リアルタイム操演日記


ウルトラマン
2004年

11/29 (土)

初日、現場の空気は張りつめている
緊張感という名の糸を左右で引く見えざる手
片方の名は期待
片方の名は不安

30 (日)

かくして我々は船出した
豪華客船のように?
いや、古代ローマのガレー船のように

12/1 (月)

初日から映画はまるで難破船のようなものになる、救助せねばならない

たえず舵を起こし続けなければならないのだ

放っておけばそのまま沈没してしまうことは目に見えているからだ

フランソワ・トリュフォー


2日(火)

大海原を船は進み 陸地は水平線に隠れる
行く先を知るのは船長のみ
漕ぎ手はまだ元気だ

3日(水)

航海士は何度も海図を確認する
何も書かれていない、未知の海域を

4日(木) <本日撮休>

日曜日の朝が来ると父親は新聞の映画欄を開いて「映画にでもいくか」と言った。
回数としては月に二回くらいのものではなかったかと思う。
つまり映画にいく日曜日もあればいかない日曜日もあったということだ。
映画に行く日曜日は僕にとっては楽しい日曜日だった。
映画に行かない日曜日がどんな日曜日であったのか、僕はあまりよく覚えていない。
たぶんそれはただの日曜日だったのだろう。

村上春樹

5日(金)

六分儀から目を離し、若い航海士は言う 「驚くほど順調だ、予定より早く着くかもしれない」
古い水夫は潮のにおいを嗅ぎ 「そんなわきゃあねえ」とつぶやく

6日(土)

佳きことも、悪しきことも 語るべきなにもないままに 船は進む
船員の不満はメシがまずいことくらい


7日(日)

大爆発・大破壊 いつもと変わらぬ日常

8日(月) <操演部、本日出番ナシ>


映画を作るということは未知の世界を旅するようなものである。
最初は希望と期待に満ちあふれているが、途中で目的地までたどりつけるかどうか
不安でしかたなくなってくる。

諸星あたる

9日 <操演部今日も出番ナシ>


第3次世界大戦・・そして核の冬
それでもジョーズは作られる

いしいひさいち

10日 (水)

順調な撮影と、思いがけない2連休
手下どもの志気の低下さえ心配になるほどだ

「怠惰ほど志気を低下させるものはない、古い時代の帆船の船長は
いったいどうやって部下たちを忙しくさせていたのだろう?」

アーサー・C・クラーク 「2061年宇宙の旅」より


11日(木)


一句

寒空と
人の熱気や
Location

泉子

12日(金)

誰もが今度の航海は平穏無事に終わるものだと思い始めている
始めに聞かされたものとはずいぶん違うな、と
しかし、機関長はそのころエンジンルームで首を捻っていた
さきほど、調子良く回っていたエンジンに一瞬異音が混じったような気がしたからだ


13(土)

船は快調に鏡のごとき水面を進む
しかしエンジンはあきらかに息つぎをし始めた

14(日)


はっきりと速度を落とした船はそれでも航海の半分を終えた 明日は入港
後半分の航海にそなえなくはならないだろう


15(月) <本日撮休>

「映画は映画館で」という映画評論家への素朴な疑問。「試写室は映画館かよ? オイ!」

はみだしYOUとPia より


16日(火) <本日諸準備>


出番はないので「ラストサムライ」を見に行く サムライ礼賛がすぎて、トンデモ一歩手前の映画
しかし、一歩手前で踏みとどまっているあたりは偉い しかし、あそこまでやっておいて何で忍者を出すね?


17(水)


船は赤道を越える 船上では赤道祭りが
甲板の下では水漏れの修理が始まっている

18(木)


船会社からついに予定を1日早めろという指示が出る
出航当時の勢いはすでにないというのに


19日(金)

ほころびは形をあらわし始めた 予定の作業がその日のうちに終わらない
船の航行にとって必須なもの以外切り捨てる算段をせねばならないだろう


20(土) <出番なし>

帰宅して風呂へ入ったら風呂の壁に黄色い油のようなものが滴滴とついている。
よく見ればなんのことはない、ただの水滴である。
世界が黄色く見えるという表現はリアリズムだったのだ。

伊丹十三「お葬式監督日記」


21日(日)

潮目が変わり、風が吹く帆は風をはらみ、船速だけは増して行く

-新天地まで9海里


22日(月)

行く手は暗雲 待ちかまえるのはリヴァイアサンかメイルストロームの大渦巻きか
しかし目的地はその向こうにある

-新天地まで8海里


23日(火)

総員起こし 荒天準備

すべての水密ハッチは閉じられ厨房の火は落とされる
航海の終わりまで安眠はなく 暖かい食事もないということだ

-新天地まで7海里

24日(水)<本日撮休>

 撮影が中盤にさしかかると、私はきまって、こんな自問自答をして、自分を責めさいなむ
−ずいぶんいいかげんな仕事ぶりではないか。こんなことでいいのか。
(中略)
 前半はもう取り返しがつかない。これから、後半で盛り返すのだ
ずるずる落ち込んでいかずに、一気に調子を上げるのだ。
映画を救うには、それしかないぞ。

フランソワ・トリュフォー


25日(木)

「戦闘速度!」 船長が叫ぶ
奴隷頭の打ち鳴らす太鼓のピッチが増し
オールは水を攫き 波頭立つ海に、船はまっしぐらにつっこんでゆく

-新天地まで4海里


26日(金)

「攻撃速度!」太鼓のピッチがさらに増す
奴隷達の筋肉はもりあがり ガレー船は増速しながら嵐の中を突き進む

-新天地まで3海里


27日(土)

「突撃速度!」 奴隷達は歯を食いしばって櫂を漕ぐ
奴隷にだって自由はある
この一漕ぎ、一漕ぎがこの映画を面白くしていると信じる自由だ

-新天地まで2海里


28日(日)

「衝突速度!」

漕げ

漕げ

漕げ

悔いを残すな いいわけをするな この映画はおまえのものだ

-新天地まで1海里

29日(月)

・・・・船底は破れ、櫂の折れた船は砂浜にのりあげたまま停止している
この船が再び航海に出ることはない

解放された奴隷達はひとしきり互いの健闘をたたえ合い
やがてどこへともなく去っていった。

Crank−up


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