名阪カラーワーク研究会の
                     ミニ色彩講座(1)
 
        緑色は本当に安息の色なのか

         
                                 緑のテーマ(学生作品) 
 

誰でも知っているように、緑は心の安まる安息の色と言われています。
暗い冬が去り、希望の春が訪れると、やがて野山は新緑におおわれます。
はしゃぎたくなるような明るい緑。
そうです。緑は若々しい希望の色なのです。
そして、信号の安全色も緑です(いや、えーと、青?だったかな)

しかし、どうでしょう。 一方で緑は、メランコリックな色、憂鬱を誘う色なのかも
知れないのです。
「五月の憂鬱」という言葉をどこかで聞いたような気がします。
もしかして、なにもかもすっかり緑色で包まれてしまったらどんな気分でしょうか。

68名の女子学生を対象に、心理的な実験をしました。
部屋の中の空間色を緑色にするため、窓のないスタジオ内で調光装置を使い、
天井の照明を緑色に調節しました。 
(天井からの照明のことを、建築屋さんは「地(じ)明かり」といいます)

どちらを向いても緑色がかぶさったような見え方になり、隣の人の顔も青ガエルの
ような緑色。 見るもの全てが緑色で支配されてしまいます。

(専門的になりますが、このときの地明かりのデータを書き添えますと、主波長
が558nm、刺激純度が67.5%、床面の照度が134Luxでした 。)

スタジオ内に20名ぐらいづつ分割して学生さんを入れ、それぞれが受け取る感情
について、SD法という方法でアンケート調査をしました。
そうしますと、気持ち悪い、嫌い、不安定な、迷惑な、という感情表現に多くの得点
がみられました。

また、連想されるシーンとしては、閉ざされた部屋、谷間、迷い子、解剖実験、めま
いの前、荒れ野、というようなものでした。

連想される物は、汚れた水槽、狂った人、ゴミ、何年も放って置かれたバケツの水
、などという、不健康で不衛生なものばかりでした。

同時期に試みた他の空間色は、赤、オレンジ、黄、青緑、青、紫、赤紫で、最も
快く感じられた空間色は、オレンジ色、という結果になりました。

一方で、編者とは逆の結果を出しておられる人がいます。                
住宅の模型をつくり、その内部を色光で照明して外から覗き込み、心理、生理面を評価
するという実験でしたが、その結果、緑色の照明は快適で、覚醒的だというものでした。

編者はその発表の場に、たまたま居合わせましたので、そのような覗き込み実験では
部屋の中に実際にいるときに得られる評価と違うのではないかと言いました。

すると後日、その方は誌上発表をされた機会に、「色光照明の部屋に入った実験」というのを付け加えておられ、相変わらず、緑色の照明が自然な快適感と安堵感をもたらす結果になったと書いておられました。
どうしてこんなに違ったのでしょう。                 

しかし、この実験方法も編者の方法と違うようでした。 といいますのは、使われた照明光のデーターがはっきり書かれておりません。 ただ単に緑色のゼラチンフィルターを被せた、色つき照明で、照度が150Lux(床上1.2m)とあるだけでした。
緑色でも、黄みと青みとで受け取る気分が違うのですが、どの緑色かは判りません。。
                           
また、照明装置は天井からの「地明かり」なのか、舞台照明で使うスポットライト式のものを使ったのか、も明記されておりません。 (スポットライト式ですと、部分照明に近くなり、ライトの背面などに光の届かない部分ができて、空間色を演出しにくいのです)
                      
また、同じ時期に実験に使われた他の色光は、赤と青だけが選ばれていました。  
小生が行っていた実験の結果では、赤も、青も空間色としては心理的評価がきわめて悪い色でした。
したがって、赤と青に比べれば、緑が比較的良いという評価が出た可能性もあります。                                      

皆さんはどう思われるでしょうか。  と言っても実験の仕様がありませんが、ホテルのロビーの「地明かり」が緑色だったらどんなものだろうか、と想像してみて下さい。

私達日常の生活では、照明の色が心理面、ひいては健康維持に大変重要な役割を持っています。
お互いの顔色が、カエルでなくて、健康な人間の顔に見えるような光の演出をしたいものです。
次回は、色光による色の見え方の違いについて、実例をお目にかけましょう。

なお、小生が行った前述の実験の結果を、詳しく知りたいと思われる方は、メールでお申し越下されば、報告の別刷りをお送りいたします。
 


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