ORION-15


 ソ連の写真器材にはオリオン(ОРИОН)と云う名前のものが2つあって、うちひとつはいわゆるコンパクトカメラ、もうひとつがこの広角レンズである。オリオンと云えば冬の大三角形を形作る有名な星座であるが、いったい何の脈絡でこの名前が採られたのか皆目見当がつかない。もしかしてオリオン座が画面いっぱいに写るのかと試してみたけれど、さすがにそんなことはなかった。だいたい15と云う数字も判らない。知られる限りオリオンと云う名のレンズは、後にも先にもこれ1種なのである。
 オリオン15は1950年代の初めに出現した。LTM(ライカネジ)とCTX(コンタックス)の2マウントで供給され、初期のものはKMZ製、主に目にするのは目玉のようなファクトリーマークのザゴルスク製である。トポゴンに似た4群4枚構成で、やはりトポゴン同様距離計には連動しない。スペックは6/28と、今となってはなんとも凡庸な限りだが、開放値F6というのはそれなりに計算されたものであったろう。
 開放絞りでは絞り羽は隠れて見えないもの、と云う先入主に浸った頭からすると、手に入れたレンズの絞り羽が開放でも開ききらない(文字通り虹彩のように見える)のを目にするのは精神に良くない。しかし、これはこれでいいのだ。トポゴンがF6近辺に絞ってもそれほど尖鋭にならないのに対し、オリオンは開放から吃驚するくらいに解像度が高い。見た目の安っぽさからは想像もできない性能を発揮してくれる。先にも書いたようにこのレンズは距離計に連動しないが(LTMは連動するらしい)、連動しないからと云って、だが莫迦にすることはできないのだ。だいたい28mmの焦点距離で厳密にピントを合わせようなどという行為は、一眼レフに慣れた昨今の悪い風潮である。この種の広角レンズは、しかも開放ですでにF6まで絞られているのだ、パンフォーカスで使うのがセオリーであろう。実際のところ、3m固定で振り回しても、あるいは目測で距離を合わせても、それほど画質に変化があるわけでもない。
 ところでキエフのファインダー視野はおおよそ50mm固定であるから、オリオンでフレーミングするには外付けのファインダーが必要となる。しかしソ連では、28mmのファインダーはついに生産されなかった。代わりに重宝するのが、ツァイスの436/70ファインダーのコピーである、ユニバーサルファインダーである。正確な視野とは云いがたいが、ソ連製ではこれしか使えるものがない。ソ連製にこだわる必要はないとしても。ただし、レンジファインダーカメラで厳密なフレーミングすることに、どれほどの意味があるのかは判らない。




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