■書籍・書評


 石渡正佳著

 『産廃コネクション』


中山敏則





・著 者:石渡正佳
・書 名:産廃コネクション
     〜産廃Gメンが告発! 不法投棄ビジネスの真相〜
・発行所:WAVE出版
・価 格:1600円



 著者の石渡氏は現役の千葉県職員です。出先機関の海匝支庁に勤務し、産業廃棄物不法投棄対策などの業務に従事しています。
 海匝支庁は、銚子市、旭市、八日市場市、東庄町、干潟町など東総・海匝地域を管轄しています。この地域は産廃不法投棄の常習地帯です。また、産廃処分場設置をめぐって住民がはげしい反対運動を展開している地域です。
 著者ら「産廃Gメン」とよばれるメンバーは、そんな地域で、パトロールや投棄現場への踏み込み、ダンプの検問・追跡、不法投棄物の調査・撤去などの不法投棄阻止活動をつづけています。その結果、不法投棄常習地帯といわれた銚子市周辺地域では、産廃ダンプをほとんど見かけなくなったそうです。
 著者は、そうした仕事でつかんだ産廃問題のウラや対策などを本に著し、対策などを提起しています。内容もレベルが高いと思いますので、一部を書き抜きさせていただきます。


●住民を巻き込んだ産廃紛争は相変わらず各地で続いている
  〜産廃問題の構造は日本の恥部〜

 「処分場設置反対が声高に叫ばれ、住民投票や住民訴訟も大流行の昨今だが、産廃公害に悩む住民の声が、国や地方の施策にきちんと反映されてきたとはいいがたい。それどころか、行政、業者、住民を巻き込んだ産廃紛争が、相変わらず各地で続いている」
 「環境問題の専門家といわれる人々の間ですら、不法投棄や不正処理の実態を踏まえた議論が尽くされてきたとはいえない。むしろ、産廃業界の現状に目を背け、根本的な議論を巧妙に避ける形で、場当たり的な施策が打ち出されてきたことが、この問題の解決をさらに難しくしてしまったともいえる。産廃問題の構造は、かつての公害問題のような、知ってはいけない日本の恥部なのだ」


●不法投棄物から一流企業の名前が勢揃い

 「不法投棄現場を1時間も掘ってみれば、鉄鋼メーカー、自動車メーカー、化粧品メーカー、食品メーカー、印刷会社、ゼネコン、ハウスメーカー、家電メーカー、鉄道会社、大学病院、その他ありとあらゆる業界を代表する一流企業の名前が勢揃いするだろう。どの会社も、ISO規格の認証取得はもちろんのこと、環境対策は万全だと胸を張っている会社ばかりだ」


●不法投棄量「年間40万トン」の公式統計は大ウソ

 「年間40万トン──公式に発表された不法投棄の年間発生量である(平成12年)。40万トンというと、いかにも多いように感じられるが、4億トンといわれる産廃の年間総排出量のわずか0.1%にすぎ ない。1日に換算すれば1000トン、10トンダンプにしてわずか100台。とても信じられない数字である。不法投棄問題がこんなに大きく報じられているのに、全国の不法投棄が1日100台ということは ありえない。1か所だけで、それ以上のダンプが集まる大規模現場がいくつもあるのだ」
 著者は、こんな実態と乖離した数字をベースにしていれば「不法投棄の本質をついて対策を立てようもない」とか、「0.1%をベースにお茶を濁していたら、産廃処理システムの発酵がいよいよ進み、腐敗臭がたちこめ、カラスさえ逃げ出すことになるだろう」と警告しています。まったくそのとおりです。


●組織的な不法投棄のシンジケート

 「組織的な不法投棄は、アウトロールートへと産廃を横流しする『処分場のネットワーク(再委託ネットワーク)』、捨て場まで産廃を運搬する『ダンプのネットワーク(二次収運ネットワーク)』、捨て場を開設する『穴屋のネットワーク』、ブラックマネーを還流させる『資金のネットワーク』が相互に結合されることによってシステム化され、『不法投棄シンジート』と呼ぶべき複雑な構造が構築されている」
 それぞれのネットワークの特徴や実態をえぐっています。


●産廃業界と暴力団の結びつきは根深い

 「産廃業界と暴力団の結びつきは根深い。不法投棄の常習現場で、暴力団の関与が噂されないことはない。しかし、捨て場が検挙されても、暴力団の本体から逮捕者が出ることはまずない。暴力団は、みかじめ料や上納金によって上前をはねているのだ」
 「産廃Gメン」(県職員)の場合は、バックに警察がついています。しかし、不法投棄や処分場設置に反対している住民や市民団体のメンバーは、警察の応援なしにこんな輩とたたかっているのです。「残土・産廃問題ネットワーク・ちば」の方々などのご苦労がわかります。


●安定型処分場は“合法的な不法投棄現場”

 「最終処分場には安定型、管理型、遮断型の3区分があるが、これは我が国独自の概念であり、施設基準は国ごとに異なっている」
 「安定型は、安定5品目と呼ばれる廃ブラ、金属くず、ガラスくず・陶磁器くず、がれき類、ゴムくずの埋め立てを専用とする処分場である。実際には、中間処理施設で破砕処理された廃プラと建廃が、埋立物の主体となっている。構造的にはきわめて単純で、素掘りの穴と考えればよい。産廃に浸透した雨水を地下水から遮断することができないため、安定5品目を厳密に守っていても、溶剤などが溶出して、水脈や土壌を汚染する懸念がある。ましてや安定5品目以外の産廃が混入すれば、その危険性は不法投棄現場以上になってしまう」
 「安定型は合法的な不法投棄現場だと皮肉をいわれることがある。不法投棄現場以上に深刻な環境問題を起こしている処分場が現にあるせいだ」
 「安定型に埋め立てられている産廃の品目成分は、実は不法投棄現場とほとんど変わらず、木くずや紙くずの混入割合は30%にもなる」


●管理型が安全な施設だというのは神話

 「管理型が安全な施設だというのは神話にすぎない。その技術的信頼性は、行政や業界の専門家の間でしか通用しないカッコつきの信頼性だ」


●管理型処分場は未来の環境にとって大変なお荷物に
  なる危険をはらんでいる

 「地元の住民にとっては、安定型だろうと管理型だろうと、得体の知れない産廃が埋め立てられる危険な施設であることに変わりはない。むしろより有害性の高い産廃が埋め立てられる管理型に対する不信感のほうが強いといえる」
 「いくら遮水構造と水処理施設により、周辺環境から埋め立て物を隔離できるといっても、その分埋め立て物の有害性が高いのだから、総体的にどっちが安全かは一概にはいえない。裁判所が下す判断も、現在の最高技術を導入したのだという業者の技術的な説明や、法の基準を満たしている以上許可せざるをえないという行政の弁明よりも、住民の素朴な心配を是とする判示が多くなっている」
 「さらに、埋め立てが完了してからも、相当の期間、水処理施設の運転を続けなければならないことが最大の問題で、それがどのくらいの期間なのか、実証データがない。施設管理のための基金を積み立てることになってはいるが、ゴムシートや水処理施設の耐用年数が過ぎたらどうするかという問題は残っている。埋め立て完了後の管理期間は、アメリカでは20年、ドイツでは永久だが、日本では2年間有害物質が検出されなければ閉鎖が認められる。優等生といわれてきた管理型だが、未来の環境にとって大変なお荷物になる危険をはらんでいる中途半端な優等生なのだ」


●「赤ちゃんのように幼稚な日本」
  〜日本は環境おちこぼれ国〜

 「日本は資源も国土も小国なのだから、英米のような強国ではなくデンマークを見習えと、100年前に内村鑑三は説いた。そのデンマークは今、風力発電やバイオマス発電の先進国として知られるようになっている。一方、小国の身を省みず、アメリカ型消費社会を模範としてきた日本の狭い国土には、廃棄物があふれ、リサイクルのゴールデンベビー賞()という不名誉な賞まで授賞する落ちこぼれ国となってしまった。リサイクルを法的に義務づけるため、矢継ぎ早にリサイクル法を制定し、体裁だけはリサイクル先進国と肩を並べたふりをしてみたものの、実態は何も変わっていない」
     1992年にリオデジャネイロで開催された「地球サミット」において、国際NGOフォーラムから「赤ちゃんのように幼稚な日本」に贈呈された賞。米国は「近眼賞」を受けた。
 現役の行政マンからこのように言われるほど、わが国の環境行政はひどいのです。


●無責任な行政の体質
  〜パンクしたタイヤのままで高速道路を暴走〜

 「我が国の行政のずるい点は、システムを作るときには、学者を集めて一生懸命あれこれと議論するが、一度システムができあがってしまうと、問題が生じてもシステムそれ自体の欠陥は決して認めようとせず、業界に責任転嫁し、自ら責任を取らないという体質にある」
 「こうした行政の体質が、問題を大きくしてしまった事例は、東電の原発事故隠蔽(いんぺい)、雪印食品や日本ハムの子会社の牛肉詐欺など、最近になって頻発している感がある。問題の本質は、監視や買取のシステムそれ自体にあったのに、国は企業モラルの問題にすり替えて、自らの責任を回避しようとするばかりだ。作ってしまったシステムは変えられないというのは、タイヤを交換してから出直したほうが、ずっと早く目的地に到着するのに、パンクしたタイヤのままで高速道路を暴走するようなものだ」


●中間処理施設を増設すれば、最終処分場の増設は必要ない

 「国が打ち出している不法投棄対策を検証してみると、排出事業者責任の強化(入口対策)、最終処分場の確保(出口対策)、不法投棄現場の監視強化(水漏れ対策)の3点に終始しており、産廃処理システムそれ自体に対する対策(中間対策)が、ブラックボックスのようにそっくり抜け落ちている。最終処分駅行きのグリーン車に乗っていたはずの産廃が、どこかで不法ラインへとポイントを切り替えられ、不法投棄駅に到着する。その仕組みを解明せずに、入口と出口の対策だけで、不法投棄問題の根本的解決はありえない」
 「処理しきれない蓮廃の在庫を抱えながら、オーバーフロー受託を続けている中間処理施設問題の根源が中間処理施設不足だということを理解すれば、最終処分場が足らないから最終処分場を増設しようという短絡的な施策ではなく、中間処理施設を増設することによって、最終処分量を減らし、同時に不法投棄も減らすという正しい施策を選択することができる」
 「中間処理施設は最終処分量を減らすための施設なのだから、中間処理施設が足らないと最終処分場も足らなくなって、不法投棄が増えてしまうのだ。問題の根源が中間処理施設不足だということを理解すれば、最終処分場が足らないから最終処分場を増設しようという短絡的な施策ではなく、中間処理施設を増設することによって、最終処分量を減らし、同時に不法投棄も減らすという正しい施策を選択することができる。最終処分場の増設は必要ないのだ」
 この提起は傾聴に値すると思いますが、どうでしょうか。


●産廃公害に現に悩まされている地域の住民の顔を
 行政は真正面から見るべき

 著者は「あとがき」で次のように述べています。
 「循環型社会を実現することは確かに大きな目標だが、その前にやることがあるはずだ。それは産廃公害に現に悩まされている地域の住民の顔を真正面から見ることだ。住民の切実な訴えに耳を傾け、その問題の解決を最優先に考えることができないなら、環境行政とは何のためにあるのだろうか」
 行政は、「循環型社会の実現」など耳ざわりのよいことを盛んに宣伝しています。しかし、実際に不法投棄などで命や健康を脅かされている住民の声には冷たい対応をつづけています。こうした行政に対する手きびしい批判として喝采をおくりたいと思います。

(2002年12月)  




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