住民の人生と自然を破壊するダム

〜八ッ場ダム予定地見学会 2008〜




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 (2008年)8月30、31日、群馬県長野原町の吾妻川に計画されている八ッ場(やんば)ダムの予定地を見学しました。主催は、全国自然保護連合、千葉県自然保護連合、日本消費者連盟などです。
 参加者は、中型バスにぎっしりの26人です。公共土木事業にかかわる自治体職員も数人参加してくれました。



■すさまじい自然破壊と罰当たり行為

 現地では、「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長と地元・長野原町の牧山明町議が案内をしてくれました。

 参加者はみんな、現地を見たり、説明を聞いてビックリです。関連工事があっちでもこっちでもどんどん進められ、自然がズタズタに破壊されています。

 「三ッ堂(みつどう)」とよばれるお堂と石仏群も高台のほうに移されていました。石仏は等間隔で並べられ、しかも「岩」はコンクリートで造られています。参加者から思わず、「東京ディズニーランドと同じだ」という声があがりました。

 参加者の一人、東京都葛飾区の住職さんは、すさまじい自然破壊や罰当たり行為を嘆かれました。


■代替地はいまだに未整備

 水没予定地の住民は1992年、各集落を水没線より上に移転させて代替地を用意するという国(国交省)と県の提案を受け入れて用地補償協定を結びました。これによって、長く続いた地元住民の反対運動は終結しました。

 しかし、国は約束をことごとく破っています。代替地の整備は大幅に遅れています。しかも、国が示した代替地の分譲価格は坪単価10万以上(川原湯温泉街は17万円以上)で、ものすごく高額です。そのため、代替地移転をあきらめ、補償金を受け取って転出する住民が相次いでいます。
 世帯数は激減です。6年前に移転新築した長野原第一小学校も、生徒が52人(02年度)から26人(08年度)に激減です。


■やがて総事業費は1兆円超に

 ダムの本体工事は、いまだに着工されていません。しかし、すでに関連工事に2200億円が投入されています。

 国道やJR吾妻(あがつま)線の付替工事は急テンポで進んでいます。国道付け替えは約500億円、JR付け替えは約400億円だそうです。

 水没予定地に豪華な工事用の橋が何本もつくられています。八ッ場ダム予定地は地質が非常に脆弱(ぜいじゃく)です。そのため、関連工事によって、あちこちで土砂崩れが起きています。その対策にも莫大なカネが投じられています。
 とにかく、八ッ場ダム関連工事は税金が湯水のようにつぎこまれています。

 2001年に、ダムの完成時期が2000年度から2010年度に10年延期されました。また昨年12月には、完成予定がさらに2015年度に延期されました。
 このダムの事業費は4600億円です。関連事業や起債の利息まで含めると、総事業費は8800億円におよびます。日本一高いダムとして有名です。

 ちなみに、完成時期の再延期による利息を考慮すると、総事業費が1兆円を超えることは確実と見られてます。その半分近くは、東京、千葉、埼玉など、1都5県の住民が負担するのです。

 以下は、参加者の感想です。
     「5年前に行ったときは、工事や自然破壊はそんなに進んでいなかった。久しぶりに現地をみて、ショックを受けた。なんとしてでも止めさせたいと思う。総選挙では、八ッ場ダムに反対している政党にがんばってもらいたい。」

     「国民を税金を使って、やりたい放題にやっているという感じをうけた。ダムの本体工事はなんとしてでも止めさせたい。」

     「現地を初めてみた。一見すると自然が豊かなようにみえるが、ウラでは大規模な自然破壊がどんどん続いている。そこにはシステムがあり、対抗システムをつくりあげることが必要だと思う。」

     「私も現地を初めて見た。かわいいムササビを見ることもできた。貴重な動植物の宝庫がどんどん破壊されているが、それは天にツバする行為であり、人間のおごりだと思う。」

     「4年ぶりに現地をみた。工事がかなり進んでいるのをみて驚いた。ニホンカモシカの子どもにも会ったが、ダムができるとそういう無数の生き物は死んでしまう。千葉県では、八ッ場ダムのことを知らない人がかなり多い。できるだけ多くの人に、実態や問題点を知ってもらうようにしたい。」

     「現地を初めて見た。我々高齢者にとっては、自分に残された時間で何ができるのかを考え、行動することが必要だと感じた。そうしないと何のために生きてきたのか、となる。そういうことをつくづくと感じた。」

     「人間が自然を破壊し、モノ言わぬ動植物を殺し続けていることを実際に見て、ガク然とした。ダムの予定地は、貴重な動植物が生息するすばらしい里だ。吾妻渓谷はたいへん立派だった。そんな所を人間が勝手に壊していいのか、と思った。」

     「そこに住み続けたいと思っている人たちの願いを、国は無残に打ち砕いている。住民の無念さを強く感じた。」

     「現地をみて、“ダムのためのダム”の仕事をしているということを強く感じた。仕事をつくるためにムダな公共工事を進めている。」

     「私は千葉県内で外環道(東京外郭環状道路)反対運動にかかわっている。道路もダムと同じ問題をかかえている。不要な道路をつくるために貴重な文化遺産がどんどんつぶされている。事業者は“写真にとっておけばいいではないか”という発想をもっている。政権をいったんチェンジすることが必要だ。」

     「見学会でいろいろな人と交流できてよかった。共同の輪が広がれば、ダム計画をストップさせることも可能だと思う。そして、衰退しつつある地域を再生させ、全国のモデルとなるような地域づくりができれば、と思う。」

     「公共事業にかかわる仕事をしている。そのなかで感じているのは、公共工事には土木屋とか政治家の意向が強く働くということだ。また、一度決まった工事はなかなか止まらない。そういうことについて、いつもくやしい思いをしている。八ッ場ダムの予定地では、地域の共同体がバラバラにされてしまっている。千葉の東京湾岸が埋め立てられていったときと同じだ。」

     「たいへんなムダ遣いがおこなわれているということを、自分の目でたしかめることができた。公共事業にかかわっているが、自分たちの仕事も見直していかなければ、と思った。」

     「私も初めて現地をみた。自分の国のなせるワザかと思ったら、心から怒りがこみあげてきた。八ッ場ダムを建設するために、強酸性の湯川の中和に年間12億円も税金が投入されつづけている。そういう理不尽なことに抵抗している人たちがいることを知り、すごく心強く感じた。」

     「“200年に1回の大洪水の被害を防ぐためにダムが必要”という宣伝がされていて、それを多くの国民が信じている。最近、八ッ場ダムに関する勉強会を地域でつづけている。そのなかで、このダムは利水上も治水上も不要ということがわかってきた。ダムを中止し、その事業費を教育費などに回したらどんなにいいかと思う。」

     「税金を湯水のようにつぎ込み、すごいことをやっているな、というのが率直な感想だ。今回もらった資料などをみて、八ッ場ダム問題を勉強したい。」

     「ダムの完成予定が2015年に延びたことで、その利息を考えれば、いよいよ総事業費が1兆円を超えることが確実だ。あまりにも国民の意識と乖離(かいり)している。しかし、国民の多くは、そういう実態を知らない。今回見たことを多くの人に知らせていきたい。」

     「“百聞は一見にしかず”という言葉があるが、まさにそのとおりだった。やがて1兆円を超えるような事業が強引に進められていることを強く感じた。すごいカネをつぎこんで、鉄道・国道の付け替えや小中学校の移転などが進められている。教育や福祉などの問題で千葉県に要請すると、県はきまって“カネがない”と答える。しかし、八ッ場ダムではカネが湯水のようにつぎこまれている。こういうムダな事業をやめさせないと、国民の生活はよくならないと思う。一致できる点で共同の行動が広げたいと思う。」

     「八ッ場ダム計画が発表された1952年は私が生まれた年でもあり、現地をみていろいろ考えさせられた。みなさんといっしょにダムを中止させたいと思った。9月15日のシンポジウム(“ダムに負けない村”─八ッ場から地域の再生を考える)にもぜひ参加したい。」



《Kさんの感想》


国民生活向上に寄与しないダム


 当初、ゲリラ雷雨を心配(ゲリラなんてこんな時に使う言葉じゃないよね)しましたが、私、晴れ男なので(参加者の多くが自分こそと思っていたでしょう)見事に2日間、雨に祟(たた)れることなく、安全にいってきました。

 八ッ場ダム建設予定地は、見事に「開発」と自然が入り乱れておりました。

 ダム建設は、1952年に計画され(なんとボクと同じだけ時間が経過している)、その間地元の方々の人生と自然を破壊尽くしております。

 吾妻川にダムを造るのですが、そこに流れ込むいくつかの川が酸性が強く(PH2〜3)、それを中和するために、「湯川」という川に年間10億円もかけて石灰を注入し、その石灰を吾妻川に流入しないように品木(しなき)ダムをつくり、2億円かけて石灰ヘドロ(堆積物)を浚渫(しゅんせつ)しているそうです。そうしないと、ダムのコンクリートが崩壊する危険があるそうです。

 ようするに、八ッ場ダムを造るためにだけ、“死無奇(しなき)ダム”(死んで何も無い奇怪なダム)をつくり、年間12億円も使っているです。信じられますか?

 現地はというと、すでにいたるところに開発の爪あとがあります。そうして、その不気味な全容をさらそうとしています。

 しかし、工事はここでも自然の反対にあっています。現地の土地は粘土層と土が入り乱れている断層が多く、工事している端から崩落が発生しているのです。

 現地の川と山は、ダムそのものを拒否しているといってよいでしょう。

 50年にわたる開発計画は、現地の人々の人生設計を大きく狂わせています。

 そもそも、公共事業は当該地域に住む人々の生活の向上に寄与するのがあたりまえで、 一応そうしたことがあるから、一定の受忍義務を求めているのでしょう(ボクはそれでも不当と思うけど)。

 八ッ場ダム事業は、もうすでに50年以上という時間を経過しています。それだけでも、「生活の向上に寄与」することになっていないといえると思います。













ダム湖にかかる湖面2号橋の橋脚。1本6億円とのこと。





あちこちで、森林を伐採したり沢を埋めたりして、関連工事が進められている





工事現場で説明を受ける参加者





鉄道(JR吾妻線)付け替えの鉄橋工事





「三ッ堂」 はかつて、約70体の石仏や五輪塔が並んでいた(2002年5月撮影)





高台のほうに移された「三ッ堂」の石仏群。等間隔で並べられ、しかも「岩」はコンクリートで造られている。参加者から思わず、「東京ディズニーランドと同じだ」という声があがった。参加者の一人、東京都葛飾区の住職さんは、すさまじい自然破壊や罰当たり行為を嘆いておられた。





強酸性の湯川を中和するため、「石灰ミルク」(石灰乳液)が四六時中投入されている。その費用は年間10億円。





「石灰ミルク」投入箇所のすぐ下流。川の水は真っ白に濁っている。






中和で生じた大量の中和生成物を沈殿させるためにつくられた品木(しなき)ダム。ダムの湖水は、緑白色の不気味な色をしている。
沈殿物は毎年2億円をかけて浚渫し、周辺山林の処分場に埋め立てているが、そこでも環境破壊が危惧されている。






品木ダムの説明看板






中和のしくみを説明した看板






中和しても酸性は強い。品木ダムはコンクリートの一部が剥がれつつある






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