■書籍・書評


 石渡正佳著

 『産廃コネクション』


戸石四郎





・著 者:石渡正佳
・書 名:産廃コネクション
     〜産廃Gメンが告発! 不法投棄ビジネスの真相〜
・発行所:WAVE出版
・価 格:1600円



 「産廃Gメンが告発!不法投棄ビジネスの真相」とのサブタイトルで、千葉県職員が出版、朝日紙全国版でも紹介された。この本の舞台であり、書かれているように不法投棄全国一の千葉県での、実に74%を占める銚子の住民としては、無関心では居れない本である。

 読後感を一言でいえば、好漢『木を見て森を見ず』というところか。現職の公務員という制約、不法投棄が主題という執筆趣旨からは、いささか厳しい評価かも知れない。しかし随所での「国の産廃行政を批判」(朝日紙紹介)する見解、不法投棄やゴミ行政面で全国最悪の事態を招いてきた県行政当事者の立場などを考えれば、その被害者である地域住民としては辛い点をつけざるを得ない。もちろん現場担当者ならではの、的確な指摘やデータも随所にあって、大いに参考になった。まず、それらプラス評価の面をいくつか挙げてみよう。
 「住民の声が国や地方の施策にきちんと反映されてきたとはいいがたい」「地域の環境を地域が守るのは当然」(以下、「 」は本書引用。括弧内は減点)などという指摘は、住民寄りの姿勢といえよう(廃棄物問題解決への市民運動の役割については触れられていない)。

 国を批判した箇所も多い。本題の不法投棄について「少なすぎる公式統計」とし、40万t/年、10tダンプ換算で1日100台程度なら、違法業者一掃という単純な対策で良いことになる、という。また最終処分量5千万tの公式統計も怪しく、最終処分場はとっくに満杯なはず、半量は不法処理だと推定している(千葉県の統計も不備で、信頼性に欠ける)。
 国や県の公式見解は『不法投棄解決にも、最終処分場設置は不可欠(沼田前知事)』『認可処分場は安全』というものだが、著者はその反証を「産廃銀座のできる第一段階は最終処分場建設」「不法投棄と処分場の通地は同じ」、延命のため産廃の持ち出し、掘り出しなど「不法投棄の拠点となった最終処分場もある」などと具体的に挙げている。安全性については許可済み、また公共の「処分場ですら深刻な環境汚染をもたらす例が後を絶たない」「基準は相対的なもの  完全に安全  というものはありえない」「安定型は合法的な不法投棄  違いは構造面ではなく運用面にすぎない」。安定型での廃棄物から生ずる有害な「浸出水は墨汁のように真っ黒」「管理型が安全というのは神話。その技術的信頼性は行政や業界でしか通用しない」と、それらの問題点を細かく指摘する。これまでの、また現在の住民側主張が行政側から裏づけられたかたちである(ただし住民側への情報公開は及び腰)。同じ行政担当者は目を剥いているのではないか。

 次に限界とマイナス評価をいくつか。正確には著者の『森の見方が的を射ていない』というべきだろう。国への批判、提言の多くは評価できる。しかし廃棄物問題解決の根幹に関わる「ゼロエミッションだ、循環型社会だ、持続可能な成長だ、と体裁のいいコピー」「拡大生産者責任という流行語」と皮肉っぽく切って捨てるような姿勢は気になる。これらが行政の慣用句として手垢に汚れつつあるのも確かだが、産湯とともに赤子を流してしまうのはいかがなものか。リサイクル法制を、回収まで事業者に負担させる「ドイツのデュアルシステムとは似て非なる恐るべきトリック」と批判するが、「ゴミ発電が 処分場不足 不法投棄解決の決定打になる」など、温暖化や大気汚染への負荷を無視した見解は戴けない。
 その反面、最大の排出責任者である産業界に「家電、自動車、タイヤメーカーが、リサイクルのリーダーになることを期待したい」とは、いささか甘すぎないか。彼らこそ、ゴミゼロの循環型社会と持続可能な成長路線、その絶対条件である拡大生産者責任制への道を妨げている最大の壁ではなかろうか。さらに「小国の身を省みず アメリカ型消費社会を模範とし 狭い国土には廃棄物があふれ」との批判的視点の先に、大量の資源・製品を輸入し、少量の高付加価値製品を輸出する、という国レベルの歪んだ物質収支・産業構造問題があることに目をつぶっている。こうした社会構造の根本的転換なしに、ゴミ問題の解決は有り得まい。

 最後に、県廃棄物行政の一翼を担う著者に、その立場からの自己批判を聞きたかった。本書は「堂本知事のお墨付き」だそうだが、その知事が「産廃銀座の第一段階」どころか、「産廃の重荷で沈みかけた船」への過積載となる、エコ処分場の着工を許可した事実をどう受け止めるのか。「銚子市で不法投棄ゼロを達成した」実績は認めるが、地下の全国最悪・145万立方メートルの撤去をどうするのか。県の廃棄物行政に対する住民の根本的批判(知事宛質問・要望書。「市民のちから」39号&同ホームべージ参照)にどう答えるか。機会があればぜひ聞きたいものである。
 しかし著者は、行政内部で住民サイドに立つ希有な存在である。「産廃Gメン」の脚光にも謙虚に、今後も「住民の切実な訴えに耳を傾け」る姿勢と仕事を期待したい。

(2003年1月)  




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