■書籍・書評


 中谷健太郎著

 『湯布院発、にっぽん村へ』


中山敏則





・著 者:中谷健太郎
・書 名:湯布院発、にっぽん村へ
・発行所:ふきのとう書房
・価 格:1700円



 歓楽的要素の強い大温泉地が衰退するなかで、自然との共生を重視した温泉地が人気を得ている。九州の由布院温泉(大分県)や黒川温泉(熊本県)はその代表例である。

 由布院温泉は「女性の行きたい温泉」ナンバーワンとして人気をあつめている。日本経済新聞社がアンケート調査をもとに選んだ温泉大賞でも、同温泉は「行ってみたい賞」に選ばれている(『日本経済新聞』2002年10月26日)。

 由布院温泉が全国屈指の人気を得ている理由はなにか。この本を読むとそれがよく分かる。ひと言でいえば、地元住民みずからが、地域にもともとある歴史的・文化的・自然的資源を活用しながら地域活性化に努力していることである。

 湯布院の人たちは自然をとても大切にしている。湯布院から遠く離れた城原高原の猪の瀬戸にゴルフ場を造るという話がもちあがった際、「これは大変だ。猪の瀬戸は別府から湯布院にお越しになる沿線で景観として大事な所だ」ということで、著名人100人からアンケートをとったり、署名運動を展開し、急きょ、観光協会内に「由布院の自然を守る会」を立ち上げた。猪の瀬戸の自然を守る運動は、町長や県知事を巻き込んで成功した。

 この自然保護運動がきっかけとなって「明日の由布院を考える会」が発足した。以降、この会が中心となり、自然保護運動や、行政に依拠しないまちづくりを活発に進めた。1972年には、大型別荘開発をめぐり自然環境保護条例運動も起こしている。レベルの高い音楽祭や映画祭などもつづけた。
 「考える会」の人たちは、ホテル内への客の囲い込みを否定したまちづくりや、個性的な宿づくりなど、明確なビジョンをもって地域の活性化を推し進めてきた。

 湯布院温泉は、かつては閑古鳥がないていたそうである。著者はこう書いている。
「別府、熱海、北陸など、有名な先進温泉地が、5階建てや8階建てのビルを建てて、ダンスホールを造って、お客様わんわんというときに、私どもの湯布院は閑古鳥が啼いていました」
 しかし、地域の歴史的・文化的・自然的資源を活用しながらさまざまな努力をつづけた結果、今日のような高い人気を得るまでにいたった。
 たとえば2001年11月17日付けの『日本経済新聞』は、「(人気が高い)温泉に共通するのは、歓楽色を抑え、土地に合った温泉情緒をつくり上げている点。これが奏功し、不況下でも検討しているところが多い」と記している。まさに、由布院温泉はそんな温泉地である。

 同書を読むと、地域の振興や活性化にとって自然を守ることがいかに大切かがよく分かる。
 ちなみに、著者の中谷健太郎氏は、「明日の由布院を考える会」の中心メンバーや由布院温泉観光協会会長などとして、湯布院の活性化に大活躍された方である。

(2002年12月)  




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