★房総の自然



房総のニホンザルの現状

〜野生のサルが生きられる豊かな自然を守ろう〜


加藤俊也







●ニホンザルは自然の豊かさのシンボル

 千葉県の房総丘陵には野生のニホンザルが生息している。ニホンザルは、広葉樹の自然林を生息地としていることから、自然の豊かさのシンボルということができる。「野生のサルが生きられる豊かな自然を守ろう」という言葉が、房総の山を守るスローガンともなってきた。


●サルが農作物を荒らす猿害の発生地域が広がる

 しかし、房総丘陵は標高も低く、人家、田畑が入り組んだ里山の部分が多く、サルと人間の接触も多い。この点から、サルが農作物を荒らす猿害も従来から発生してきており、その対策として有害鳥獣駆除としてサルを射殺する事態が生じ、これに対する批判もなされてきた。
 このような、猿害の発生と有害鳥獣駆除の繰り返しが続く中、猿害発生地域は広がってゆき、千葉県は1992年に野生猿管理対策協議会を設置し、猿害対策とサルの保護の問題を検討することになった。この野生猿管理対策協議会には、自然保護団体からの委員として、千葉県自然保護連合の石川敏雄前代表も参加され、引き続き現在も自然保護連合が推薦した委員1名が参加している。


●猿害対策が大きな課題に

 野生猿管理対策協議会は、1994年3月に協議結果をまとめた。その内容は、「猿害が発生しないことと、サルが将来にわたって自然状態で生息することができることの両立」をめざしている。
 そのためには、自然状態で生息することができる地域の維持・整備と、電気柵などによる被害防止事業の実施、さらに、必要な駆除の実施を行う必要がある。具体的には、ニホンザルの群れの数や、総頭数、生態等の調査を行い、対策立案の基礎資料を収集するとともに、補助金による電気柵の普及と猿害対策指導員の設置などによる被害防止を進めることになった。



●駆除と保護のための計画と方針を設定

 こうした事業の委託を受け、中心となったは、房総のサル管理調査会であり、そのメンバーは従来からニホンザルの保護事業を実施してきた高宕山のサル調査団であった。1997年3月に、房総のサル管理調査会は、「房総に生息するニホンザルは、65群で総頭数は5700頭と推定し、この頭数は増加傾向にある」とする報告をまとめた。
 群れは、「人間の姿を見ると、すぐに姿を消すまったくの野生の群れ」と、「田畑の農作物や、八百屋の店先の野菜などに手を出す人馴れした群れ」の2つに分けられ、調査用のテレメーター(小型電波発信機)を取り付けるために、小型捕獲檻に、サツマイモ、ミカンなどの餌を仕掛けておいても、清澄山などの山中に設置した場合は、ほとんど捕獲できないのに対して、後者の「人馴れした群れ」が出没する人家や農耕地周辺に設置すると、多くのサルが捕獲されるなどの実態が明らかにされた。
 これを受けて、野生猿管理対策協議会は、前述の「野生の群れ」が主に生息し、自然環境を維持・整備し、サルを保護する地域としてのコアエリアを設定し、これ以外の地域では猿害を起こす「人馴れした群れ」は駆除するという方針を決定した。これは、これまで続けられてきた場当たり的な有害鳥獣駆除から、駆除と保護のための計画と方針を設定したことになる。
 1997年度は、天津小湊町などで檻(おり)を使った駆除が実施され、93頭が処分された。 房総のサル管理調査会は、このサルの駆除による猿害の増減についても調査しているが、山の実りの増減などの要素から、一概に結論することができないとしている。



●サルが生息する自然環境全体の保全が必要

 以上のように、猿害を防止するために「人馴れした群れ」の駆除が始まったが、一方で、本来の野生の群れの保護もなされなければならない。この保護とは、単にサルの捕獲や駆除の禁止だけではなく、サルが生息する自然環境全体を保全することが必要である。
 とかく、開発への圧力の強い千葉県において、コアエリアとされた地域の自然環境の保護のためには、自然と、その中で生きるニホンザルの保護を求める県内の世論が必要である。そのためには、多くの人々が自然の中でサルに出会って楽しめるチャンスを用意しなければならない。
 私たちは、天然記念物「高宕山のサル」生息地におけるサルの保護管理事業の中心になっている富津市宇藤原の峰上ステーションに隣接して、ログハウスを建設し、簡易水洗トイレとシャワー付き浴室を備えた宿泊施設を作り、高宕山エコ・ミュージアムと名づけた。ここを拠点に、千葉県自然保護連合のメンバーも参加した1998年3月の観察会に引き続き、サルとのふれあいを中心とした催しを継続していきたい。

(1998年10月)   





高宕山エコ・ミュージアム(ログハウス)




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