「リニア問題を考えるネットワーク」を結成

〜山梨で学習会と市民の集い〜






 (2009年)2月7日、山梨県甲州市塩山の清水寺(せいすいじ)でリニア学習会が開かれました。主催は「みどり・山梨」、共催は全国自然保護連合です。地元の山梨や、長野、神奈川、東京などから約30人が参加しました。
 学習会の講師は伊藤洋さん(山梨大学名誉教授、前山梨大学副学長)です。 伊藤さんは、「ルビコン河鉄橋を渡るリニアエクスプレス」と題し、JR東海が計画しているリニア中央新幹線の概要や問題点などをわかりやすく話してくれました。


東京−大阪間を1時間で走行

 リニア新幹線は、超電導磁気浮上方式の超高速鉄道です。時速500kmの走行が可能とされています。
 JR東海は2007年12月、東京−大阪間を1時間で走行するリニア計画を発表。次いで昨年(08年)4月は、2025年を目標に首都圏(東京)と中京圏(名古屋)の間で先行運転を始めると表明しました。
 先行運転のルートは、東京−神奈川−山梨−長野−岐阜−名古屋です。
 沿線の各県では停車駅誘致運動がおきています。長野県議会では、上伊那地区期成同盟会から提出された地元ルートによるリニア早期実現要望書が45票対11票で可決されました。
 山梨県でも、土建業者や政治家、首長、議会などが期成同盟に結集し、促進運動を活発に展開しているそうです。神奈川県でも相模原市が停車駅の誘致運動を熱心に進めているそうです。


JR東海はつぶれる

 伊藤さんはこんなふうに問題点を指摘しました。
     「JR東海は建設費を5兆1000億円と見積っているが、実際はその3倍以上かかると思われる」
     「東海道新幹線で1時間40分かかる東京−名古屋間を50分に短縮するというが、料金はかなり高くなる。また、これから人口が減少に向かう中で、新幹線をもう1本増やした場合、利用客がどれくらいいるのか疑問だ」
     「鉄道は、速ければ速いほど地震の影響が大きくなる。リニア新幹線は、震度1でもストップせざるをえない。鉄道は時間の正確性がいちばん大事だから、これは致命的な欠陥だ」
     「本四架橋や成田空港、富士山・茨城・神戸空港・関西国際空港、東京湾横断道路(アクアライン)、諫早干拓、長良川河口堰、高速増殖炉“もんじゅ”などの二の舞になる可能性が高い」
     「このままリニア中央新幹線を建設すれば、おそらくJR東海は経営難でつぶれるだろう。そうなると東海道新幹線もダメになってしまう」

 ウーンとうなってしまうような話でした。


停車駅誘致合戦も

 JR東海は、走行距離をできるだけ短くするために南アルプス貫通ルートをめざしています。しかし、長野県は諏訪方面への迂回ルートを要望しています。もし迂回ルートにすると「工事費が1兆円増となる」(JR東海発表)そうです。さらに、停車駅の誘致合戦も熱気をおびているそうです。
 質疑応答では、「こんなバカげた計画を中止しようという動きはないのか?」という質問もだされました。伊藤さんはこう答えました。
     「リニア新幹線の実験線を宮崎県から山梨県に強引に移し、実現のレールをひいたのは金丸信(故人)だった。金丸のような大物政治家が“中止すべき”と言えば中止になるだろうが、今はそんな大物政治家が一人もいない。麻生首相も中止させることができない」


成田のリニア計画はコスト面で中止になった

 3月の千葉県知事選の最有力候補と目されている森田健作氏は、成田と羽田の両空港を10分強で結ぶリニアモーターカーの実現をブチ上げています。この点について、伊藤さんは次のように述べました。
 「かつては、東京−成田間をリニアモーターカー (HSST) で結ぶという計画もあった。しかし、建設コストと比べた時間短縮効果は薄いということから、それは中止になった。森田氏は、そうしたいきさつを知らないでリニア構想を打ち出しているようだ」
 なかなか中身の濃い学習会でした。
 学習会のあとは、第2部として「リニア問題を考える市民の集い」が開かれました。話し合いの結果、リニア問題を考えるネットワークをつくることになりました。
 以下は、「市民の集い」で採択された宣言です。


集会宣言



「リニア問題を考えるネットワーク」の発足にあたって


 「リニア問題を考えるネットワーク」の発足にあたって  JR東海が単独事業として、2025年にリニア中央新幹線(東京〜名古屋間)を開業する意向を明らかにして以来、さまざまな議論が起こり始めています。
 しかしそれらはどちらかといえば、リニアができることで明るい未来が開けるといった幻想を抱かせるような論調のものが目立ちますし、また山梨県では駅をどこに設けるか、長野県ではルートをどうするかといった政治上の綱引きのような話題が先行しているように思われます。
 そのような状況の中で、私たち市民は、リニアをどう受け止め、今後の社会の中でどう位置づけたらよいのかを考えるために、とりあえずリニアの学習会を開くことから始めようと本日ここに集まりました。
 学んでみれば、やはりリニアには検討すべき問題が多くあるようです。具体的にはそれらは
    (1) 必要性
    (2) 財政問題
    (3) 自然および環境の破壊
    (4) 電磁波問題
 という形で、必要性と金、自然、健康の問題に絞られるようです。
 リニア新幹線が一私企業の事業であるとはいえ、それが鉄道という公益事業であるだけに、また私たちや未来世代の生活と深く関わるものであるだけに、そのマイナス面も十分に考慮されなければならないはずです。
 本日ここに集まった私たちは、これからリニア問題を自分たちの問題として捉え、ほんとうにリニアが必要なのかどうかを考えていかなければならないと感じています。
 そして今後、関心を共有する市民たちのネットワーク化をはかりながら、リニアが抱える課題を明らかにしていく必要があるでしょう。
 その意味で本日は、市民がリニアを考える第一歩を記し得たといえ、私たちはリニア問題を真摯に問いただしながら取り組んでいくことにします。

 2009年2月7日

「リニア問題を考える市民の集い」参加者一同 






講演や報告に聞き入る参加者




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