房総の自然

 
千葉県の植生

〜房総の自然をこれ以上破壊させてはならない〜

岩田好宏

 

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 千葉県の自然環境はたいへんな勢いで破壊されている。
 環境庁自然保護局が1994年3月に発表した第4回自然環境保全基礎調査として行った「植生調査」によれば、自然植生(自然度10の自然草原と自然度9の自然林)は、1992年段階で千葉県全体の面積の1.8%(全国は19.1%)で、全国38位になっている。比率がもっとも高いのは北海道で49.3%、つづいて沖縄の48.0%で際立って高いが、東京都でさえも8.7%で第19位、埼玉県が4.8%で24位となっている。千葉県よりも比率が低いのは、兵庫、茨城、福岡、島根、大阪、佐賀、愛知、広島、岡山だった。
 自然度とは、「人間による陸域の物理的破壊状況を把握するため、植物群落の種組成により判断して、その程度を区分したもの」である。


 自然度10 … 高山ハイデ、風衝草原、自然草原
 自然度9 … 自然林
 自然度8 … 二次林(とくに自然植生に近いもの)
 自然度7 … 二次林(一般的に二次林と呼ばれている代償植生)
 自然度6 … 植林地
 自然度5 … 二次草原(ササ草原、ススキ群落等の背丈の高い草原)
 自然度4 … 二次草原(シバ草原など背丈の低い草原)
 自然度3 … 農耕地(樹園地)
 自然度2 … 農耕地(水田・畑、緑の多い住宅地)
 自然度1 … 市街地・造成地等

その中の自然度10とは、高山ハイデ、風衝草原、自然草原などの植生をいう。千葉県では、人為による破壊がなくてもこうした植生は極めて少ないと思われるから、自然度10については面積の広い狭いだけでは自然の破壊が大きいのかどうか判断は難しい。しかし、自然度9は、自然植生のうち自然草原とはちがう多層の植物社会を形成している自然林のことで、千葉県の場合1.8%の自然植生の大半はこれとみることができる。これまで「自然に恵まれた千葉県」と言われていた割りには、ずいぶん低い率であることに愕然とした。


 つぎに森林の占める比率についての調査結果をみた。自然林のほかスギ・ヒノキなどの植林地と、人間の管理の手が加わらず放置されたあとの二次林をあわせたものを森林植生としてみると、千葉県全面積の34.5%が森林に被われていることになるが、それは全国平均(67.1%)の約半分の比率で、全国で45位の比率となっている。千葉県より低い比率は、埼玉県の34.0%、大阪府の32.8%の2府県だけであった。これも驚くべきことである。
 しかし、千葉県は地形的に平坦であり、農耕地として利用できる面積が広いし、農業県であるから(自然度2の水田・畑の占める面積比は、46.2%で、茨城県の48.2%についで第2位であった)、利用可能な地域はすべて耕地にかえられて、そのために森林植生は狭いのだろうとも考え、これをもってただちに自然の少ない県であると即断できないと思った。そこで自然度1の市街地・造成地など、植生がほとんど残存してない地区の比率をみた。いわゆる人工化によって自然が完全に破壊しつくされた地区の比率ということになる。その比率は全体の11.3%を占め、全国平均が4.2%で、全国7位の比率になっていた。千葉県より自然度1の地区の率の高い都府県をあげると、大阪がもっとも高く39.8%、つづいて東京の37.8%、3位が神奈川県で36.6%、この3都府県が抜き出ており、続いて愛知の21.1%、埼玉の14.5%、福岡の12.0%で、その次が千葉県であった。


 以上をまとめてみれば、千葉県は、かっては自然ゆたかな県と思われていたが、今では森林が著しく減少し、その中でも自然のままの林がごくわずかで、人工化した地域が高い比率を占めているというようになる。
 環境庁自然保護局の報告書は、千葉県の場合1990年までの5年間の植生の改変の調査結果を報告している。それによれば、千葉県の自然のままのスダジイ・タブノキなどが優占する照葉樹林は、面積にして11.0ヘクタールが消失している。コナラ林が1254.4ヘクタール、シイ・カシの萌芽林が605.6ヘクタール、クロマツ林が4.0ヘクタール消失していた。自然林の消失面積は少なく、全国で22位となっていたが(最大は鹿児島の2121.5ヘクタール)、これは、1980年代以前に残存していた自然林がもともと少なかったためで、もはや消失しようにもすでにないということが理由である。これに対して、コナラ林は14位、シイ・カシ萌芽林は10位であった。いずれも二次林と呼ばれるもので、かって薪炭林として成立していたものが、管理の手が行き届かなくなり放置され、ついには経済的価値が下落して、売却されたり貸与され、開発や砂利取りによって破壊されたというのが原因として考えることができる。
 県内を主として社会的要因から都市計画区域、市街化区域、市街化調整区域、農業地域、森林地域の5つに区分してみると、都市に住む人たちにとって関心の高い都市計画区域の緑被率は、草原、森林、農耕地などを全部ふくめて75%をこえているが、それは、全国全体からみて41位であり、全国平均の80%強を大きく下回り、樹園・水田・畑を除くと30%強まで下がる。それは、埼玉、茨城、愛知についでの低率で、都市域の自然環境が1段ときびしいということになる。逆に自然環境が多く残っていると予想される森林地域の自然環境の保全状況をみるために、森林地域の自然度別の比率をみると、森林地域内の自然度2の住宅地と自然度1の市街地を合わせたものが10%強、樹園地と水田・畑を合わせたものが40%強となり、森林地域といえども森林の占める面積は半分以下を割り込み、圧倒的に多いわけではない。これは茨城県についで全国で2番目に比が小さい。
 千葉県の自然環境の実態を直視しよう。もうこれ以上破壊させてはならない。
 

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