日本の天皇とは摩訶不思議な存在である。2600年連綿と続く王朝は世界に唯一であり、現在の平成天皇が125代目にあたる。そして北朝をあわせると129代の天皇陵が東京、奈良、京都、大阪、淡路、山口に点在している。それらの陵はどれも宮内庁によって管理され,静寂と尊厳に包まれている。
私が天皇陵に興味をもった直接的な出来事は、昭和天皇の崩御であった。昭和という時代が終わったその日から、何か皇統に吸い込まれるような特別な興味が醸成していった。これらの歴代天皇陵は江戸時代末期の『文久の修陵』という陵墓修復作業によって今の姿に整備され、前方部分の拝所で祭祀が行われている。この文久の修陵事業と、王政復古による明治維新は並立しながら日本の近代天皇制確立へと進んでいく。そして敗戦によって現在の象徴天皇制へと収束していった。
陵墓を訪ねると、日本の時代や歴史が感じられる。神話時代、古墳時代、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、江戸時代、そして明治昭和へと推移していく時代の流れは、まさに日本史そのものである。悠久の時を刻む陵墓の景観は、その時々の時代を反映しているように感じられる。
古墳時代の巨大古墳から昭和天皇の陵墓まで、現在の時空間の中で静かに佇んでいる光景は、何か信じられない虚構の世界に迷い込んだような錯覚を与え続けている。