名阪カラーワーク研究会の
         ミニ色彩講座(6)............... HP開設1周年(2000)記念
色彩嗜好の心理を探る調査法


 どのような心理で色が選ばれているかということは、服飾やインテリア、日用品、環境づくりなど、生活に関わるすべての分野で色を設定する場合に知っておかなければならないことです。

 また、折角、時間と労力と費用をかけてデータを集めておきながら、解析方法が適当でなければ、データに隠されているおいしい情報を引き出すことが出来ません。
嗜好調査には、それ相当の予備知識が必要で、方法を間違えば誤った情報を手に入れることになります。

 今回は色彩の嗜好を、SD法(semantic differential method)というアンケート調査の結果から、人々がどんな心理で好みの色を選んでいるかを知るために、その調査方法と解析方法とを簡単に紹介することにします。
色彩検定を受ける人はSD法を理解しておく方がよいでしょう。 このページはその演習と思って下さい。

 女性の服飾について関心が深いのは女性も男性も同等ですが、その色を決めるのは女性自身の側にあります。
ですから調査の対象には女性を選び、高校生から60才代までの10代、20代、30代、40代、および50代のそれぞれからほぼ同数ずつ、総数356名を対象に面接で調査をしました。

 このときの調査は、単一の色素でつくられた合成染料で染められた色20色と、複数の色素からなる天然染料で染められた色20色をパネルに貼り付け、服飾に使いたいと思う色をそのなかから選んでもらい、選んだ理由を答えてもらいました。
 

 


 中央から左側が単一色素による色、右側が複合色素による色ですが、調査の際はそのことを伏せて質問します。

質問用紙には次のようなことが書いてあります。
    @ 服地の色にしたいと思う好きな色をひとつ選んでください
    A どのような感じで選びましたか、別の用紙に記入して下さい。
A の質問に答えるための用紙には、
   「華やかだから…渋いから」 といった反対語の組み合わせ(以下、 この組み合わせを感情尺度と呼ぶことに   します) が書かれています。
  それは、上から下へ、1から30まで並んでいて、それぞれの+尺度はポジティブな感情、−尺度はそれに対する  ネガティブな感情を表しています。 +と−の間には5段階の尺度値が設けてあり、そのうちのどれかに ○をつ  けてもらいます。

  用紙の概念は次ぎのようになっています。
.
                      以下、30項目までを用意する
                                   )                                               
 例えば、少し華やかな感じが好みに合うので選んだのですよ、という場合には、1.華やかだから…渋いから という尺度の、左から2番目の4の位置に○印をつけるようにしてもらうのです。
上の例では、「派手だから…地味だから」 という、5番目の尺度までしか載せていませんが、実際の用紙には、下のグラフのように1から30までの尺度が用意されております。

 調査が終わりますと用紙を集め、それぞれの感情尺度ごとに、○のついている尺度値を足し算し、その合計を人数で割ります。
たとえば、1の、「華やかだから … 渋いから」 の尺度について、○をつけた尺度値は、3とか2というように、、個人個人で違うわけですが、それらの尺度値をすべて足し合わせ、人数で割りますと、「華やかだから…渋いから」の尺度に対する平均値が出ます。
その平均値が、仮に3.6になったとしますと、+と−のどちらでもない尺度値が3ですから、3.6ならば、少し華やかさをイメージして服飾の色を選んでいる、ということがわかります。

 このようにしてすべての尺度値の平均値を出し、グラフにしたのが次の図です。
このグラフをSD法のプロフィールといいます。
このグラフのは、単一色素による色を選んだ人の平均値、は複合色素による色を選んだ人の平均値です。

 感情尺度(+)                               感情尺度(−)

 このグラフを見ますと、複合色素による色を選んだ人のプロフィールは右に偏っているので、総体的に、単一色素による色を選んだ人よりもネガティブで、おとなしい、落ち着いた選択感情であることがわかりますが、面白いことに、ジグザグの波形が似ていますので、色の選択には同じ種類の感情が働くものの、興奮の度合いがとで違うということになるようです。
交差しているのはさえた色とくすんだ色に関する好みが違うと言うことと、流行に関する選択感情だけです。

さて、好みの色を選択する感情は一体何なのでしょう。 このプロフィールを見て言えることは、
単一色素の色は、都会風、さえた色、はっきりした感じ、若々しい感じという好みで選ばれています。
複合色素の色は、渋いから、くすんだ色だから、自然な感じ、落ち着いた感じという好みで選ばれています。

しかし、SD法による解析は、ここまでで終わりなのです。

 次ぎに因子分析という方法で、さらに、嗜好に関わる心理を抽出する作業へ進むのですが、それは続きのページにリンクしてからということにして、ここでは、折角ですからこの調査で得られた単一色素と複合色素の色に対する好みの統計値を補足しておきましょう。

 356名の人達が選んだ色は、単一色素の色と複合色素の色のどちらが多かったのでしょうか。
次のグラフを見ていただきましょう。 
実はこの調査は一度に2回行っています。つまり、好きな色を選んだ後で、さらに、2番目に好きな色を選んでもらい、同じ調査をしたのです。
 
AAは二度とも単一色素の色を選んだ人で、
BBは二度とも複合色素の色を選んだ人、
BAは最初に複合色素の色を選び、二度目に単一色素  の色を選んだ人、
ABは最初に単一色素の色を選び、二度目に複合色素  の色を選んだ人達です。
 
 
 ここで大変興味深いのは、二度とも単一色素の色を選んだ人の数と、二度とも複合色素の色をえらんだ人の数がほぼ同数であったこと、
 そして、最初に単一色素の色を選んで、次ぎに複合色素の色を選んだという人の数と、最初に複合色素の色を選び、次ぎに単一色素の色を選んだという人の数が、ほとんど一致していたということから、それぞれの組み合わせが1/4の確率に近く、偏りがないということがわかりました

(なお、この調査は1991年に行ったもので、実際にアンケート調査を担当したのは当時、武庫川女子大学の筆者の研究室で卒論をおこなった石原 弓さんです。)

では、次の因子分析のページに進みます。
 
 
 

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