名阪カラーワーク研究会の
ミニ染色講座(11)

 
紅葉で染める
(この記事の一部は、「染織α」誌、No.250で編者が発表しています)
 花の色素として知られているアントシアニンは、花びらだけでなく、植物のあらゆる部位に含まれます。
葉に含む植物の代表的なものは、赤紫蘇、赤キャベツなどですが、秋になって赤く紅葉する葉にもアントシアニンが生成されます。
 
 秋を彩る、あの美しいモミジの色を、そのままモミジから抽出して染めてみたいですね。
紅葉の赤い色素はアントシアニンです。しかし、モミジは眺めて楽しむもの、自然の景観を維持するために、葉を叩き落とすようなことはせずに、落葉をいただきましょう。
染め方は「花びらで染める」のページで述べた方法に似ています。
 
 (1) 材料と色素抽出
 いわゆるモミジの紅葉と、ハナミズキ、サクラ、ニシキギの紅葉を使ってみました。
モミジは小さな葉ですが、紅葉期に雨風に遭いますと、樹の下一面、絨毯のように落葉しますから、それを掃き集めますと染めに必要な量が一度に集まります。集めた落葉からは、新鮮で赤い色をしている葉を選別します。 なお、黄色い紅葉の色素は、アントシアニンではありませんから、ここで述べる方法には適しません。
 
濡れている場合は新聞紙に拡げて一晩乾かし、翌日すぐに酒石酸もしくはクエン酸1%の水溶液に浸けます。(pHは、3程度になっています)
クエン酸は大きな薬局に行けば大抵あります。酒石酸も頼めば取り寄せてくれます。
抽出容器はガラス、陶器、プラスティック製がよく、金属製は厳禁です。蓋がない場合はラップをかぶせておき、ときどき混ぜ返して3日間以上おきます。混ぜ返すには箸を使うか、ゴム手袋をします。

 濃い抽出液をとるため、液量はなるべく少なめに、漬け込む葉を押し込んで液面から出ない程度とします。
集めた材料が多い場合は2回に分け、2回目の葉はポリ袋に入れて、ひとまず冷蔵庫に保存します。
そして、1回目の葉を取り除いて酒石酸を半量程度追加し、残りの葉を入れて、また3日間おきます。

 それとは逆に、一度に沢山の材料が集まらなかった場合は、採取するたびに漬けていきます。
なお、抽出液は蓋をして冷蔵庫内に保存すると、約半年間持ちます。もし、泡立つ様子が見えたら酒石酸を追加し、黴防止の食塩を添加してやります。
  ハナミズキの紅葉は一度に多量を集める機会がないと思いますので、少しずつ拾ってその都度、モミジの場合と同じように調整した抽出用の液に漬けていきます。
 サクラの紅葉は基本的に茶褐色をしていますから、赤い落ち葉を見つけたら拾って漬けます。モミジ以上に、フラボノール色素やタンニンなどが多く含まれますから、赤みの褐色系の色に染まります。

 (2) 染色
 染色は、あらかじめお湯で処理をして水に馴染み易くした絹を軽く絞り、葉を取り除いた抽出液に浸け込みます。あとはときおり混ぜ返しながら3日間の漬け染めをするのです。絹の量は液面からはみ出ない程度とします。
 漬け染め途中の2日目には食塩を少量(1%溶液になる程度)加えて溶かします。
染め終わると水洗し、陰干しすれば完了です。
 

ニシキギの紅葉で試し染め

抽出液には、アントシアニン以外に、フラボノール色素やタンニンが多く含まれていますので、茶みが加わったモミジらしい渋い色になります。
 表題の右に掲げた写真は、くすんだ赤色(真赭、マンセル記号では4R 4.5/6.5)に染まった絹ハンカチで、半年以上経っていますが色がほとんど変わっていません。
ニシキギの葉は小さいので実用向きではありませんが、試験的に紅葉を採取して染めてみました。葉の表面が蝋質で液が馴染みにくいため、抽出には一旦85℃まで温めて放冷し、その後は室温でモミジやハナミズキと同様、漬け置きで抽出しました。このように、水をはじく紅葉の場合は、抽出液の温度を一旦上げてやればいいようです。

 紅葉の無いシーズンは赤紫蘇で
 そのほか、紅葉以外に初夏から秋にかけては赤紫蘇の葉を使うこともできます。
スーパー売りの赤紫蘇一袋(約400g)に対し、酒石酸もしくはクエン酸の1%水溶液を、紫蘇と同量(400ミリリットル)程度用意してモミジの場合と同じように葉を漬けます。
 なお、クエン酸は手元に無いが、梅酢ならスーパーで売っているという場合は梅酢でもよろしい、うすめずに赤紫蘇の葉を入れます。
3日間以上漬け込んで液の準備が出来たら、モミジの場合と同じように漬け染をします。染色2日目には食塩を加え、3日、あるいはそれ以上の間の漬け染めをして、その後、さっと水洗して陰干しします。
紫蘇の香りのする、紫みの赤い色に染め上がります。写真は鮮やかな赤みの紫(マンセル記号では1RP 3.5/11.5)に染まったジャカード織りの絹プチスカーフです。

  赤紫蘇で染めた絹プチスカーフ


色が褪せたら、また染めよう
 「花の命は短くて…」と謳われたように、花や紅葉のアントシアニンで染めた色は褪せます。しかし、紅花のカルサミン色素も、同じように色褪せしやすい色素ですが、昔の人は紅花染めの色と仲良くつきあってきました。
 弱い色素に対しては、それなりのつきあい方があります。
 アントシアニン色素の色変わりの特徴として、アルカリによる影響が大きく、緑から青色へと変色することです。したがって、もし洗濯をする場合は、絹・羊毛用の中性洗剤を使い、食酢を少量添加して変色を防ぎながらすすぎ洗いをします。
 色が変わった場合は、食酢のうすい液に5分ほど浸けて下さい。それでも直らなかったら酒石酸もしくはクエン酸の0.5%液に2,3分間浸けて下さい。幾分色素が出ますが、元に近い色目に戻ります。
 はげしく色が変わって枯葉色になってしまった場合は、その色を楽しんで下さい。そして、紅葉のシーズンがくればまた染め直して楽しみましょう。
 紫蘇染めの色は、梅漬けの季節がくればまた染めて、お色直しをします。
 自然からいただいた色が、自然に変わるさまを楽しみながら接する、それが植物染の醍醐味ではありませんか。
 
 

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