名阪カラーワーク研究会の
染色教育事業について
主宰者は50年間にわたって染色の実技、研究、教育に携わってきました。
これまでに得た経験や知識を、一般の方々から利用していただければ幸いと思っています。

染色に親しむには、身近な草木を材料にして染める絞り染めや、合成染料を使って手軽に染めることのできるローケツ染め、型染めなどがよいでしょう。

絹のストール、マフラー、ハンカチなどが手軽です。 木綿は、藍、紅花で染められます。ただし、藍の生葉染めは木綿に適用できません。

それではインターネットによるミニ染色講座を始めることにしましょう。なお、続編のリストを掲げておきます。

ミニ染色講座シリーズの続編
(2) 草木染め(その2)媒染剤のあれこれ
(3) 草木染め(その3) 紅で染める
(4) もうひとつの藍
(5) 見果てぬ夢、バイオ染料
(6) 草木染め(その4)茜のプロフィール
7) 草木染め(その5)藍の生葉染め
(8)合成染料物語
(9)草木染め(その6)花びら染め
(10)泥藍・沈殿藍で染める

 ミニ染色講座(1)
草木染め(その1)

植物染料の謎

編者栽培・撮影:
ムラサキの花
Flower of Lithospermum erythrorhizon
ムラサキの根(紫根:しこん)
             3年育成
Shikon (Root of Lithospermum erythrorhizon)
漢方薬や染料になる物質を、植物はなぜ造るのか
 なぜ、草木を使って染色ができるのでしょうか。
昔から藍染め、紅染め、茜染めなど、植物を原料にする染色がおこなわれ、合成染料のなかった頃の染色はそれらの植物が頼りにされました。

 しかし、一体なぜ、染色に利用することができたのでしょうか。 それは、藍の葉や、紅の花、茜の根 に、染料のもとになる色素が沢山含まれているからなのです。

 では、栄養物質とはまるで縁のない、そのような色素を、「なぜあなたは造っているの」、と聞いても、植物は答えて呉れませんが、人間達に与えるために造ってくれたものでないことだけは確かでしょう。 彼らは自分自身にとって関係のないものをわざわざ造るはずがありませんから。

 彼らは自然界の炭素や、窒素や水を原料に、太陽の光をエネルギーにして、自分の体内で必要なものを合成しています。 そして、複雑な化学構造でできている色素も、煙を出さずに、音もたてないで、彼ら自身の素敵な体内工場で造っていたのです。
 私達が色素と言っている物質は一体なんでしょうか。
実は、彼ら自身の体を維持したり、繁殖するための必要な補助成分でした。

 その物質を、人間達は勝手に医薬や染料として利用してきたのです。
植物の色素成分には、紫外線を防いだり、虫や細菌に冒されることを防ぐ効用を備えています。
植物が、発色を目的に造ったものは、花粉を媒介する蝶を招き寄せるための、花の色素ぐらいのものです。
その花の色素も、元はと言えば、葉っぱで造っている紫外線除けの、フラボンという物質の化学構造を、ちょいと工夫して造り変えられているものなのです。

植物が持っている光害抑制物質

 紫外線が多すぎると害になるということを皆さんはご存じです。
今、地球上でオゾンホールが話題になっています。 はるか上空にあるオゾン層が、太陽から注ぐ強烈な紫外線のほとんどを吸収してくれているので、私達は安心して生きていられるのですが、北極や南極上空のオゾン層に、私達の環境破壊によって、ぽっかりと広い範囲の穴が空いてしまったのです。

 生物が住めない頃の地球は、紫外線がまるごと地表に注ぎました。 しかし、水は紫外線をかなり吸収するので、海の浅いところで植物系の微生物が発生して増えることが出来ました。 それらは光合成という植物的な営みをすることで、酸素を放出しますので、大気中にオゾンの原料となる酸素が蓄積されました。
大気中にオゾンが出来始めると、大気は紫外線を吸収するようになり、地表がだんだん安全な場所になって、植物は地表に出て繁茂するようになり、地球上は植物王国になりました。 その頃の植物の残骸は、石炭となって埋もれています。
 そして、上空に厚いオゾン層が形成されますと、海にしか住めなかった動物が陸にも住める両棲類へと進化して陸上に姿を現すようになります。 さらに長い長い進化の過程を経て地球上は動物の楽園となり、そして遂に人間が出現し、生物界を支配するようになったのです。

 このストーリーからわかるように、植物にとっても過剰の紫外線は生育の妨げになるのです。ですから、紫外線を吸収する物質を植物自身が造らなければならないことになります。
紫外線を最も強く受けやすいのは葉っぱですから、フラボンと名付けている紫外線吸収剤が造られて、葉っぱに備蓄されるようになりました。
 それらのフラボン類を、黄色、薄茶色系の色素として染色に利用できることを人類は見つけたのです。
大抵の植物には有り難いことに、このフラボン類があるのです。
最近、薬効作用によって人気上昇中のポリフェノールには、沢山の種類があるのですが、 そういえば、赤ワインのポリフェノールも葡萄の実の皮に含まれていた物質です。
そのほか、大抵の植物組織に含まれるタンニンも典型的なポリフェノールです。

植物が持っている防腐、防虫物質

 植物と動物は、互いに助け合って生存しており、動けない植物は、動物の行動力を利用して、花粉運びや、種子運びをしてもらいます。しかし、大切な葉っぱや茎を食べられては困ります。 大きな動物に対しては棘をこしらえて防戦しますが、小さな虫に棘は利きません。そこで、彼らはこんな自衛手段を考えました。虫が困るような物質を造るのです!!

 タンニンは、虫が嫌う物質で、これを大量に虫に与えると虫は死にます。虫に痛めつけられている場所にはタンニンが集まります。たとえば、虫食いの栗は渋くて苦いですね。
タンニンを取り出す原料になる「虫こぶ」を造る木があります。虫のいる場所に沢山のタンニンが集まり、瘤(こぶ)状に膨れて丸くなりますので、人間はその瘤を集めてタンニンを取り出します。

 植物の葉、茎、根など、いたるところがタンニンやその近縁物質で保護されており、黒、茶色系の染料に利用されます。 大島紬を染めている色素もタンニンです。

 茜の根に含まれていて茜色を染めるアリザリンなども、タンニンと同様な作用があります。紫(ムラサキ科ムラサキ)の根を紫根と言いますが、その根に含まれるシコニンも、防腐、殺菌効果があり、殺菌効果のある医薬品として使われますが、その一方では 紫色を染めるので色名がそのまま、この植物の日本名になりました。
花は上の写真で示したように、白くて小さい、清楚な花です。昔は関東の武蔵野にも自生していて、風にそよぐ姿が風流であったそうですが、乱獲で姿を消しました。
 
 
 

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