名阪カラーワーク研究会の
ミニ色彩講座(3)
ミステリー: 条件等色ってどんなこと?
標準光源で照らした場合の色 条件等色の極端な例
ナトリウムランプで照らした場合の色

 
 

物語の始まり: 宝の在処を示す秘密の地図が手元にあるとします。しかし、道が途切れていて、もう1枚の地図をくっつけなければ目的の場所にたどり着く道がわからないようになっています。
しかし、贋(にせ)の地図が沢山出回っていて、どれが本当の道筋を教えるのか見当がつきません。
本物の地図は、ある特殊なライトで照らすと、紙の色が2枚ともピタリと同じ色に見えるように仕組まれています。
その特殊なライトは、宝の在り場所を知っている名阪くんが持っています。

とまあ、以上のような設定です。
この物語の要点は、まず、沢山出回っている片方の地図の色は、手元にある地図の色と、みんなそれぞれ違っているということです。
そして、本物を組み合わせたときにのみ、特殊なライトで照らすと同じ色に見えるということです。
 

特定の照明を使うと同じ色に見えるということは本来は異なった色同士であるということの証拠です。
そんな2色の反射率曲線(グラフの上で波長ごとの反射率をつなげた曲線)を比べると、違っている部分があるのに、その違いが見分けられない照明条件があったわけです。
無論、暗くすると色の見分けはつきませんが、そうではなくて、明るく照明しているのにです!

このように違う色同士が、ある特定の条件下では同じ色に見えてしまうというのが「条件等色(メタメリズム)」です。そして、上の例のように、照明が特定の条件をつくる場合を「照明メタメリズム」といいます。


なぜそんなことがおこるのでしょうか。
照明する光の方にも性質の違い、つまり分光特性というものがある。それは波長別で光の強さが違う部分があるということです。
ですから、同じ色の物体でも、ライトの種類を変えることで、当然ながら違った色に見えます。
そうなりますと、違った色に見えていた2枚の紙を並べたとき、ライトの種類によって同じ色に見えてしまうことがあってもおかしくないわけです。

極端な例を見てもらいましょう。
上の写真は、左が標準光源という昼間の太陽光とほぼ同じ分光分布を持った光で照明した場合です。
右はナトリウムランプという特殊なライトで照らした場合で、色の区別はつかなくなり、条件等色が何組にも見られます。
こんなひどい例は日常的には朝焼けか、夕焼け以外にあまりないでしょう。
 

実例でお話ししましょう。
編者が染色工場で技師をしていた若い頃の話です。
お得意さんから色見本付きの注文が頻繁にあります。
在庫の染料を数種類使い、カラーマッチング(色あわせ)をして染め物を納品します。
ところがあるとき、、営業部からの電話で、見本と少し違う色の納品があるというのです。
工場では標準光源を使い、カラーマッチングをしていますが、営業部ではビルの中の蛍光灯で見ています。
使っているライトが違うのです。
現場では夜でも仕事ができるように、太陽の白色光とほぼ同じ分光分布を持った標準光源を使いますから、標準光源を使わないオフィスとの間でこのようなトラブルが時折起こります。

色見本との色の違いは、避けられないことがあります。なぜなら、持ち込まれた色見本はどこかで染められたもので、染料の組み合わせがこちらで染めたのと同じではありません。
どうして同じ組み合わせの染料を使わなかったの? と思われるでしょう。
わずかな量の注文を受けるたびに、色見本を染めた染料と同じ染料を、加工賃の何十倍もの価格で買い込んでいては採算が合わないのです。ほんのわずかしか使わずに、残りを在庫にしますと、注文を受けるたびに赤字になり、染料倉庫は満杯になる一方、工場はあっという間に倒産するでしょう。
染料の種類は何百とあり、文献にあるものまで数え上げると何千種類とあるのですから。
したがって、なるべく手持ちの染料を選び、見た目では同じ色になるよう、カラーマッチングをすることになります。


標準光源を使ったために条件等色が演出されたとしても、クレイムに対抗するにはそれが最善の方法です。
なぜなら、標準光源は工業規格等で決められていて、商取引のトラブルを裁定する場合の基準になる光源だからす。
もちろん、同じ染料を使って完全等色をするのに越したことはありませんが…。
電灯の光や、朝夕の光で色あわせをした染め物でしたら、トラブルがおこっても言い逃れる道はないでしょう。

上の例が「照明メタメリズム」ですが、ほかに、「観測者メタメリズム」という条件等色があります。
これは見る人の目の性能によるためで、これについても実例をお話ししましょう。

同じ染色工場でのことで、工場長は70才を過ぎた方でした。
カラーマッチングの現場に来られて、その当時若かった編者と意見が対立するのです。
たとえば、色見本と試し染めとを比べて、編者が赤みが足りないといい、工場長がもうこれで充分という。あるいはその逆のこともあります。
原因は、老化によって目の水晶体が若干着色し(少し黄色みを帯びる)、そのためにわずかな色の見分けがつかないことによるのです。
しかし、「あなたの目が悪いからですよ」とは、口が裂けても言えませんから納得してもらうのに苦労いたしました。
皮肉なことに、編者にもその年齢が訪れました。
白内障になった左の目を手術しまして、濁った水晶体を人工レンズに変えましたら、在来の右眼に比べてすべての色が黄色みのない驚くほどの青みを帯びた色となって見えました。(片目を交互に閉じて見ますと、両方の見え方が体験できて納得しております)
 

AFT3級のテキスト(p23)では、以上に述べた物体色のメタメリズムのことではなくて、光源色の条件等色のことを説明しています。
AとBとCの3色の光源色があるとします。それぞれの光のスペクトルは違うのですが、AとCの光を互いに強弱を加減しながら混合すると、Bと同じ色の光を再現することができたとします。
この場合のAとCの混合した光が、Bの光に対して条件等色をしているという解釈をしています。
そのテキストの例では、オレンジ色の単色光の色を、赤色の単色光と、黄色の単色光を混合して同じ色に見えるようにした場合について、条件等色であるといっています。
また、如何ように混合しても条件等色ができない色があれば、それが「原色」であると説明しております。
 

 
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