山砂採取によるすさまじい環境破壊

〜『ああダンプ街道』の佐久間充さんが報告〜




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 8月9日の夜、千葉県庁1階他目的ホールで「生物多様性県民会議 戦略グループ会議」が開かれました。この日のテーマは「山砂採取と生物多様性」。プログラムは次のとおりです。
 ・基調報告「千葉県の山砂採取と自然環境への影響」
    …………佐久間充氏(前女子栄養大学教授、元東京大学助手)
 ・報告「市原市栢橋地区の大規模残土処分場・山砂採取」
    …………山本友子氏(前県議、市民ネット)
 ・質疑・討論

 佐久間さんは、『ああダンプ街道』(岩波新書)と『山が消えた〜残土・産廃戦争』(同)の著者です。
 『ああダンプ街道』は、土砂採取で千葉県君津市の丘陵が次々と削られ、1日4000台も通るダンプカーが沿道住民に騒音、振動、交通災害、粉じんによる健康破壊をひき起こしている実態を、精力的な調査によって初めて明らかにした本です。全国的に大きな反響を巻き起こし、文部省の高等学校作文コンクールの課題図書にも選ばれました。この本は10万部売れたそうです。
 佐久間さんは、そうしたすさまじい実態を映像でわかりやすく話してくれました。羽田空港の第3次拡張工事で再び君津地域の山が削られることになり、その影響が危惧されることも、です。
 以下は、佐久間さんの報告要旨です。


■山砂採取で山が消え、その埋め合わせにゴミの山々が出現

     「千葉県中西部は、わが国の経済発展の基幹資材である山砂を、この40年間に14億トンも首都圏に供給した。その結果、約2000ヘクタールの採取跡地が出現した。その跡地へ、山砂を搬出したのと逆の方向で、残土や産廃が運び込まれている。つまり、山砂採取で数々の“山が消えた”埋め合わせに、“平成新山”というゴミの山々が出現しているということだ。渓谷や谷津田も絶好の捨て場となり、そこからは各種の有害物質が検出されつつある」


■ダンプ公害研究をやればやるほど出世コースから外れた

     「かつて、私の出身地である君津の方からダンプ公害の調査をやって欲しいという注文が繰り返しあった。市会議員をしている友人からは、《お前の田舎はとんでもないことになっている。こんなに困っているのだから学問になるはずだ》といわれた。兄貴からは、《東京大学はほんとうにダメだ、税金の無駄使いしている》と批判された」

     「そこで現場を見に行った。山が削られてひどいものだった。これはすごい現象だ。東京のビルのために、交通事故で人が死んでいる。山を削る作業ではブルドーザーごと採掘現場から落ちて毎年死者がでていた。そうした実態を次々と論文で発表した。私が調査を始めてからは、事故死がゼロになった。交通事故も減った。粉塵予防の散水車も走らせるようになった。公害対策委員になったが、新しい山砂採取計画が私のいないところで決められたので、辞めた。委員会は業者の味方になっていた」

     「宇井純は私の実家(君津市内)にも来て、あちこち歩いてくれた。関西の公衆衛生の学者はみんな来てくれたのに、東京大学から来たのは宇井純1人だった。ダンプ公害研究をやればやるほど出世コースから外れた。私は、東京大学ではとうとう教授にさせてもらえず、助手のまま据え置かれた」


■傍観者がいる限り被害者は救われない

     「研究者は客観的データを出すことが任務だ。騒音測定、粉塵測定をつづけたら、最初はアカといわれた。粉塵調査を24時間やった。粉塵の成分分析で珪酸(けいさん)分が多いことが分かった。人体への影響が多い物質で、健康診断をやったほうがよいと言われた。胸部レントゲン調査をやったら塵肺がでた。その結果を記者会見で発表したら、えらい騒ぎになった」

     「ダンプ運転手の飯場に泊まったり、ダンプに同乗したりもした。つきあってみると、ダンプの運転手たちはとてもいい人たちだった。しかし、その労働実態は悲惨だった。経営もたいへんだ。ダンプ運転手を60人ぐらい調査したが、あとでそのうち3人が自殺した。すごいものだ。やっぱり学者は行動しなければダメだと感じた」

     「何ごとも自分で見なくてはいけない。自分で見てどっちにも付かずにデータを出す。東京のコンクリート文明を作る材料(山砂)を出すのに、地方の住民がこんなに苦しむ必要はない。なかなか通じなかったが本をだすことで通じた。人間は他人の不幸は耐えられる。困るという人の方が悪者に見られる。これはおかしい。大多数の受益者はそれを理解しようとしなければいけない。傍観者がいる限り被害者は救われない」

     「『ああダンプ街道』(岩波新書)の影響力はすごかった。朝日新聞などが年間のベスト3冊に選んだ。宇沢弘文は世界の20冊の中に入れてくれた。」


■なぜ千葉県だけが採取されるのか
  〜神奈川県は20年以上前から不許可〜

     「100万年前、関東の奥地の山から流れた土砂が堆積し、それが隆起したのが千葉の山砂である。一辺100メートルの立方体で100万立方メートル。これがこれまでに800個分持ち出されている。昭和59年頃は600個くらいだった。今は800個、羽田空港の第3期拡張でさらに30個くらい持ち出すといわれる」

     「それだけ持ち出すと、房総半島は持ち上がる(隆起する)のではないか。鹿野山の測候所が約10センチ持ち上がっているということを、当時の国土地理院地殻調査部長(地震予報官)が論文に書いた。山を大量に削ったことによって地殻が隆起したというものだった。私は『ああダンプ街道』で、山砂採取で土地が隆起するということを冗談っぽく書いたが、それがすでに論文で発表されていた。そのときは10センチ隆起だったが、今では20センチくらいになっているかもしれない、とその人は言っていた。山を削ると地殻が隆起する。神戸地震は六甲山を削ったことが原因という説もある」

     「自然環境の保全と羽田空港第3次拡張をはかりにかけるという気配すら感じられない。東京湾は限界に達している、と漁業者が言っている」

     「山砂採取の収入は大変なものだ。しかし地元への還元は少ない」

     「なぜ千葉県だけが土砂を採取されるのか。それは千葉県がなめられているからだ。対岸の神奈川県は20年以上前から採取を認めていない。それは、民度の違いでもある。堂本知事は完全に負けている。山砂採取は厳しく規制すべきだ」


■もうこれ以上掘って欲しくない

     「千葉県の君津地域は、すでに山がいくつも消えてしまった。前述のように地殻も上がった。このように土砂採取の影響ははかりしれない。地域の自然の荒廃は子どもの心の荒廃にもなる。過去の採取では、土砂運搬などで子供や大人が何人も死んでいる。千葉だからいくらでも掘ってよいというのはやめてもらいたい。もうこれ以上は掘って欲しくない」

     「堂本さんが知事になったから大丈夫だと思ったら、そうでもない。言いにくいとか、いろいろあるのだろう」

     「結局は、住民運動でブレーキをかけるしかない」

     「かけがえのない自然がどんどんなくなっていく。それは市民意識が低いからでもある。山砂採取業者が県議会議長になったりするように、政治構造の問題でもある。しかし、この頃は新住民が多くなり、そういう政治構造も変わりつつある」

◇           ◇

 以上です。
 質疑討論では、山砂採取や残土埋め立てによる環境破壊の実態や対策などについていろいろな意見がだされました。

(文責・『自然通信ちば』編集部) 








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