色を10に置いた場合と、どちらにも同じように中心軸との間を10に区切ると、彩度の段差が違ってきますね。
つまり、彩度段階が均等ではありません。

マンセルシステムの彩度段階はその後改良され、問題はほぼ解決されました。
しかし、まだ問題は残っています。
ビルの高さを、そして外回りからエレベータまでの奥行きの距離を、どれくらいにとればよいのか、つまり明度と彩度の段階の巾が同じにとれているのかという問題です。

また、東西南北の方位に対して、色相をどのような配置で割り当てたかという問題もあります。

物理補色と心理補色
美術家であるマンセルさんは画家の立場で、絵具の2色を混合して無彩色になる関係(物理補色)を重視し、その2色を色相環の対称的な位置に置きました。
具体例で云いますと、黄色の物理補色は青色ですから、黄色と青色を色相環の対称的な位置に、マルビルの模型についていいますと、南北180度の表と裏に置いたのです。

しかし、私達の目では心理補色という関係の色を反対色として知覚します。
黄色を見つめていると紫色に対して敏感になり、白紙に目を移しますと紫色の幻影が見えます。これは黄色光の刺激を反対色による刺激でうち消そうとする心理的な働きによるもので、私達は紫色を黄色の反対の刺激としているのです。
したがって黄色の補色は心理的には紫色なのです。
黄色と接して紫色があれば、紫色の感度が黄色の刺激のために上がっておりますので、紫色はすごく鮮やかに知覚されます。
このように、心理補色同士は最大の対比効果を演じ、配色に大きな役割を果たすということはご存じと思います。

しかし、色材の混合という調色効果を重視したのがマンセル色相環の色相段階ですから、色相の段差は心理的な面から見れば等歩度になっていないということになります。
以上のように、私達に馴染みの深いマンセルシステムは、色相、彩度などの組み立てにおいて均等色のカラーシステムではなかったということになります。
 
 
XYZ色度図

XYZ系からLUV系へ
そういえばCIEのXYZ系も均等色空間にはなっていませんね。
色度図を見ると一目瞭然です。 上図で見るように、色度図全体はベル型をしています。 スペクトル軌跡と呼ばれている曲線に青字で波長が刻まれていますが、波長の間隔は極端に不揃いになっています。 また、ベル型の右コーナー付近は赤色、左下のコーナー付近が青色の領域、ベル型の頂上付近は緑色の領域ですが、この緑色領域の波長間隔が特に広くなっていて、三原色の布陣が何となくアンバランスです。
実際に、或る色を色度図上に置き、その周辺に均等な色差の線を描いてみると円にはならず楕円形になり、しかも緑色の場合は楕円形が他の色の場合より大きくなります。

そのような不均等を改良したのが、CIE LUV系で、その均等色空間は三次元の直交座標を用いています。
しかし、三次元では図面による解析作業が難しいため、二次元の色度図にしたのが下のUCS色度図です。
 
CIE LUV系 UCS色度図 (ミノルタ計測器事業部編「色を読む話」より)

ベル型をしていたXYZ色度図が、ほぼ正三角形へと変わりました。右の頂点が赤、下の頂点が青、左の頂点に相当するコーナーが緑の領域です。三原色間のバランスが良くなりましたね。 スペクトル軌跡の波長間隔もおおかた揃ってきました。

なぜ、おおかたという程度にしか揃わないのか。
この図は感覚的な等歩度に合わせてつくられているので、幾何学的な間隔と感覚的な等歩度とがほぼ一致したグラデーションとなっているのですが、物理的に決まった波長間隔は感覚的な等歩度と一致するはずがなく、波長間隔が不揃いとなるのは当然なのです。  とくに、波長が極端に短くなる、あるいは長くなるあたりは波長間隔が詰まっています。
つまりその範囲は目による色の見分けがおおまかになってしまうのですが、その理由は色の見分けが鈍くなるためで、さらに波長が短く、あるいは長くなりますと、遂には紫外線や赤外線に移行し、光は目を通して感覚することができなくなってしまいます。
なお、黄色部分の面積が狭いのは黄色は明るすぎて黄色同士の色を区別し難いというのがわれわれの感覚だからです。

再びマンセルのこと
知覚的に等歩度ということは、例えば、「おっ、明るさが確かに増えたぞ」 というのが明度に関する一段階。すると、彩度軸については、「おっ、彩度が確かに増えたぞ」 というのが一段階。
ここで、マンセルに話を戻しますが、色相の段階もそのようにとろうとしても、中心軸から放射線状に彩度軸が出ているということは、色相と色相の間の巾が、外側に向かうほど扇状に広くなり、同じ色相段階でも彩度の低い色では小刻みに、彩度の高い色ではゆったり巾になります。

彩度の低い色、たとえばグレイに近いような色は色相の区別がはっきりしなくなりますから色相環をひとまわりする色相段階の数は高彩度の色よりも少なくならねばなりません。
しかし、マンセルのように、角度によって色相段階を決めるとなると、色相環を一回りする段階の数は低彩度でも高彩度でも同数となります。つまり、低彩度では区別できないような色相段階を無理矢理にとらなくてはならないという矛盾が起こります。

OSAは、こうしたマンセルシステムの欠点を改良するためにアメリカ光学会が開発した新しい概念のシステムですが、その色立体は多面体をいくつにも重ねて構成しているため、直感的な理解が得難く、色相の分布にも実情とのズレができているようで、まだ十分に満足できるシステムになっていないように思われます。

均等色空間を想定している表色システムには、ほかに、よく使われていてわかりやすいCIE LABがあります。
 
 

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