★房総の自然


 
曽根新田とセイタカシギ

〜残してもらいたい貴重な生息地〜

千葉県野鳥の会  内藤建身   


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●はじめに

 富津市の臨海部の埋立て工事は、1978年4月(昭和53年)に始まり、1990年頃には、今見ることのできる状態に一応工事は完了している。ただし、富津市役所の説明では、今も廃棄物終末処理場では埋め立ては続けられていて、正確には工事完了した事になってないと聞かされた。
 かつての曽根新田は、海岸に隣接していた。そのため、高潮などの塩害に脅かされて収穫の少ない、ヨシの繁る下等な水田であった。しかし、シギ、チドリ、カモ、バン等の水鳥が良く観察される自然豊かな水田であったと聞かされている。
 臨海部の埋め立てにともない曽根新田も埋め立てられた。そして今は、スーパージャスコ、マンション、住宅が建てられた。しかし、なぜか不思議なことに、5ヘクタールだけは昔のまま湿地として残された。今は、セイタカシギの繁殖するコロニーとなって、聖地になっている。そこが、今の曽根新田である。


●曽根新田

 1996年春、大型店舗のスーパージャスコが開店、開発ラッシュとなり、商店、マンション、住宅が建ち始める。もはや、環境も大きく変わり、市街地に変貌した。ヒバリのさえずりも、以前と比べずっと少なくなった。
 今の曽根新田はおよそ5ヘクタールである。新富水路を経由した海水が、干潮と満潮による干満によって、この湿地の南側より出入りを繰り返している。夏はボラの稚魚のイナが群れて、コサギが銀鱗を狙う光景が見られる。立派なものでなく、どちらかといえばみすぼらしい湿地ではあるが、カモ、シギ、チドリ、サギ、バン等の水鳥が底性動物のカニ、ゴカイなどをついばみ、湿地として今も機能していることが分かる。
 小さいながら立派な水鳥の生息地となっている。過去4年間に観察された鳥類リストは24科55種である。植物では湿性植物のヨシが全面に群落を作り、ところどころでエゾウキヤガラが、小さな群落をつくっている。湿地ではフトイ、トウオオバコ、ヒメガマ、アゼカヤツリ、アオカヤツリ、コゴメカヤツリなどのカヤツリグサがみられる。乾いたところでは、テリハノイバラ、ヤマアワ、ウシノシッペイ、チガヤ、ススキ、オギ、シロバナタデ、ハマダイコンが、帰化植物ではメマツヨイグサ、コマツヨイグサ、シマスズメノヒエ、オオアレチノギク、コセシダグサ、イガオナミなどが見られる。今や貴重な植生を有している湿地といえる。


●セイタカシギ

 1960年頃までは、極めてまれな鳥であった。千葉県では1978年6月、京葉幕張埋立てで、営巣が発見された。それ以後は、毎年少数繁殖が報告されるようになった。環境庁のレッドデータブックでは、希少種に指定されている。
 曽根新田では、1992年1月4日8羽のセイタカシギが観察された。これが私の持っている最初の記録である。この時よりよく観察されるようになった。
 春は3月中旬に飛来し、まもなく繁殖期となり、7月上旬には繁殖活動が終了し、10月中旬には他の生息地へと移動し、冬は、ここでは見られなくなる。
 1996年には多数飛来し、順調な繁殖活動で、雛の成育が良かったと思われる年であった。  昨年の1998年冬は、初めて少数が越冬し残留した。少ないデータではあるが、過去8か年の最大カウント数を、春秋に、配列比較すると増殖していることが分かる。




セイタカシギ最大カウント数




 セイタカシギの繁殖を妨げるものとして、

 〇トビ、ウミネコ、カラス
 〇イヌ、ネコ
 〇人、撮影などによる妨害
 〇病気
 〇台風などによる増水、水位の上昇

 などがあげられる。
 この曽根新田で、わりと繁殖に成功している主な天敵は、トビ、ウミネコ、カラス、そしてネコである。ネコはこの湿田ではほとんど見かけない。トビ、カラスに対しては、最大25羽くらいの集団でスクランブルをかけて、かなり強烈に、ここでは追い出しに成功している。
 ウミネコには、同じ水鳥という意識か追い出しはやらない。が、雛のときの最大の天敵はやはりウミネコのようだ。
 また、採餌地として餌は十分で、他に出かけなくとも足りている。
 ヨシが適当に繁茂していて身を隠せる。
 などが理由としてあげられる。


●おわりに

 普通に見たら、ほっとかされた、ゴミが捨てられている汚い湿地、それが曽根新田であるが、よくみると、シギ、チドリ、カモ、サギなどの鳥類やキリギリス、ギンヤンマなどの昆虫も見られる。今では貴重になったフトイ、エゾウキヤガラなどの湿性植物が繁茂し、希少種のセイタカシギが多数繁殖、生息し、東京湾岸で最大のコロニーとなっている。この曽根新田の自然が立派に活動し、生きている証拠である。
 単なる荒地だから、役に立たない土地だからといって埋め立ててほしくない。十分に保全に足る湿地である。身近な湿地が、気が付いたらどこにもないという現状であり、今あるこの貴重な曽根新田は次の世代に残してほしいと願う。
 皆様、応援して下さるようお願いします。もし曽根新田を訪れるのでしたら、セイタカシギは神経質な鳥です。マナーを守って、繁殖の邪魔をしないで下さい。自然に敬虔でありたい。

(1999年10月)





曽根新田のセイタカシギ




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