■書籍・書評


 魚住 昭 著

 『渡邉恒雄 メディアと権力』


中山敏則





・著 者:魚住 昭
・書 名:渡邉恒雄 メディアと権力
・発行所:講談社文庫
・価 格:762円



 この本は1000万部という世界一の発行部数を誇る読売新聞社の中で起きた権力闘争を生々しくえぐっています。ナベツネがマキャベリズム(権謀術策)を駆使して世界一の新聞社の独裁者にのしあがったこと。その発行部数の威力を利用し、ついには日本の政治と世論にたいして巨大な影響力をもつにいたったこと──などです。
 著者の魚住氏は、プロローグでこう書いています。
 「いまやこの国の政治とマスコミは、渡邉の存在を抜きにしては語れない。なぜ一介の新聞人がこれほどの力を握ったのだろうか。彼のどこにその秘密が潜んでいるのだろうか。その答えを探すため、これから時間をさかのぼり、彼が上ってきた『権力の階段』の一つひとつを検証してみようと思う。そうすることで、これまで闇(やみ)に埋もれていたマスコミと政界の癒着の深層もきっと浮かび上がってくるだろうから」
 著者の意図は十分に果たされていると思います。
 インタビューの終わりに、ナベツネはこう言ったそうです。
 「世の中を自分の思う方向に持っていこうと思っても力がなきゃできないんだ。俺には幸か不幸か1000万部ある。1000万部の力で総理を動かせる。小渕総理とは毎週のように電話で話すし、小沢一郎ともやってる。政党勢力だって、自自連立だって思うままだし、所得税や法人税の引き下げだって、読売新聞が1年前に書いた通りになる。こんなうれしいことはないわね」

 佐野眞一氏(ノンフィクション作家)は、本書の解説でこう書いています。
 「読売に入ってからの人を人と思わぬ傲岸(ごうがん)さで蹴落としてきた上昇志向。ここには、信義も慈悲心も人間性もかけらもない。あるのは、焼けつくような権力への熱望だけである」

 「『読売と名がつけば白紙でも売ってみせる』と豪語し『販売の神様』の名をほしいままにして、読売グループを長年にわって支配してきた務台光雄と、読売新聞の事実上の創業者と位置づけられる正力松太郎の女婿の小林與三次の間を巧みに遊泳し、二人の老人を手玉に取るようにして籠絡しながら、出世の階段を着々と登ってゆく件(くだ)りや、大阪読売の良心といわれた黒田(清)軍団をありとあらゆる手口を使って切り崩してゆく件(くだ)りは、渡邉氏のおぞましいほどの権力志向をあぶりだして思わず息をのむ」

 「こういう人物が発行部数1000万部の新聞を牛耳り、日本のプロ野球を壟断(ろうだん)し、果ては憲法改正の世論形成まで画策しているところに、わが国のメディア状況の絶望的な暗さがある」

 このような人物が大きな影響をおよぼしているマスコミの状況は、自然保護の動向にも密接な関係があると思います。多くの人にぜひ読んでほしい1冊です。

(2003年9月)  




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