野生獣の実情と諸問題を考える

〜講演会「千葉の哺乳類」〜




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 「千葉の哺乳類」と題した講演会が(2008年)1月26日、習志野市の谷津コミュニティセンターで開かれました。主催は千葉県野鳥の会と千葉県自然保護連合です。千葉の野生獣類(哺乳類)について実情を知ろうということで開かれました。


■千葉に生息している哺乳類は33種

 講師は県立中央博物館上席研究員の落合啓二氏です。落合氏は、千葉県の山野にどんな哺乳類がどの程度生息し、どのような問題が起きているかなどについてかなりくわしく話をしてくれました。

 講演の項目は次の3点です。
  • 希少種(モモジロコウモリやキツネなど)の保護問題
  • ニホンザル、ニホンジカなどの普通種による被害問題
  • アカゲザル、アライグマ、キョン、イノシシ、ハクビシンなどの外来種の問題
 千葉県には現在、21種類の在来種(古来より房総に暮らす種)と12種類の外来種(人為的に放されたものが繁殖して定着したもの)の計33種が生息しているそうです。(もうすぐ34種になるとのこと)

 これは、東京都の51種や埼玉県の54種にくらべると少なめです。その一つの理由は、房総丘陵は標高が低く、モモンガ、ヤマネなど比較的標高の高い地域に生息する種がいないためだそうです。


■イノシシやシカによる被害が深刻に

 かつて生息していて、近世以降に絶滅した種は、ヤマコウモリ、カワウソ、アシカ、ニホンオオカミの4種です。

 普通種による被害では、イノシシが急増し、タケノコ、イネ、畑作物に対する食害が大きな問題になっています。最近の被害金額は年間1億円を超えています。2006年度は1億6千万円と報告されているそうです。

 ニホンジカも大食漢です。イネや畑作物のほか、山の植物をどんどん食べます。人間だけでなく、植物をすみかや食物としている昆虫やクモなどにとっても大問題となっているそうです。また、シカに寄生するヤマビルやマダニが増えるため、地元ではかなり嫌われているとのことです。



■絶滅リスクの防止と、人間や自然への被害・影響を
  少なくすることの折り合いが課題

 講演のあと、質疑討論が活発に交わされました。講演や質疑討論で印象深かったのはこんな話です。
     「ウワサによると、イノシシが増えたのは、ハンター(狩猟家)が猟をやりたいために他県からもってきて房総丘陵に放したことによる、それも一人や二人ではないと言われている」
     「地元では、“今いるのはイノシシではなく、イノブタ(イノシシとブタの雑種)ばっかりだ”と言われている。しかし、別々の場所で捕獲したイノシシ34頭をDNA調査した結果、すべてイノシシだった」
     「シカの被害に悩んでいる地元では、こんな話もでている。シカは、動物園では柵の中に入れられているが、オレらのところでは人間が柵の中で生活を強いられている──と」
     「千葉県では毎年、1000頭を超えるシカを捕獲しているが、それでも減らない」
     「捕獲については、絶滅のリスクを高めないことと、人間や自然への被害・影響を少なくすることの折り合いをさぐることが課題となっている」
     「シカは毎年ツノがはえかわる。その理由を聞かれることも多い。しかし、理由はまだわかっていない。自然は分からないことが多い」


■イノシシなどが増えやすい環境を
  人間自身がつくっている

     「外来種が大きな問題になっている。しかし、外来種は人間が別の場所から持ち込んだものだ」
     「外来種の排除が叫ばれている。しかし、哺乳類以外をみると、たとえばアメリカザリガニやオカダンゴムシも外来種だ。また、植物では、セイタカアワダチソウやヒガンバナも同様だ。こんなものも全部排除しなければならないのか、となる」
     「ハンター自体が“絶滅危惧種”になりつつある。高齢化と減少が急激に進んでいるからだ。そのため、今後、外来種の個体数抑制が困難になるのではないか」
     「シカやイノシシなどが増えやすい環境を人間自身がつくっている。森林の伐採が進むとこれらの野生獣が増えやすい。また、人間がエサ場を与えている。さらに休耕田が増えているが、ここはイノシシの楽園になっている」


■人間がおよぼす被害も大きい

 参加者からはこんな意見や感想がだされました。
     「外来種による被害がよく問題にされている。しかし、人間がおよぼす被害も大きいと思う」
     「野生生物からみれば、いちばん増えすぎて困っているのは人間だろう」
 以上です。希少種保護や食物被害の問題、外来種対策など、いろいろ考えさせられる講演会でした。

(文責・中山敏則)











「千葉の哺乳類」と題した講演会




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