■書籍・書評


 天木直人著

 『さらば外務省!』


石井伸二





・著 者:天木直人
・書 名:さらば外務省!
     〜私は小泉首相と売国官僚を許さない〜
・発行所:講談社
・価 格:1500円



 同書はかなりの評判で、ベストセラーになっています。
 著者の天木氏は、元外務省官僚で、レバノン特命全権大使でした。イラク戦争に反対する意見具申を2通も川口順子外相に送ったため、事実上「解雇」されました。同書は、副題に示されるように、怒りの激白集ともなっています。
 私にとっては、すごく衝撃的で、胸がすく本です。共鳴するところも多く、一気に読み終えました。


●外務省や小泉政権などを糾弾

 著者は、「私は決心した。今までは黙っていたが、政治家や外務官僚たちの許すべからざる行状、省内で犯された悪事の数々を世に向かって明らかにし、外務省を糾弾していこうと。」と書き、事実や実名をあげて、外務省や小泉政権、政治家のデタラメぶりや売国行為などをつぎつぎと暴いています。
 たとえば、昨年9月の小泉首相の北朝鮮訪問についてはこう書いています。
「拉致家族の悲痛な叫びを踏みにじった鉄面皮な小泉首相と外務官僚による、外交のもてあそびだったのである。その証拠に小泉首相は帰国後、交渉の経緯を家族に対して自ら真っ先に報告すべきであったにもかかわらず、家族に合わす顔がなく逃げまわっていたではないか」

 レバノンでも、4人の女性が拉致されて北朝鮮に連れていかれるという事件が起きましたが、レバノン政府はすぐさま腰をあげ、「外交断絶も辞さず」という強い姿勢で北朝鮮に望み、女性を無事解放させました。このことと対比させ、外務官僚を次のように指弾しています。
「レバノン政府にできたことが、なぜ日本政府にできないのか。(中略)自らの出世や保身のためなら驚くほどの能力を発揮する外務官僚たちも、国民の生命を守るために全精力を注ぎ込もうなどという気はさらさらない。われわれはこのような日本の現状を、もう一度直視すべきである」
 このほか、官邸の機密費がマスコミに対する工作費や懐柔費として使われていたことをあげ、「だからマスコミは政府・外務省を本気で追及できないのだ。これでは国をあげて犯罪を闇に葬っているようなものである」と書いています。
 また、つぎつぎと発覚した外務省の不祥事や不正、そして外交面での醜態などをとりあげ、こう書いています。
「それは出世と保身に汲々(きゅうきゅう)とする本省の幹部たちが、政治家に追従することに忙殺されてしまったからである。若い職員たちはそうした幹部の尻拭いのための雑用に忙殺され、創造的な仕事をする時間や気力を失っていく」
 そして、小泉首相については、次のようにきびしく批判しています。
「この食わせ物首相は、『加藤の乱』のドタバタ劇が産んだ徒花(あだばな)である。転がり込んだ首相の座を、思う存分味わってやれとばかりに、やりたい放題の政治を進めている」
「小泉純一郎という政治家の言動を見ていると、国家、国民のために何かをなそうとする意志も能力も微塵(みじん)も感じられない」


●ベストセラーに

 同書は、インターネット書籍販売の「Amazon」で、売上げランキング1位になっているとのことです。多くの新聞や雑誌も、書評などでとりあげています。
 たとえば、11月2日の『朝日新聞』ではノンフィクション作家の吉田司氏が「ベストセラー快読」で同書をとりあげ、「現在、北朝鮮クライシスを奇貨として『戦争大国』への道を歩み始めたかに見えるこの“ニッポンの危機”の中で、最後まで戦う新たな個性の誕生と期待しよう」などと高く評価しています。

 『週刊現代』(11月15日号)では、大橋巨泉氏が絶賛です。大橋氏は「元大使が首をかけて暴いた小泉政権の売国売民」という見出しをかかげ、「読み出したら止められなかった」「読めば解るが、まさに正論以外の何ものでもない」「イラク問題ばかりではない。北朝鮮問題でも、小泉政権の売国売民のひどい姿勢が暴露されている」「天木氏が『首』とひきかえに書いたこの本は、まさに“その言や善し”である。一人でも多くの日本人に読んでいただきたい」と、手放しで評価しています。

 『週刊金曜日』(10月31日号)も書評で同書をとりあげていて、評者の巌谷鷲郎氏は、「読者はページを追うごとに告げられる『外務省の劣化ぶり』に驚かされっぱなしだ」などと評価しています。

 一方、『週刊新潮』(10月31日号)では、福田和也が「福田和也の闘う時評」でボロクソ評価です。
「面白いことは、面白いのだが、その面白さは、ことごとくご自身の外交官としての資質の欠如を示している」「(レバノンからの2通の意見具申は)国連尊重、世界平和、中東和平交渉の再開という美しいが無内容な言葉ばかりが並んでいて、これが現役大使が、総理、外務大臣にわざわざ送った公電なのかいな、と呆気にとられるような代物」などとクソミソに評じています。
 『週刊新潮』は、周知のようにタカ派週刊誌です。また福田和也氏は、「新進気鋭の保守イデオローグ」(『日本の文化人』噂の真相)とよばれています。そんな週刊誌や評者にとっては、同書はトンデモ本なのでしょう。酷評は当然です。


●共感できない点も

 小泉政権や官僚たちの犯罪ぶりを暴いた本書が、ベストセラーになっているのを素直に喜びたいと思います。
 しかし、同書には納得できない点もあります。ひとつは、ノンキャリアを見下したような姿勢です。著者はこう書いています。
「キャリアの中にできが悪い者が存在することは事実である。しかし、ノンキャリアはそれ以上にできが悪い。(中略)最初からノンキャリアの試験を受けるような奴は、歩留まりを見越した敗北者なのである」
 ここには、著者のエリート意識が見え隠れします。

 もうひとつは、「憲法第9条の拡大解釈は歯止めなく進み、もはや憲法第9条は完全に形骸化してしまった」とし、「平和憲法を守るためにこそ憲法改正が必要だ」と訴えていることです。こうした考え方から、「憲法第9条を擁護し続ける平和主義者たち」をきびしく批判しています。
 しかし、他方では、「日本人ほど従順な国民は世界にいない」とか「怠惰、無気力な有権者」「声を上げることを忘れた国民」などと書き、国民が立ちあがらないことを嘆いているのです。著者が嘆いているように、小泉首相や自民党、官僚などがやりたい放題をつづけているような状況のもとで、憲法改正をもちだしたらどうなるのか。結果はみえているでしょう。“飛んで火に入る夏の虫”になる可能性が大といわざるをえません。この点は浅はかだと思いますが、どうでしょうか。

◇             ◇

 とはいえ、本書は、官僚を辞して高給官僚や小泉政権の腐敗ぶりを暴いたものとして高く評価できます。多くの方にぜひ読んでいただきたいと思います。

(2003年11月)  




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