リアルタイム操演日記


ウルトラマンTDG


7/20 (木)

 ウルトラマンTDG(と正式に呼ぶらしい、祝詞のなかで神主が言ってたくらいだからそうなのだ)クランクイン
8時30分よりお払い

 お酒が飲めない私は乾杯のとき飲むふりをして御神酒を捨ててしまう、自分が担当した作品がどれもこれもヒットしないのはひょっとしてこのせいか? とかつて思ったこともあったが、その後ガメラとウルトラマンティガは当たったし、一方特殊メイクのH氏(って全然匿名になってね〜)の結婚式ではこればかりはと無理して飲んだのにナニだったし、ま、関係ないってことか。

 今日は「別の場所」(なんのこっちゃ)からの撮影、ミズノエノリュウあらため単なる龍、が吠えて倒れるのみ。
ほぼ助手に任せておけるので私はCMの準備、1カットのみ手が足りずFOG焚きをする。

 15時終了、初日だしこんなくらいがいいかな、東宝大工センター(ホームセンター)へ行って、いくつか備品を買い込む。

7/21 (金)

 セットの飾り換えで撮影はお休み、助手連もお休み、私は別件のCMの準備、昼間「空中ナパーム」の仕込みをして、夜は東北新社で打ち合わせ。

 昼、川崎郷太氏が亀甲船に現れる、某N大学映画科の卒業制作の面倒をみているとかでそれに必要なミニチュアビル爆発の依頼だそうな。

 本職の監督を顧問に据えるのはいいけど、実際の作業をプロに依頼してどうする?


7/22 (土)

 ジョーモノイド(四つ足の怪獣です)が村を襲って大暴れ、という一連のシーンが今日のメニュー。

 私は昨日のCMの打ち合わせで1回の予定だった空中ナパームを3回やることになってしまったため人目を避けてCMの準備をする。

 今回は助手に上田が付いているのでこういう時は助かる、上田はとうの昔に一本立ちした操演技師で、この上田−辻−秀平というラインは昨年1年ずっと雨宮慶太の「鉄甲機ミカヅキ」を担当していた、そのため意志の疎通が良い−というかツーカーすぎて時々連中が何を言っているのかわからないくらいだ。

 上田「突撃セットの準備はいいか」
 秀「大丈夫です」
 ・・・おい、その突撃セットってなんだ?。

 というくらいだ、なんでこういう人員構成なのかというと、それは1ヶ月後には私が映画に行ってしまうためなのだ。

 昼にセブンイレブンの冷やし中華を食べたら、夕食はケータリングの冷やし中華だった。

 21時30分終了。

7/23(日)

 昨日日記が更新されないのを見ていきなり破綻か! と思われた方はいるでしょうか?、三日坊主ではなく、昨日中に帰れなかったのです。





 23日はTDGを抜けて、同じ東宝ビルトながらオープンで東北新社のCM、7月中旬という話で引き受けたのがどんどん遅れて結局TDGとだぶってしまったという代物だ、一度引き受けた仕事はスケジュールが延びたくらいでは辞められない。

 しかし昨日は「各地で今年一番の暑さ」というわけで朝8時の段階ですでに気温は30度、高台にあるにもかかわらず風のないビルトのオープンは猛暑というだけでは言い尽くせない灼熱地獄、さすがCMというわけで「麦わら帽子」が各人に支給されたもののそれでどうにかなるような日差しではなかった。

 とにかく暑い、あたりは陽炎にゆらめき、DNAがぶちぶちと音をたててちぎれ(?)、浴びるように水を飲み、滝のように汗をかく、立っているだけで気力、体力がそぎ落とされていくのに、1St.の「TDG」や5St.の「ウルトラマンネオス」から機材を運んでこなくてはならない(機材の調達にちょうどいいと思ってビルトを撮影場所に指定したのだが)オープンからわずか数十メートル離れた1St.に物を取りにいくだけで疲労困憊する。

 撮る物は「空中ナパーム」と「ビル爆破」どちらも細心の注意を払うべき火薬効果であるのだが頭の8割くらいまでが「あつい、暑い、熱い」という言葉で占められていて注意力が散漫であるのがわかる。

 慎重に慎重にと自分に言い聞かせながら昼までに3回の空中ナパームを撮影。

 その他のスタッフは午後から3St.で素材撮りだが操演部はナイターのビル爆破にむけ熱気ますます高まるオープン(東京の最高気温は35度)で作業続行である、結局夕方彼らが合流するまでずっと外に居続けとなってしまった。

 夜8時に全ての準備が整ったがその頃になって風が吹きはじめ(危ないし、効果もよくないので)風待ちで10時まで待機する。

 10時にオープン終了、体は文字通り綿のようであり、疲労で頭にはかすみがかったような状態だが引き続き3St.で爆発の素材撮り、これまたCMらしいしつこさであれこれと撮り、終わったのが午前1時30分であった、ヘロヘロとはこのことである。

 昼間太陽にあぶられながら、今日我々ほどひどい目にあっている労働者も居まい、と思ったり、いやいや戸外が仕事場であるお仕事はいくらでもあるわけで我々が一番ひどいなどと思ってはいかん、などと反省したりもしたのだが、気が変わった、朝8時から外で仕事をするような人は多分日が暮れると家に帰ったと思う、朝8時から14時間戸外に居て、さらに食事時間もろくになく(CMは「食事済み次第作業再開」であることが多い)午前1時30分まで仕事をしていたはわれわれ3人だけだったろう。


7/24(月)

 23日は(けしからんことに)TDGは定時終了であった、さっさと帰る上田に「そんなこともないとは思うがもしこっちの終了が0時を過ぎるようだったら昼から出にするからな」と因果を含めておいてよかった。

 というわけで午後からスタジオ入り、今日はジョーモノイドとティガの格闘で操演的にもたいしたことはない、実際午前中には特段のことはなく、午後も私が撮影に参加したのは火薬が1発とティガの「怪獣ハンマー投げ」の2カットだけだった。

 21時30分終了。

7/25(火)

 「古代の戦い」 
 いにしえの昔、村を襲う魔人をどこからともなく現れた巨人が倒した、という言い伝えの映像、象徴的なシーンなのでつながりとかつじつまが合う必要もない。

 ティガの空中キックで魔人の肩に火花が散る、チタン合金のカプセルを付け、スイッチを握り(もう見ることはあるまいと思っていた)権藤ティガのキックのタイミングを計っているとタイムスリップして4年前に戻ったような気がする。

 あのころは新たなウルトラマンを創造しようと皆が試行錯誤の状態であり、その中でこそ良い物が生まれたわけで、こうして作りながら過去を振り返るようではオシマイなのはわかっているのだが、さすがに2度と見ることはあるまいと思っていた権藤ティガを見ると感慨深いものがあるわけだ。


7/26(水)

 今日はいままでとうってかわって操演デイである、雷雨の中を怪獣が歩き、ガッツウイングが飛ぶ。

 親線に吊ったガッツウイングを飛ばす「巻き取り」に一人、バンクするためのスライダックに一人。
 カメラ前の雨降らしとして移動車にジェットファンと散水ポンプを乗せカメラと併走するわけだがこのポンプに一人、移動車の押し手に一人、怪獣奥の雨降らしポンプに一人、雰囲気のフォグメーカーに一人、怪獣のしっぽ吊りに一人、手が足りない。

 本番中手の空いていそうな人間をつかまえて仕事を押しつける、この組の主だったところは皆特撮のベテランなのでたいていのことはやってもらえるので助かる(よそのパートには一切手を出さないCMの現場だったら8人くらい引き連れていかないと怖くて出来ない仕事だ)

 それでも手を借りられるのは本番時のみで準備やテストは自分たちでやるしかなく(準備中はみな自分の仕事があるからだ)大忙しである。
 
 テスト時に自分でポンプに付いていると効果をモニターでチェック出来ないのもつらい、雨粒がでかければスケール感をそぐし、細かすぎれば煙のようになってしまう。
 雨粒のサイズはノズル調整でどうにでもなるが怪獣本体に雨がかかるとスケールを無視した大きな雫が出来てしまいやはりスケール感を損なう(ガメラ3のように珪砂を吹いて雫に見せかけるなどというのは雨降らしに特機部が別に付いたうえで一日2カットしか回さないから出来ることだ)

 雨は実際特撮の鬼門なのである。

 22時終了。

7/27(木)

 オープン撮影なので8時開始、雨が降らず予定が撮りきれれば明日の天候予備日は撮休になり、あさってのロケ準備日も(準備は今日中に終わらせるつもりなので)操演部は休みになって2連休になる、撮影開始して8日準備を含めて11日間休みがなかったところなのでこれは是非お休みしたいところなのだが朝から天気がよくない、どんよりとくもって今にも雨が落ちてきそうなのでドキドキである。

 今日のカットはジョーモノイドが火を吐き、竪穴式住居や高床式住居を燃やすシーン、火吐きは合成で建物の炎上のみを撮る、建物手前に火薬を置いて発火のきっかけを作り、あとは建物に石油をまいておいて引火するのを待つだけなのだがその引火のコントロールが難しい。

 本物は茅葺きである屋根をミニチュアではスタッフという植物繊維で作ってある、このスタッフは非常に燃えやすいのでそのまま火を付けたらすぐ跡形もなくなってしまうだろうと考えられる、そこでFRP(強化プラスチック)が薄く塗られた、防火対策というわけだ、これによって火が付いてもしばらく「持つ」だろうことはたしかなのだが、引火しにくくなったのも確かである、引火自体は一気にいかないと面白くないので建物にはガソリン混じりの灯油をかけておく、その混合比と量の加減が難しいわけだ。

 建物と建物の間が狭いのも気になる、ジョーモノイドは「次から次へと」火を吐いていくわけで芝居に合わせて建物を発火させていくのだが、隣の建物に引火してはまずいわけだ。

 準備中一瞬雨が落ちてきてヒヤリとしたがその後は回復に向かい、無事午前中にオープンの撮影は終了した。

 午後からは昨日の残、雨中のガッツウイングの飛びと合成バックになる空数カット、これは16時頃終了し「ティガ第一次特撮」は終了した、これからしばらくは本編(人間の芝居関係)となる、ティガ、ダイナ両方の本編が終了したのち、ティガの「第2次特撮」と「ダイナ特撮」になる予定である。

 30日から3日分のロケの準備を整えて解散、18時。

 明日は休みだ。
 

7/28 (金)

 というわけで今日はお休みです。

7/29 (土)

 今日もお休みです。

7/30 (日)

 今日は横浜にある大塚遺跡でロケ、日曜でもあるし車で直行することにする。

 高速を東名の横浜か第三京浜の都筑インターで降りることになる、家からだと箱崎を経由して環状線を回り3号線から東名に入るのが近いのだが、首都高はせせこましくてイヤ。
 広い湾岸線に出て、フジTVを始めとするレトロフューチャーな臨海副都心のビルを眺め、羽田空港の真ん中を抜け、海底トンネルを走り、出来の悪いマット画を見て(ウルトラ日記−本編−9月18日参照)ベイブリッジからの眺めを満喫し、これまたわざとらしい「みなとみらい21」のビル群を横目に見て、第三京浜に入る方が楽しい、変化があって走りやすい1時間ほどのドライブである。

 さてロケ地である大塚遺跡は出土した住居跡に竪穴式住居を精巧に復元した公園である、ここで古代のティガの里のシーンを撮るのだ。

 特撮で撮影済みのジョーモノイド大暴れの切り返しが操演部の出番である、特撮では縦穴式住居や高床式住居をバンバン燃やしてしまったのでその切り返しに何もないとつながらないわけだ。
 実際には黒煙を流し込まないとつながらないのだがここは火気厳禁、タバコさえすえない、当然黒スモークなど焚けないのでフォグメーカーの白い煙でごまかすことになる。
 しかし今日は風が強い、先日のCMオープンくらい日差しが強いので風があるのはまだしも助かるのだが、フォグが全然効かないのには困った、カット数は多く風待ちなどしていられる状況ではないので、多少のことは目をつぶって撮影を続ける、ことによったら後処理で素材をだぶらせることになるかもしれない。

 助手は2名、フォグメーカーも2台なので実際私は今日は何もしていない。

 撮影終了後明日の段取りを確認し、「ロケ隊は7時に出発するけど操演部の出番は夕方みたいだから17時現場入りでいいよね」というネゴシエートをチーフ助監督、大岡カメラマンとする(黙っていると「よくわかんないから朝から呼んじゃえ」ということになりかねないのだ)これこそが技師の仕事であるといえなくもない。

 19時終了。

 7/30(月)

 また一日飛んでしまった、これまた昨日中に帰れなかったためである。


 神奈川県は追浜(おっぱま)にある旧日本軍の防空壕でのロケ、昨年の映画版ティガでしんかい2000のロケに来た場所の近くで、ほどなく横須賀といった場所である。

 17時現場というので時間の余裕があり秋葉原に寄ってかねてより念願のデジカメを買う、これで操演日記も少しは変化が付くかもしれない。

 その後日曜とほとんど同じコースを走って現場に向かう、距離も似たようなものだ、横浜で第三京浜に入って都心に向かうか横横(横浜横須賀道路)でさらに西に向かうかの違いでしかない。
 平日夕方のことで道が混んでいて爽快ではないが、遅くなることが予想されるので早く家に帰りたければ自前の足で行ったほうがよい。

 現場は水道局が管理する土地の裏手にある崖で、人ひとりやっと通れる入り口の穴をくぐると思いがけず広い洞窟になっている、撮影は入り口付近で行われているが奥は深そうである、我々の仕事は入り口向けのカットの時、戸外に雰囲気(ってなんだ?)のフォグを焚くことだけだ、暇なので探検してみるが奥は車が充分に走れる広さと高さのある通路が縦横に走っており、迷いそうでチト怖い、車の轍があるところを見ると他にも入り口があるのだろう、フォグを焚くとどんどん奥に吸い込まれていく所を見ると換気口が開いている可能性もある、さすがに軍港そばの軍事施設というべきだろう。

 外向けが終わったので操演部は先に帰る、22時30分、撮影はまだまだ続く。


 8月1日 (火)

 再び大塚遺跡、操演部は10時現場入り、他のスタッフは7時成城出発(現場8時30分)のはずである、操演部だけこんなに楽をしていいのだろうか?(いい)

 道は混むし、遅くなる事はないし車で行く理由はないので電車を使う、横浜から市営地下鉄に乗って「センター北」で降りる(「高校前」なんてバス停のある田舎のバスじゃあるまいし)

 「センター北」はいかにも何もない山林を切り開いて電車を通しましたってな感じの無理矢理な新興住宅地で、真新しい豪華な駅ビルと草ぼうぼうな空き地が鋭いコントラストを描くフォトジェニックな場所である、早く着いたこともあって買ったばかりのデジカメであたりを撮りまくる。

 撮影はジョーモノイドに追われて村に逃げ込む人々など、まだジョーモノイドは火を吐いていないので雰囲気は煙でなくホコリでなくてはならない、おとといはレギュレーター付きのままエアーを吹いたところ自然の風に対して勝負にならなかったので、今日は空気ボンベの直吹き(150気圧!)でやってみる。

 もの凄い音で同時録音が破綻するがさすがの圧力と流量で風に負けずうまくいった。

 撮影はまだまだ続く(!)が操演部は3時過ぎには終了、たいした仕事はしていないがおとといを上回る直射日光と熱気でへとへとになる。

 

 8月2日 (水)

 明日から3日間は岩舟ロケ、そのロケの積み込みと準備。

 8月3日 (木)

 本隊は7時新宿出発、こっちはサバを読んで(少々遅れてもすぐ出番にはなるまいと)8時に自宅を出たのだがそれでも30分以上先に着いてしまった、まったく岩舟は近い、ほかのどこのスタジオよりも家に近い、毎日ここで撮影ならいいのに。

 今日の出番は午前中は森の中での雰囲気(だから雰囲気てなに?)のフォグ焚き、午後遅くなって燃える家、縦穴式住居がジョーモノイドの火炎攻撃で燃えているのだが、美術部が作った1/1の家(のほんの一部)を燃やす。

 打ち合わせでは本当に火を付けて燃やすという話であったが、とても実現可能な事とは思えなかったのでプロパンを持って来てあったのだが大正解、出来てきたものは茅葺きのフリをしたわら屋根製で火なんかつけたらOKもNGもあらばこそあっという間に燃えあがり、燃え落ちるに任せるしかない代物であった。

 本体には四塩化チタンをかけて発煙させ、プロパンノズルを家のカゲとカメラ前に置いて燃えている雰囲気を出し、地面にガソリンを撒いて火を付けたり、画面外から黒スモークを流し込んだりしてそれらしく見せる。

 よく見れば家自体に火は着いていないのだが、特撮の燃えている家のカットに挟まれればこれで充分「家が燃えている」気分になるはずだ、これがエイゼンシュタインの唱えたモンタージュ理論である(ほんとかい)


 8月4日 (金)

 今日は通称「高台」での撮影、ここは登りの道がきつく、轍が深いので四輪駆動車以外では行けないあまり歓迎せざる場所である、もちろん歩いてはいけるのだが崖のすぐ上に見えるわりには道が遠回りでこれまた歓迎できない。

 一台しかないワゴン車を各パートが共通で使って荷揚げをするわけだが、自由には使えないので忘れものをしたりすると走ってとりに行かざるを得ないのだ。

 ここで今日は「念動波合戦」が行われるのでその「当たり」の爆発が我々のお仕事である。

 気候が良くアクセスが良ければ朝飯前の仕事だがとにかく暑さでまいってしまう、焼け付く太陽の下ここには一片の日陰もない、待っている間にも滝のように汗をかき、鯨のように水を飲んでまた汗をかく。

 午前中に悪者側が発射した念動波の爆発を3カットこなして昼食、手も洗わず(洗えず)炎天下の地べたに座り込んで弁当を食べる、おまけに休息時間短縮、こういう時「土方でも手ぐらい洗うって」(by北野武)というセリフが頭をよぎる、「撮影快調、生活最低」(by某カメラマン)というのもあったっけ。

 午後「良い者」側の火薬を仕掛け始めた頃、空に積乱雲が発生し始めた、2時過ぎこのカットを回す頃には風も出てきた、夕立が迫っている。

 皆「これは一雨来ますかね」などとのんきなことを言っているが「タオの月」で岩舟生活1ヶ月を数える操演部は気が気でない、ここの夕立は半端ではないのだ。

 爆発が終了し高台での出番が終わった我々は尻に帆かけて撤収する、まだまだ日差しは強く皆なにを焦っているのだと思ったろうが、日差しをさえぎるものもないこの高台で雨が降り始めたら濡れてはいけないものを抱えた人々が一台しかない車を巡って醜い争いを始めるに決まっているのだ。

 操演部は荷物を車にしまいこみ、濡れてかまわないものにはシートをかけ、シートには風で飛ばされないようおもしを置いて万全の体制である、私もマイカーを水のこない場所に移す、岩舟のプロである我々は雨が降ればどこに水がたまるかも熟知している。

 私がエアコンを利かせた快適な車の中で明日の火薬の準備を始めた頃それまで散発していた雷が間をおかず鳴り響くようになり、空は俄にかき曇りついに雨粒が落ちてきた。

 雨粒はたちまちバケツをひっくり返したようになり、同時に風も出てきて車も揺れるという騒ぎになった、現場がどんな惨状であるかは見当もつかない(つく)

 まだ3時だというのにあたりは日没直後のように暗くなりどうにももの凄い、私は岩舟で何度もこういう夕立に遭ったことがあるが岩舟にマイカー以外では来たことがないので結局いつもマイカーの窓越しに雨を見ることになる、シートを倒した荷室にひっくり返って雨と風の音を聞いていると過去の撮影の記憶が蘇る。



 1時間で雨は上がった、美術部が広場の入り口に建てていた「大柵」もパイプ足場ごとひっくり返って崩壊していた。
 聞けばやはり現場はえらい騒ぎだったらしい、我々も撤収がもうすこし遅れていたら同じ運命だったろう。

 リーダー改め「防人のオロロン」大滝氏に「一人だけ妙にこざっぱりしてますね」と言われる、皆がひどい目に合っているさなか私は一人エアコンの効いた車内で昼寝をしていたのだからそう言われるのも当然というべき。

 4時半本日撮影中止と決定が出る、カラカラに乾いていた地面に水たまりが出来、所によっては滝が出来ている(!)状態では同じシーンを続けて撮ることは不可能だろうから仕方ない。

 私はさっさと家路につく、高速で10キロほど走った羽生ではすでに路面に濡れた後はない、雷銀座と言われる宇都宮にほど近い岩舟ならではの夕立だったと言えるだろう、5時30分、帰りついた我が川口の空は青く晴れわたり、ちぎれ雲が西日を受けてすこしオレンジ色に染まっていた。


 8月5日 (土)

 午前中は逃げる防人達にホコリを送り込むのみ、特に要請されていたわけではなかったが空気ボンベを持ってきて良かった。

 午後はナパーム、ジョーモノイドの火吐きの「当たり」である。
 逃げる防人達の前後に4発仕掛ける、追っかけで2発、先回りで2発、タイミングがシビアなので上田が前2発、私が後ろ2発のスイッチを担当する。

 最後尾の人間が安全圏に達したところで1発目、2発目が爆発、先頭の人間が危険地帯に入る前に3発目、4発目がいくわけである、前2発を担当する人間は集団の最後尾に注目する必要があり、後2発の人間は先頭の人間に注意を払う必要があるので一人では出来ないのだ。

 ナパームが終わるとあとは平和な(?)スモーク焚き。

 18時終了、ロケは今日までの予定だったが昨日の雨もたたり明日も引き続き撮影となってしまった。

 8月6日 (日)

 本隊は7時出発(現場7時半開始)なのをサバを読み9時に岩舟に着いたが操演部の出番のない高台での撮影中であった、昼まで待ったがまだ出番になる気配もなく、そのまま昼食となる、下の広場で待つ我々にも弁当が届けられたが撮影隊は日陰のない高台でそのまま弁当を食べているようだ。

 午後3時やっと高台が終了し撮影隊が降りてきた、やっと我々の出番である「投石機」である、投石機全体はミニチュアで本編班にはその先端しかない、その先端に石をのせるカットはすでに撮影済みであり今日は石の発射カットである。

 しかしこれが問題だ、実物大投石機で発射カットを撮りたいという監督の意向を受け操演部が投石機の心棒を鉄骨で作り、美術部がそのまわりに自然木の造作をしたのだがこの造作が重い、スチロールで作るという話だったのがスチロールにFRP(強化プラスチック)を塗って木のディティールが作られておりこのFRPが厚く、さらに自然木も部分的に使用されていて考えていたものより数等倍重いのだ。

 ミニチュアでもよく起こることだが、美術部は出来が悪かったり壊れやすかったりすれば自分の責任になるが重くて動きが悪い、ピアノ線が太くなって消えない、などというのはしったこっちゃないので作り物がどんどん重くなっていくのだ。

 アームは40ミリの鉄角パイプで出来ているのだがこれがゆがんでいる、ストッパーの縄を切ったらサッとはね上がって欲しい、出来れば石を打ち出すところも撮れないか、というのだがそれどころではない、人間一人がアームの反対側にぶら下がってやっとゆらゆら持ち上がるというていたらくである。

 コマ落としでスピードを倍にするので出来るだけ早く、ということで準備が始まった、ゆっくり上げ下げする分には問題ないがいったいにどれだけ早く動かせるだろう?

 壊れそうなのでともかく本番いこうよ、ということで本気スピードのテスト抜きで本番である。
 「よーい ハイ」で上田がアームの反対側に体重をかける、投石機がはじかれたかのように持ち上げる・・かと見るやアームがアメのように曲がってしまった、40ミリの角パイプがかくまで奇麗に曲がったのを見るのは始めてである。

 どうにもならないので中止、善後策は後日見当することになった、これにて岩舟ロケは終了である一体私は何をしにきたのだろう。

 8月7日  (月)

 今日は撮休です、やれやれ。


 8月8日 (火)

 今日はダイナの本編ロケーション、操演部は出番がないのでスタジオで準備、ガスナパームのテストをする。

 ガスナパームとはプロパンでナパームのような爆発を作ることだ、火薬でガソリンを飛び散らせ発火させている通常のナパームにあっては、火球の中(やすぐ近く)を通過するということはガソリンをあびるに等しい、たとえばカースタントでも車の表面にはガソリンがまとわりついて燃えあがる、衣服であればガソリンがしみこむわけで人物がらみのファイヤースタントは危険このうえない。

 しかしこれがガスであれば何かにしみこむことはないし燃え残りも出ない、ハデでも一瞬で終わるので始末がいいわけだ、そのためアメリカ映画では人物がらみはガスナパームが多い。

 今回スタジオ内で比較的大きな火球が要求されているので我々もこれを使用するつもりなのだ、実際に上田が「鉄甲機ミカヅキ」で一度使用しているのだがそれはオープンセットでありスタジオ内での使用は初めてなのでテストしておきたいというわけだ。


クリックすると大きな画像が表示されます(900*900)


 8月9日 (水)

 今日もダイナのロケで出番なし、操演部はお休みです。

 8月10日 (木)

 同じです、z z z

 8月11日 (金)

 今日はティガのロケ、出番のない操演部は「泡吹き」、「ドライアイスの滝」の準備とテスト。

 泡吹きはダイナの怪獣用だ、監督の希望ではあるのだが泡を吹く怪獣はどうも好きではない、洗剤で手がべたべたになるから・・ではなく、泡を泡らしく見せようとしたらスケール感壊しまくりになるからだ。
 
 巨大な怪獣が本当に泡を吹いたら(あるいは着ぐるみの怪獣が1/24サイズの泡を吐いたらでもよいが)泡の粒の判別など出来ず、多分白い液体とか白い煙にしか見えないはずだ、誰もが一目で「あ、泡を吹いた」とわかるようにしたければこれは縮尺もあらばこそ1/1サイズ(台所で普段見るサイズ)の泡を出す以外ない、誰もが知っているあの泡だ、苦心して巨大に見せていた苦労が一瞬にして無効化されてしまう。

 まあダイナはそもそもがコメディで、今回もその路線全開であるから固いことは言いっこ無しということでいいのかもしれないが、私は基本的に泡吐き怪獣は好きではない、手がベトベトになるし。

 8月12日 (土)

 今日は人を吊ったり、ドライアイスの滝を作ったり、人を吊ったり、風を当てたり、人を吊ったりしました、典型的な操演技術者の一日です(そうか?)

 8月13日 (日)

 ガッツウイングαSのコックピット、嵐という設定だが(すでに特撮では雨を降らせて撮っている)問題なのは風防に雨をあててもいいものか?ということだ、寡聞にして飛んでいるジェット機の風防に雨があたったらどうなるのか知らない、しかし車でも時速100キロ程度出せばフロントガラスの雨は上方に流れ去るし、飛行機にワイパーがない事を考え合わせれば雨粒が瞬時に吹き飛ばされることは想像がつく、水滴が留まっていたら絶対おかしいことは確かだ。

 普通はだからカメラとコックピットの間にのみ雨を降らせ(というか横なぐりに飛ばし)あとはFOGを流してごまかす、ところが今回は大岡カメラマン、村石監督の「どうなるかやってみようよ」というご希望で実際に雨を当てそれを吹き飛ばしてみることになった。

 4台の送風機をコックピット前に並べ、風を轟々と当てているところへ散水ノズルから雨を送りこむ、がダメ、水滴はほとんど流れずワイパーの壊れた車にしか見えない、そこで空気ボンベから150気圧の風を送ってみる、がこれもダメ、確かに水滴は飛ぶのだが高圧ホースのノズル径が小さいので風の当たっている点から放射状に飛んでいるのがばれてしまうのだ、離れれば当たる面積は広がるが風圧は弱くなってしまう、結局ボンベを2本使ってなんとなくごまかして撮る。

 わかったことはジェットファンなど何台あっても勝負権はなし、高圧ボンベ直吹きなら可能性はあるものの単座のコックピットでも高圧ノズル10本程度は必要ということだ、7000リットルの大空気ボンベでも直吹きをすると1分程度しかもたない(100気圧を上回るのは20秒程度だろう)ことを考えれば「やめたほうがいい」撮影効果と言えるだろう。


 8月14日 (月)


防人を金棒で持ち上げる中村「オロッチ」、
というようなグリーンバックを我らがティガ班が撮っている時

オープンではウルトラマンネオス班が

トランポリンカットを撮っていました、東宝ビルトはウルトラマン一色です


 8月15日 (火)

 今日から原田組のウルトラマンダイナである、というかすでに一日ロケがあったのだがそれは操演部の出番がなかったのだ。

 当初の計画では映画が始まる頃合いであったため大岡カメラマンと高野照明技師は予定通り抜けダイナには参加しない、一緒に抜ける予定であった私は「抜けてもやることがない」のでそのままである、映画は遅れているのだ、このままではダイナの終わりまで参加できそうな勢い(?)である。

 今日はαβγ号のコックピットの撮影だが我々の出番は1カットでリョウ機に火花を仕込むのみ、昼から出て怪獣着合わせに立ち会い、1カットパチパチっと火花を散らして16時終了。

 8月16日 (水)

 東神奈川でのダイナのロケ、操演部は出番がないのでお休み。

 8月17日 (木)

 今日は撮休です。

 8月18日 (金)

 今日は南大沢(東京郊外の新興住宅街です)でダイナのロケ。

 準備段階ではここで宇宙人とアスカが「香港ワイヤーアクション」をする、と聞いていたので何をさせられるのかと思っていたのだがそれは殺陣師からのアイデアで全て(吊りも含めて)アクションチームが行うということなのだった。

 実際香港ワイヤーアクションは殺陣をつけるのも、仕掛けを考えるのも、アクションするのも、ザイルを引くのも同じアクションチームがやるから出来るのだ、ということがある。

 体にワイヤーを巻き付けてむりやり引っ張るなどという野蛮なマネは他人にはとうてい出来ない、痛くてもケガをしても身内であればこそ許されるのであって操演部が俳優部に対して行えることではない、ましてや殺陣師とアクション俳優が同じ事務所でない場合、殺陣師の注文で操演部が無理な吊りを強行し、そのあげくに俳優がケガでもした日には一体誰に責任があるのかということになる。

 殺陣師はやりたいことだけ言って手をくだすのは操演部、という日本のシステムに疑問を感じていた私にとってこれはもっとも望ましい形式である。

 というわけで我々の出番は火薬1発のみ、操演部4人が雁首揃えて行くカットではないので今日は上田と秀平2名のみが現場に出る、私的にはお休みである。

(結局、操演部の出番になる前に日没延期になってしまった、残りは23日に撮るという)

 8月19日 (土)

 今日は「廃工場にひそむミジー星人」川崎大師の工場へロケ。

 ほこりっぽさを出すためのフォグ焚きのみなので今日も上田と秀平のみ現場に出る、私はお休み。

 

 8月20日 (日)

 撮影はまずロケ、昼過ぎにスタジオに戻って空バックとグリーンバック、操演部の出番はスタジオのグリーンバック、それも最後の最後なので15時にスタジオ入りする。

 「ハネジローカプセル」をピアノ線で一点吊りにしてくるくる回し3カット分撮る、1つは受け目(近づいてくるところを撮る)で宇宙から地球に近づいて来るカット、1つは送り目(遠ざかっていくところを撮る)で地球に落ちていくところ、これはどちらも宇宙空間バックに合成される、ついで空バックに合成される「地上近くを落ちていくカプセル」だ(似たような絵だが背景が宇宙バックと空バックとでは照明が違う)

 18時終了。

 8月21日 (月)

 宇宙人の念力によってアスカの手から拳銃が飛ばされる(ピアノ線で引っ張る)という1カットのみなので、辻、秀平の両名に現場をまかせ、上役2名はお休みです。

 8月22日 (火)

 向ヶ丘遊園(遊園地です)でダイナのロケ。
 「ハネジローカプセル」が煙とともに開き、中からハネジローが出てくるカットが我々の出番、午後から現場入り。

 スタンドと鉄骨でハネジローカプセルを固定する台を組み、滑車でピアノ線を取り回してカプセルの開く仕掛けを作る。
 
 中に黒色火薬を小さじ一杯ほど仕込みフタが開くと同時に煙を出す、なんということもない簡単な仕掛けだがなにしろ開業中の遊園地のこととてそばまで車で行けず、高低差のある園内を手持ちで機材を運ばざるを得なかったのにはまいってしまった。



 遊園地好きの私は都内および近郊の遊園地はくまなく探索しているのだがここ向ヶ丘遊園だけは来たことがなかった、そこで仕事が終わったら機材車は助手に任せ自分は現地解散して見物しようと思っていたのだが・・・何でいままで来なかったのか改めて認識した、技のないローラーコースターと観覧車、ありがちな筏式のコースター(TDLで言うスプラッシュマウンテン)ほとんどこれしか乗り物がないのだ(幼稚園児向きの物はある)そして許されないのがお化け屋敷がないこと、これはもう遊園地と名乗る資格はありませんな、しかも午後5時で閉園!!

 我々が機材を片づけたのが5時ちょっと前、どのみち遊ぶ暇なんてありゃしなかったわけなのだが夏の5時ってまだ西日でもありませんて。

 8月23日 (水)

 今日は村石組(ティガ)の特撮打ち合わせと原田組(ダイナ)のロケが同時に行われる。
 (ロケは先日上田、秀平両名が1カットのために出動し結局出番に至らないまま撮り残して帰ってきたものだ)

 こんな荒技が可能なのは一班編制(同じスタッフが本編も特撮も撮る)といいながらも映画に向けてメインスタッフが途中退場可能なように編成してあったためだ(とはいえ各パートとも現場を把握して準備を整えておくのはチーフの役目であり、チーフ抜きの打ち合わせというのは問題ではある)

 撮影自体はどのカットも特に難易度が高いものはないが、一ひねりあるカットの連続で操演部はそれなりに忙しくなりそうな気配である、操演部が忙しいということは時間がかかるということであり、土曜からの約一週間は大残業であることが今から容易に想像できるのであった(すでにため息)

 8月24日 (木)

 撮休です。

 ところでこのリアルタイム日記が始まってすぐのこと、炎天下のオープンでナパームをやるはめになりまいってしまった、と書いた東北新社のCMがオンエアされ始めました、それはNTT東日本の「ガッチャマン」

 西に住んでいる方は当然見ていないと思いますがSMAPの5人がそれぞれ

G1 大鷲のケン 中居正広
G2 コンドルのジョー 木村拓哉
G3 白鳥のジュン 稲垣吾郎
G4 つばくろの甚平 草薙剛
G5 みみずくの竜 香取慎吾

 に扮し、近未来の渋谷を舞台にギャラクターと戦うイメージCM(でも何故それがNTT?)です。

 私が担当したのはミニチュアのビル爆発と空中バイクの爆発素材(空中ナパーム)、G3の使う爆破人形の爆発、ミサイルの噴射煙です、今回はビル爆破とラストカットに使われている空中ナパームしか使われていません。

 スタッフはサッポロビールの「卓球編」「河原で焼き肉編」を撮ったチーム、私は面識がいっさいありませんでした、それで何故この仕事が回ってきたのかと言えば「渋谷でビル爆破」といえばガメラ3「あれやった人間呼んでこい」という事であったらしいのです。

 吹き替えアクション、スタントはJAC、そのため人吊りは東映からJACになじみの操演技術者が呼ばれていました。

 私は爆破担当、それ以外の操演事も頼まれたのですがなにしろウルトラが控えていたのでこれは断り、そのため操演一般事として「ローカスト」という操演会社が入りました、更にアメガラス(安全に割れるガラス)の仕込みに「フィールドゴール」という操演会社も参加し、結果操演会社が4ついり乱れる豪華な作品となりました(というか、まあSMAPを5人揃えて起用するというのがなににもまして豪華なのですが)

 「今回は」と先ほど書きましたが実はこのCMは30秒の2部構成なのです、今やっているのはAパートと呼ばれる前半部分、9月に入るとBパートがオンエアされます(NTT東日本のサイトへ行くとアニメ版のBパートが見られます、製作はもちろんタツノコプロ、豪華ですね)


 8月25日 (金)

 諸準備、明日からちょっとハードな特撮週間に入るのであれこれと出来るだけの準備とテストを行う。

1・投石機テスト
(1/2投石機の作り物が完成したので仕掛けに組込み、本当に石が投げられるかテストしておく)
2・ミニチュアの巨大ボウガン(?)の発射と刺さりのテスト
(直径8ミリほどの矢がジョーモノイドの額に刺さらなければならない、木の丸棒の先端にアートナイフの刃が付いた矢を作り、吹き矢方式で飛ばす)
3・泡吹きテスト
(前にテストしたときは13ミリの水道ホースだったがもっと太い方がいいと思い20ミリのホースでテスト)
4・ドライアイスゲート製作
(「魔窟」のバックになるドライアイスの滝を作るため幅2間のチリトリみたいな物を作る)
5・平台爆弾製作
(今回の特撮は平台爆弾大会になるので増産しておく)
6・爆発人形仕込み
(爆破用ジョーモノイドに火薬を仕込む、本番はあさって、普通は前日に仕込むのだが多分明日はそんなことはやっていられまい)


 8月26日 (土)

 ひさしぶりに特撮が始まったと思ったら大操演大会。

 クレーンで飛行機(というかカヌーに翼が生えたものというか)を飛ばしつつ怪獣で火薬を破裂させつつ、しっぽは吊って、ホコリは出して、山は崩して、フォグは焚いてというようなカットが一日続いていささか疲れてしまった、おまけに予定通りの大残業。

 家に帰って一服したらもう26日は昨日になってしまった、リアルタイム日記の最大の問題点はここだ、つまり「書きたいことが一杯あるときは書くヒマがない」


 8月27日 (日)

 昨日の撮り残しは後日に回り今日は朝から格闘になったので操演部は楽になった、ウルトラマンと怪獣が格闘だけしている限りはホコリとフォグ焚き、怪獣のしっぽ吊りくらいしかないからである。

 操演部がヒマだと撮影は早く進み今日は30カット以上回った、私は今日は火薬のある2カットくらいしか事実上の仕事をしていない。

 なんにしても撮るべきカット数は多く残業である。


爆破人形と着ぐるみ(クリックすると大きな画像が表示されます)
手前が火薬の仕込まれた爆破人形(高さ1尺5寸)奥では森君が着ぐるみに入り爆発する寸前のカットを撮っている(もがいたあげく爆破人形のポーズで固まる)



 8月28日 (月)

 九州より操演志望の高校3年生来たる、小学校以来の特撮志望で一度はあきらめたもののいよいよ職業を選ばざるを得ないこの時期に操演日記を読み、やはりこれが自分の道であると思ったのだと。

 やめた方がいいよとは言ったのだが本人の意思は固く、ならばとにかく現場を見てみれば? ということで今日の現場見学となったわけだ、「G3日記」に言うガメラの現場は実は特撮屋のパラダイスみたいなもので、劇映画でない作品にしてはかなり恵まれているウルトラの現場でさえ実際にはどれだけ狭く、ぼろく、あわたただしいかを見たら気が変わるかもという意味あいもあった。

 本人がそれでも出てくるといえば我々には止める手段はないが生活の保証はまるで出来ない、フリーの操演技術者である辻、秀平はとくにその点について忠告を惜しまなかった、貯金が底をつき、仕事のあてはなく、支払いの期日が迫る恐怖と焦燥を知っている者としてはとてもお勧め出来る商売ではないのである。


*現場見学って出来るんだ!と思った方に一言、先回りして申し上げますが彼は人生の岐路に立っていると思われたので特別に呼び寄せました、当然これは例外で申し出られてもお受けできません。


 8月29日 (火)

 今日は穴にはまるティガ−土煙、その上に飛び降りるドグーフ−土煙、ドグーフをはねのけて穴から飛び出すティガ−土煙、ドグーフを脳天逆落としで地面に叩きつけるティガ−土煙、と土飛ばしの火薬が4つもあり、コンテには「平台爆弾」などと書いてあるのだがこれらを全て平台爆弾で行うとすればとうてい今日の予定は消化出来まいと思われた。
 平台爆弾は仕掛けるのも時間がかかるしNGが出たときに取り替えるのも大変である、また爆弾が仕掛けられている平台は美術部の飾りが出来ないし、美術部の手を止めてしまう時間も長いというやっかいな仕掛けなのだ。

 そこで上田が「鉄甲機ミカヅキ」で開発した通称「ねずみとり君」を今日は多用する事にした、これは弾着の上に10×10センチほどの厚ベニアを乗せ、片側2点をネジ止めしたもので弾着の衝撃でベニヤの上に乗せた土をはねとばす仕掛けだ、平台の下に石膏で5分玉を張り付けた平台爆弾のサブセットと言ってよい、これだと全てセット上で勝負出来るので仕込みが早いし、飾りもそばまで寄って来られるので美術部にもウケがいい、効果はあまり変わらないし忙しいときには最適である
(そもそも要求された効果をどうやって実現するかは私が考えることである、仕掛けの方法までコンテに書き込まないで欲しい)

 またまた大残業でもう1時だ、明日はオープン撮影で開始が1時間早い、やれやれ。

 8月30日 (水)

 8時開始でオープン、午前中に投石機(1/2サイズで作り直したもの)ティガの着地(とその平台爆弾)、トランポリンカット(出番なし)などをやり午後からセットに入る。

 セットではグリーンバックで権藤君の横吊り、人無しドグーフの吊りなどを行う、GBと言うと操演大会であることが多いのだが(ということは面倒な撮影が多く時間がかかるということだが)今回は幸いにも我々の出番は1/3程度であり比較的進みは早い、しかし撮るべきカットは多く予定は消化出来そうにない。

 夜、外に出てみると彼方で花火が上がっていた、光ってから音が聞こえるまでにしばらくかかる彼方の花火である、いったいに私は何度ビルトのオープンで花火を見たろうか?なんでいつも先の見えない撮影の真っ最中、暗澹たる気持ちの時に見るハメになるのだろうか? 
 などと考えながらしばらく遠い花火を見物し、スタジオに戻ったら出番になっていてどこいってたんですか!と助手に怒られてしまいましたとさ。

 8月31日 (木)

 グリーンバックの続き、ジョーモノイドの吊り、巨大ボウガンの矢の回転、αS号の立て吊りなどをやって午後3時、やっと昨日の予定を消化した。

 本日分はドライアイスの滝から、これはミニチュアで撮影した「魔窟」の背景になるもので滝のうしろからジョーモノイドやドグーフが出現したりする。

 鉄骨で組んだ高さ3メートルほどの枠の上に幅2間のドライアイスを流し出す箱を置き、2台のドライアイスマシンからジャバラホースを引く。
 ドライアイスは300Kg買ってあるが足りるかどうか不安である、手を下すのは操演部だが消費の主体は監督であり(NGが多ければカット数が増える)照明部であり(照明を決めるためにテストでドライアイスを流す必要がある)カメラマンである(フレームを決めるのに出して見てと言われる)からだ。
 やってみなくてはどれだけ必要になるか誰にもわからない、にもかかわらず足りなくなれば「読みが甘い」とか言われて私のせいになるのは何故なのだろうか?

 途中でこの調子だとヤバイいことになると大岡氏にプレッシャーをかけたおかげで、2カット3カットを一気に撮ってもらえるようになり、結局1/3ほどを余してこのカットを終了した、ドライアイスカットで2/3までを消費すればまずまずの読みであったと言うべきだろう(完全に無くなってしまえば撮影がストップするわけで、もとよりギリギリを狙うわけにはいかないからだ、撮影を止めないためには無くなる遥か以前に買い足しに走らねばならない)

 しかしこれが終わったのが夕食も過ぎた午後8時、ついでティガピラミッド内部の撮影にはいる、予定ではそののち「集落ミニセット」「操演クレーン関係」「カラ舞台(合成のバックになる背景素材」「光素材、雨素材、ホコリ素材」となっており、このまま撮影続行したら貫徹しても終わらない状況である、ここでついに演出部は村石組のスケジュールを一日延ばすことに決定した。

 明日の撮休は延期である、大残業が続きいささ疲れていたので延期は痛いと思っていたところセット回転の都合で(セット回転とは1番ステージでGBを撮影している間に2番ステージのミニチュアセットを飾り変え、2番ステージの撮影が始まったら1番で・・・というようなローテーションである)どうしても2日の原田組のGBは動かせないという話になり、結局休みが2日延びてしまった、9/1に村石組が終了し9/2に原田組の特撮を1日だけやって撮休ということだ、ますます疲れてしまった。

 9月1日 (金)

 9月の声を聞いたのに最高気温が30度を超え、ミンミン蝉がうるさく鳴いているのは何故?

 夏休みが終わって通勤電車には学生の姿が戻り、以前の混雑が戻ってきた。

 今日で一段落とはいえまた10日あまりの特撮が始まると思うと気分はもうヘロヘロである。

 今日くらいは定時で終わらそうというスタッフの熱意のおかげでサクサクと撮影は進み、それでも6時になっても撮影は終わらず、しかし誰もメシはまだかとは言わず、ついに7時、撮影は終了した。
 
 村石組終了ということで簡単に乾杯、みな配られた折り詰め寿司を食べ始めるが「喰わずにすむならスタジオでは絶対にメシは喰わない」をポリシーとする私は折り詰めを鞄につっこんで家に帰る。



 
1・東宝ビルトビルト、オープンステージで愛犬リンリンを散歩させる暇人
2・撮影を尻目に愛犬リンリンとたわむれる高野和男氏
3・照明助手を訓練する照明技師

答えは全て○です。

 9月2日 (土)

 気温が30度を超え・・どころか37度を記録したらしい、暑いまま冬になったりして。
 今日から原田組ということで大岡カメラマン、高野照明技師は映画へ移る、今日はロケハンに出るそうな、と聞いてはいたのだが朝成城学園前のホームで当の高野氏と一緒になった、9時ミスタードーナッツ前出発のロケハンなのだという、昨日「俺たちゃ抜けるけどみんながんばってね〜」などと軽口を叩いていたのだがこの天気で丹沢の山歩きさせられるくらいならエアコンの効いたスタジオでGBでも撮っていたほうがマシだ。

 というわけで原田組の特撮が始まった、明日の撮休を挟んで十日間の予定である。

 

 9月3日 (日)

 Z z z z z Z z z z z

 9月4日 (月)

 ・・・ Zzzzz はっ!

 (というのは冗談だが)

 9月5日 (火)

 怪獣がビルを壊す段になり、回し引き(先の細いノコギリ)を握って石膏に切れ目を入れながらそれがずいぶんと久しぶりの作業であることに気が付いた。

 ガッチャマンでもビルは壊したがあれは1/10サイズのデカいビルであり、怪獣が踏みつぶすわけではない。
 ホワイトアウトにビル壊しがあるわけもなく、映画版ティガにそもそも石膏ビルは出てこなかった、その前というとビデオ版ウルトラセブンということになるが石膏ビルの壊しがあったろうか?、なかったとするとその前の「鉄甲機ミカヅキ」ということになる、おととしの暮れだ。

 久しぶりである人間は私だけでないらしく(って当然だが)どうも調子が出ない、特段の注文もない石膏ビル壊しくらい1時間半からせいぜい2時間で方をつけなくてはならないところなのに午前中一杯かかってしまった、撮影自体も定時で楽勝に終わると思いきやけっこうな残業になってしまった、いかん。

 9月6日 (水)

 今日の操演部の出番はビル壊し(切妻タイプの屋根がしゃれている4階建てのアパートですが)のみ、このカットに関しては建物のサイズが小さいこともありまた、出来るだけスピーディな作業をこころがけたこともあり、切り込みの直しを手伝った(美術部の仕事なのです)こともあって1時間もかからず、全体としてかなりのハイペースで撮影が進み定時よりかなり早く、楽勝で終了しました。

 操演部の出番が少ないと撮影は円滑に進むということです、それがいいことなのかどうかはわかりません、もっとも雨宮慶太のように「操演部がヒマそうにしていると、俺の作品は大丈夫か?と不安になる」空間恐怖症ならぬ(仕掛け)空白恐怖症なお人も困ったもんですが。



 9月7日 (木)

 以前テストした怪獣の「泡吹き」が本日のメインイベントである、当初13ミリの水道ホースでテストをしたのだがもっと太いほうが面白いだろうと思い怪獣着合わせの際、開米プロ(造形屋さんです)に20ミリホースを仕込んでもらうようにたのんであった。

 太さの変更など泡の出具合にはまったく問題あるまいと思ったのだが一応念のためと思って20ミリでもテストはしておいた、そのようにテストを繰り返していたので自信をもって本番に望んだのだが・・・

 テストに使用したのは台所用洗剤の「ジョイ」である、これは近くのコンビニで買ったものだがコンビニのこととて300mlの小瓶であり3本しか在庫がなく、とうてい本番には足りないと思われたので追加を東宝大工センターに買いにいった。
 しかし同じものがなかったので「除菌タイプのジョイ」(!)とファミリーフレッシュの大瓶を買ったのである、適当に買った洗剤でまったく問題がなかったためこれについては問題視していなかったのだが実は「泡立ちが全然違う」のであった。

 泡吹きは結局は白い水とも粉とも見える代物が口から出ているだけなので、泡立ちの良いも悪いもない、しかし出来た泡は水気が多くたちまち消えて水に戻ってしまう、ダイナのウエットスーツに吹きかけるとかなりのペースで流れ落ちてしまうのである。

 泡はやがて石に変化してダイナを固めてしまう、という設定なので合成の間だけでも泡はウエットスーツ上に留まっていて欲しいのだが全然ダメ。

 もともとそのカット用には電気ドリルで作った巨大泡立て器で別途泡を作り、それを塗る手はずになっていたのだがこちらも泡立ちが悪い、テストでは1時間くらいは平気で持つ生クリームのようなメレンゲのような肌理の細かい泡が出来ていたのに今回は消えていくスピードが数等倍速いのだ。

 ゆっくりと美的に泡付けするはずがポリペール缶に溜めた泡を清水君の頭からぶっかけるようにして、担当の人間がフレームから逃げきらないうちにカメラを回して撮る、というあわただしい撮影になってしまった、なんとかOKは出たもののバタバタしてしまったのは私の読みの甘さ以外の何者でもない、同じ台所洗剤でも(除菌とそうでないタイプの違いしかなくとも)泡立ちはずいぶん違うので入念なテストが必要であるというのが今回の教訓であった。


 9月8日 (金)

 午前中は怪獣ワンゼットとGW(ガッツウイング)の「からみ」。
 午後は動作停止したワンゼットのカットが多くなったので(つまり操演部は暇になったので)私は明日の岩爆発(泡を吹きかけられ岩になったダイナが岩を破壊して出てくるカットだ)の準備をする。

 爆破人形と同じくスチロール製の爆破岩に5分玉を付けるのだが、人形より表面積が多く1時間から1時間半と見たものが3時間近くかかってしまった、すぐ出来るだろうから明日でもいいかなどと思っていたのだが手を付けてよかった。


 9月9日 (土)

 明日の予定であったオープンを急遽本日撮影することとなった、明日の予報はともかくとりあえず今日は晴れているからだ、予定どうり明日にまわして天候が不良となり最終日であるあさってまでに回復しなかったら今後のスケジュールが大打撃をこうむるわけで当然ではある
 

 我々がここでやることはエレベーターのみである、エレベーターとは

怪獣やウルトラマンの出現で使用する

人力(2人力)で動かす、上下台である

(クリックするとどちらも大きな画像をご覧になれます)

 9月10 (日)

 今日のメインイベントは岩の落下、怪獣ワンゼットが変身している(のか?)全長数十メートルの石が空から落ちてきて「らくだ便」(!)の倉庫に命中、地面に突き刺さるというカットだ。

 高さ4mの鉄骨2本に長さ4mの鉄骨をさし渡して枠(通称「鳥居」)を作り、中央にモノレール(ベアリングが4方に付いていて中を50角の鉄骨がスライドする仕掛け)を取り付け、スライドする鉄骨の下端に岩を取り付ける。

 岩の全長は2Mある、岩の上部が鳥居の横木に接触しているところから始まって、下部が地面に接触するまでが動き幅になる、横木の高さは4mなので岩が2mのままだと丁度自分の長さ分しか動かないことになるわけだ。

 さてカメラフレームは岩を地面に接触させたところで決めるわけだがこのとき上の鉄骨がばれないギリギリのところでフレーミングされてしまうと画面の上下幅が2mとなり、岩を引き上げても先端が上フレームのすぐ上にあることになる、そこから岩をスタートさせると停止状態から加速しながらフレームインしてくることになりはるか上空から落ちてきたようにはとうてい見えない、そういうフレーミングはやめて欲しいのだがこれは他のパートにはなかなか理解してもらえない、そしてカメラマンは10あれば10撮りたいと思う人種なのだ。

 倉持カメラマンとは関係良好なので、一度決めたところで操演事情を話せばサイズを変えてくれるとは思うが基本的にはフレーミングはカメラマンの専任事項だ、カメラマンが仕掛けや火薬の種類に口を出さないのと同様、私はなるたけフレームに口を出したくはない、というわけで前もって仕掛けをしておくことにした、鉄骨を取り付ける事情があると称して(まあそれは一片の真実ではあるが)岩の上部50cm程を切り飛ばし、美術部にコンパネを貼ってもらってあるのだ。

 これで岩の全長は1.5mとなり、コンパネがばれないぎりぎりのフレーミングをされても上に2.5mの余裕が出来、岩を上一杯まで引き上げればフレームインまでに1mの助走が取れることになる、口を出さずして操演部の意思をフレームに反映させる生活の知恵といったところだろうか。


 9月11日 (月)

 今日で原田組のダイナが終了する、途中降板せずに済んでとりあえずは良かった・・・と書くはずが急遽新作映画の打ち合わせが入ってしまった、こういう時のための2枚技師体制(?)だったわけで私が抜けることになんの問題もないのだが、ここまでくれば最後までやりたかったと思わざるを得ない。


 さて7月以来約2ケ月続けた「リアルタイム操演日記」ではありますがとりあえずここで一旦終了とさせていただきます、理由はともかくも「気がせく」の一言に尽きます、家に遅く帰って「あっ、もう今日じゃなくなる」などと思いながらキーを叩いていると書きたいことの何分の一も書けません、書くことが一杯あるときに限って書く時間がなくなるというのも問題点の一つです、余裕がなくなって操演日記以外のことも書けないのもイヤですし、個人的な事情ながらネット上の出入りの場所にすっかりご無沙汰してしまったのも気になります。

 10月1日から再び映画が始まります(まだ製作発表していないのでタイトルは秘密です)そのおりにはまた操演日記を始める予定ですが、形式をどうするか考えなくちゃいけませんな。


 というと、まるで10月までお休みするがごとき口上に聞こえますがそんなことはありません、引き続き覗いてみてください。

 ところで今日から「ガッチャマン」Bパートが始まりました、ガッチャマンに始まってガッチャマンに終わる。
 
 

戻る