操演日記

ウルトラマンコスモス  THE FIRST CONTACT










12月

  12月1日 (金)

 日活11St.9時開始、格闘。

 格闘・・なのだが難航している、コロナタイプ演ずる荻野君がスーツに慣れていないためだ、ルナの猫俣君も慣れてはいなかったが原則的にルナには激しいアクションがなく、さほどに問題とならなかったのだが格闘となるとそうはいかない、自在に動く事はもちろん相手に合わせる必要もある。

 考えてみれば権藤、中村の両氏も慣れるまでには時間がかかったものだ、それを今回は再び一から行わなくてはならない、しかもスタッフは3年選手の動きを覚えていて見比べるのだから演じる方はたまらんと思う。
 とはいえこれは映画、TVシリーズより大画面で、かつ木戸銭をいただいたお客様に見せる絵を撮っているわけで妥協は許されない。

 監督のきびしい指示が続く中(操演部的には楽なのだが)セットは息詰まる雰囲気で撮影が進む(というか進まない)

 12月2日 (土)

 日活11St.9時開始、格闘。
 
 格闘続き、今回は「21世紀格闘」ということで格闘の最中に多く合成が入り、並のアクションではない、まあ出来映えは完成品をご覧じていただきたいがそのため、セットではバルタンのみ現場撮りでコロナはGB、あるいはその逆、あるいは現場では背景のみ撮って後はすべて合成など凝ったものが多い、しかもGBで撮ったものは合成時に編集機上で動きを付ける、あるいはスピードを変えるなど手の込んだものが多く、撮っていても完成図を想像するのは容易でない、容易ではないがその想像上のウルトラマンの着地地点に平台爆弾などを仕掛けたりするわけで、わっかんな〜いとも言っていられない。

 21時終了。

 12月3日 (日)

 日活11St.9時開始。

 バルタン星人の最後「ビル6軒つっこみ」の本番である、これは佐川監督がウルトラマンガイアの最終回でガイアとアグルをビル3軒につっこませた絵がお気に入りで今度は(映画なので)6軒につっこませようと打ち合わせ当初から狙っていたカットである。

 これはバルタン星人をブランコにして背中からビルに激突させるという野蛮なものだ、6軒とはいえ3軒づつ2回なのだが2回目は3軒を壊したあと4軒目のビルに当たって止まり更に立ち上がらなくてはならない、そのため人形を入れるわけにはゆかず村田君本人でやる以外ない。

 実のところ私も昨年の映画でティガをブランコでセットにつっこませるという荒技をやっているのだが、この時途中で壊したものはスチロールの廃墟だけだったのでそれほどの勢いを要求されなかった、今回は石膏ビルを3軒完全に破壊する(破壊して通過する)必要があるためかなりの勢いが要求される、野蛮である。

 まずはブランコの具合を見るため段ボール製のダミービルを置いてテスト、立て吊りにした村田君をえいえいと押して行って、イントレの上で待つ辻川君に渡す、辻川君は足を持って引き寄せて準備完了、体ごと持っていかれないよう辻川君を押さえる人間がその後ろにつく、激しく重いので即スタートしないと手が離れ本番時なら大惨事(カメラが回っていないのにビルを破壊してしまう)になってしまう。

 バルタンはウルトラマンの必殺光線で腰が引け足が上がって「く」の字になった格好になっているという設定なのだが、吊られていてこの形を保つのは難しい(足が下がってしまう)ビルの上をかすめたのでは完全にビルを破壊出来ないので下の方に当たりたい、そこで低く吊るのだが、足が下がるとビルのはるか手前で地面に接触してブレーキになってしまう、ブレーキが強すぎればビル3軒を破壊する前に停止してしまう、見た目のかっこ良さと、村田君の腹筋の限界を見定めるため何回かテストする。

 OKとなったところで本番、段ボールで目星をつけた場所へ石膏ビルを置く、なるべく抵抗とならないようきざみを一杯入れて弱める、味付けに火薬を少々入れる(あまりに抵抗なく、ウエハースのようにビルがスカスカ壊れたのでは興ざめだからだ)
 
 本番、よーいハイで辻川君が手を離す、ぶ〜んと振られていく村田君、ドカン、ドカン、ドカンとビルを壊す・・が3軒目を壊すのがやっとであった、完全に通過せずスピードが落ちてまもなく停止します、というのがわかる減速である、引きずった足が何もない床を滑っていったテストと石膏ビルの残骸を蹴散らしていくことになる本番時の抵抗の違いと思われる、「もう一回」が可能ならNGというところだが壊れてしまったビルはどうにもならない、まあ3キャメで回していることでもあり編集で「逃げる」として2パターン目はどうしようということになる、と言ってもスタート位置をもっと遠く(高く)する、吊り位置をもう少し上げる、という以外は考えつかないのだが。

 今度は3軒を破壊し4軒目を破壊しかけて停止する、というカットである、
4軒目のビルの土台は村田君が激突しても揺るぎないものにしなくてはならない、平台を何枚も組み合わせて頑丈な箱を作り、それにビルの外観をかぶせ、壊れたあと用の「ビル断面」を張り付け、更に壊れ用の石膏部分を付け足す、バルタンは石膏部分を壊して停止し立ち上がると、その後ろの壊れない素材で作られたビル断面が見えるという仕掛けである。

 再びセットアップ、足持ちの辻川君はさっきですらギリギリだったものを更に引き上げ、更に重くなったところで体制も悪い、村田君を押してきた補助が手を離すともう「はやくいって〜〜手が離れる〜〜!」という状態である。

写真提供 辻川明宏


 というわけですかさず本番、さっきに倍する勢いで村田君がすっとんで行く、ドカドカドカッとビルを破壊、4軒目の壊し壁を破壊しビルに食い込んだ格好で停止する、と、村田君よろよろと立ち上がり断末魔という芝居をしつつ1歩2歩と歩く、カット!
 素晴らしい! ビルもカッコよく壊れたし、4軒目も壊れるべきところが壊れ、壊れてはいけない部分は壊れず、村田君が立ち上がったあとはキレイにビル内部が見えた、勢いがなければ壊し用の外壁をへこませるくらいのところで停止してせっかくの中が見えないし、勢いがありすぎれば「ビル断面」をも破壊してベースの平台が見えてしまう、まずこれ以上のことは出来まいというカットであった。


 その後10St.に移動、冒頭の「湿地帯」のGBによるルナの手など小物を撮る。

 21時終了。


 12月4日 (月)

 日活11St.9時開始。バルタンの最後、ラストシーンなどの芝居関係を撮る。

 夕刻よりモーションコントロール、バルタン星人がネオバルタン(バルタン星人の戦闘モード)になるカット及び死んで元に戻るカットで、カメラのパン、ティルト、ズームの3軸制御である。

 これはノーマルからネオに(その逆に)モーフィングで変化するのだが、モーフィングの最中にカメラワークをしたいという要望で出てきたものである。

 モーフィングはいわば2枚の絵を混ぜ合わせる仕組みであり普通カメラはフィックスであらねばならない、カメラワークして2枚の絵がずれて動いていたらコンピュータはどの部分とどの部分を混ぜあわせていいのかわからなくなるからだ。

 たとえばネオからノーマルへの変化は始め死んで横たわっているネオバルタンの右爪にズームしている、普通ならここでノーマルの爪にモーフィングしてし終わったところでズームバック、カメラパンするとノーマルになっているバルタンの全身、という段取りになるところだが、モーションコントロールすれば爪が変化していく過程でズームやパンを始めることが出来るというわけなのだ。

 実際にはバルタンはGBで撮ることになるのでここではまずバルタンを置いてズームやパンの動きを決定し、バルタンをどかして背景のみ(カラ舞台)を撮影する、カメラの位置、レンズ高さ、バルタンまでの距離を計測し、当然モーションコントロールのデーターの記録する。

 自作のモーションコントロール・プログラムには当然セーブ・ロードの機能はあり、ついでに終了時にロードされているデータは次回起動時に自動でロードされる仕組みになっている・・・のだが、自分で組んだプログラムを待ったなしの本番で無条件に信頼するほど私は自信家ではない(万一データを失ったらカラ舞台から撮り直しになる、しかしGBの撮影は後日、そのときはすでにセットバラされているのでそんなことになったら上を下への大騒ぎだ)ので紙に書いて(!)記録を残す。

 こいつを2カット撮り終わったら・・深夜2時30分 ?!ひょっとして今回初めての送りではないだろうか?

 明日は休日だからいいだろうって? それじゃ休みにならんて。

 12月5日 (火)

 起きれば昼になっている役に立たない休日。


 12月6日 (水)

 日活10St.11St.9時開始。

 今日もA、Bの2班体制、A班は11St.で分身して戦うコロナとネオバルタン。
 俯瞰、大ロングの背景の中で数体づつに分かれて戦う2人を合成するため(というのは着ぐるみは1組分しかないからだが)11ステージの床が全面グリーンになっている、ここで1組ずつ格闘を行い後で同時に行われているように合成されるわけだ。

 ある1組が格闘の最中に他の組(?)の位置とダブると合成出来なくなるので、ビデオで位置を確認しつつ殺陣をつける、格闘の最後にコロナは全員(?)が中心に集まって1体に戻ることになっているので戻る位置とそのタイミングも慎重に測られる。

 セットの平台一杯に貼られたグリーンは格闘する2人をかろうじてカバーする広さしかない、俯瞰でとらえられたフレームの周囲はセットの床やホリゾント、そのホリゾントを照らすライトなどがバレて見えている、つまりGBであればこそ余分なところは切って使えるが背景となるべき地上俯瞰図はもはやセットには入り切らぬサイズなのである、そこで1対1のセット飾りはあきらめて、別に2間四方ほどの地上ミニミニセットが組まれている、操演部的にはGB側にすべきことはなにもなく、ミニミニセット側でFOGの雰囲気とかホコリをやるだけである。

 B班はマイロのリテイク、道志村のロケで撮ったカメラのパンを解析し、ミニチュアセットでマイロがそれを再現する(というのは、ロケで主人公の少年からウルトラマンが埋まっている林に向かってパン、パンをマイロでつないでミニチュアセット向けになり、そのミニチュアセットの林の中にCGウルトラマンを合成することになっているからだ)という技術的冒険を行ったのだが何がいけなかったのかつなぎがうまくいかず、合成すると林が「滑って」しまっていた。

 「滑る」とは背景と合成された人物の動きが合っていないなどという時に使う言葉で、この場合は実景の林とミニチュアの林が1つの画面に納まったとき同じ動きをしていないという意味である。

 そのためこれを再び撮影することになったのである・・・が操演部はこれまたFOG焚きくらいしかすることはない。


 操演部的に大したことはなくてもどちらもたいそう面倒な撮影であり、実質1カットなのだが残業となった。

 20時30分終了。


 12月7日 (木)

 9時開始、各種合成素材撮り。
 高速移動するウルトラマンの足元に合成されるホコリ、各種爆発に足される火薬の火花、火災シーンに足されるプロパンガスの炎、ドラゴン花火など。

 「埋めもどされる(?)呑龍」を夕食後に開始したら22時30分になってしまった。
 
  12月8日 (金)

 「21世紀格闘」の合成側撮影、コスモス、バルタンのGB撮影が主体。

 バルタンの爪がノーマルから戦闘モードに変わるカットでマネキンを入れた腕を動かすなどいう小物もある。

 最後がパンチをくらってゆがむ呑龍の顔(!)、これは正面からのショットになる、正面から撮った絵を後処理で歪ませるのだがノーマルに撮った絵をそのまま歪ませたのでは顔だけでなく顔の後ろに見える体も、さらにはその後ろの背景までも歪んでしまう。
 
 そこでまず背景だけを撮影し体と首を別々に撮って合成することになっている、背景はセットがある時にすでに撮ってあるので今日はGBで体と顔の撮影である、まず首を切って体だけにした(!!)呑龍を正面から撮る、これは加工なしでそのまま背景に乗せられる、つぎに顔だけを撮る、パンチが当たったという芝居をするため山本君は首だけを持ってまさしく獅子舞のように演技する、この絵をパンチの方向に歪ませて「殴られて顔が歪んだ、の図」を作り先ほどの(首のない)体の上に乗せる、さらにCGのパンチを合成してできあがりである、1カットを構成するのになんと要素が多いことか、いくら撮っても終わらない気がするのも当然だろう。

 22時30分 終了。

 12月9日(土)

 いよいよ最終日、GBの吊り関連カットが一杯、しかしこれはもはや恒例行事と化している、上げて下げ回して、縦にして横にして・・昨年も1昨年も同じような面子で同じようなカットを撮っていたような気がする・・なんて言っていないで緊張しろ自分。

 打ち上げ用の寿司、酒、つまみが用意されていくのを横目で見つつ(緊張感の持続は難しい)撮影は進む、夕刻には終わる予定が意外と手間取りメシ押しタイムとなる、終わって寿司喰って乾杯して、となるか寿司が単なる夕食(撮影続行、酒はおあずけ)と化すかは酒を飲まない私にはあまり違いはないのだが、そうでないスタッフには重要なことである、大車輪で撮影は進み、これを過ぎたらさすがに夕メシにするしかないでしょうという18時30分、ついに全カット撮影終了、パチパチパチ。

 監督の挨拶のあとささやかな打ち上げとなる(本格的な打ち上げは後日)腰を落ち着けて飲み始める人を尻目に寿司をぱくぱくと喰って私は家路に着く、明日からまたしばらくは家で夕食が食えるだろう。