典型的な自然破壊はじまる

〜 土気東区画整理事業 〜


プロジェクトとけ 川本 幸立

 

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 沼田眞・日本自然保護協会長が「典型的な自然破壊」と評し、計画変更の検討を求めていた千葉市土気東地区の区画整理事業の工事がはじまりました。事業の概要は、事業費が約285億円、住宅戸数3620戸、総人口1万500人、事業期間は1997〜2005年、地権者は約370人、そして事務局業務委託は東急不動産です。
 この事業によって、約85ヘクタールの事業区域の86%の地形が改変され、開発前に全体の約41%を占めていた森林植生のうち、事業後も残る部分はその10分の1という大規模な自然改変がおこなわれることになります。



●水源地、分水界の開発

 土気という地名は、一説では、かつてトキが多かったことに由来すると言われ、トキが太平洋岸域で最後まで生息していたのがこの付近といいます。
 今回開発される地域は、村田川と鹿島川の源流最奥部にあたり、「印旛沼をへて千葉市民に飲料水をもたらす水源林として守られてきた極めて重要な場所」(沼田氏)であるのみならず、房総半島の北総と南総の中間、また東京湾側と太平洋側との分水嶺をなすところです。この分水界での開発について、ある研究者は、最新の研究にもとづいて、千葉、市原、佐倉、大網白里など周辺の広い範囲の水環境、生態系に悪影響をおよぼすと指摘しています。
 この地域が「千葉県全体の自然保護の要の地」として、また、千葉市内で「保全の緊急度(=「重要度」×「緊急度」)が最も高い場所」(中村俊彦・千葉県立中央博物館生態学研究科長)とされる所以(ゆえん)です。






●自らの環境理念すらソデにした行政

 千葉市は、1994年に制定した環境基本条例で、「生態系の確保、多様な自然環境の保全」(9条)、自然環境に支障をおよぼすおそれのある行為に対する「規制の措置」(11条)などを明記し、この条例にもとづいて定められた環境基本計画の中で、「雨水の浸透・地下水の涵養能力を90年レベルに維持することを定量目標とする」こと、および、土気地域の属する緑区の環境配慮指針として「台地上に分布して地区全体の4割を占める森林や谷津田を保全し、宅地等の造成にあたっては原地形の維持に配慮する」としています。
 今回の開発にあたり、市の都市計画審議会、環境アセス審査会、市長意見書、事業認可の各段階で、これら環境理念にもとづく審議・審査が各界より出された意見、要望、提言にもとづいて厳密に行われておれば、計画どおり認められることはなかったでしょう。
 私たち市民は、アセス準備書縦覧期間もとっくに終わった97年5月に、マスコミの報道ではじめてこの事業を知りました。以来、各段階での意見書の提出、アセス欠陥内容の指摘、行政の姿勢を問う幾多の要望書の提出、開発と自然保護を考えるシンポジウムの開催、行政との公開質疑会などをおこなってきました。県弁護士会も現地調査を行い、「再度の環境調査及び環境影響評価を実施すること」などを求める意見書を98年2月に市長あてに提出しています。
 このように、自らの環境理念や、自然環境の専門家の提言、県弁護士会の意見書、市民からの要望があるにもかかわらず、どうして行政は遮二無二開発を推進するのでしょうか。



●根底にある時代錯誤の開発優先計画
   =千葉新産業三角構想

 まず、行政トップの松井市長や、事業組合設立準備段階の会長の花沢三郎県議、デベロッパーの東急不動産の三者の密接な「パートナーシップ」があることは容易に想像できます。
 そしてもう一つ、この土気東の区画整理事業が、千葉・市原丘陵の約1万ヘクタールを対象とする千葉・市原丘陵新都市構想の事業化の1つと位置づけられていることです。この構想の基本は、1983年に策定された「千葉新産業三角構想」と、首都圏中央連絡自動車道、千葉環状道路などの「大規模道路構想」です。  「千葉新産業三角構想」は、右肩上がりの経済発展を前提とした全国総合開発計画に連動したもので、すでに土気の工業団地、かずさアカデミアパーク、東京湾横断道路、幕張新都心、各地の区画整理事業の現況をみても、破綻は明日です。このままでは、開発業者や土建業者などのオイシイ生活は保証されても、地方財政や自然環境は壊滅的な打撃を受けるでしょう。土気の開発の根底には、時代錯誤の国策ともいうべき開発優先計画=「持続不可能なまちづくり」があります。



●市民主体で「持続可能なまちづくり構想」を

 私たちは現在、アセスに記載のある保全対策や周辺への影響などについて情報提供と意見交換を行うため、市、事業者、県自然観察指導員協議会(県指協)とともに、4者で構成する「環境連絡協議会」(市民と県指協の要望で設置された)に参加する一方、実効ある環境アセス制度をめざす「市民の会」を結成し、制度策定への市民参画と「アワセメント制度」の解消に向けてとりくんでいます。
 一方、環境問題の多くに共通することですが、「個別対処、出口規制」では限界があります。開発の大本(おおもと)である千葉新産業三角構想を根本から見直し、「持続可能なまちづくり」を見すえた施策を立てる必要があります。
 政財官行のトップ(ごく一部の例外を別にして)は、市民感覚では想像できないほど、責任感と自律性が欠如しています。それゆえ、明確なビジョンも持ち合わせてはいません。
 今や自律性が期待できるのは、「地方自治の主権者」「地域の専門家」を自覚した市民と、それに連帯する各分野の専門家です。この「自覚した市民の自律」に依拠するシステムに行政機構を組み替える必要があります。そのためには、こうした市民の側の力を結集して、それぞれの地域の歴史、文化等の調査、研究をふまえた「市民が安心して住み続けられるまちづくり構想」をつくりあげ、行政側の開発構想に対置することが不可欠ではないでしょうか。土気においても、住民主体のまちづくりの輪を広く深く広げることができれば、と考えています。

(1998年10月)





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