液状化対策に警告を発していた

〜地質環境専門家の楡井久さん〜

千葉県自然保護連合事務局



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 東日本大地震による液状化によって、千葉県内の埋め立て地は大きな被害を受けました。その現場をみて、液状化防止策を提案した楡井久(にれい・ひさし)さん(地質環境学者)を思い浮かべました。


■「千葉県の地震対策で、最も重要なのは液状化防止策」

 楡井さんは、地質環境のエキスパートとして、30年近く千葉県環境部地質環境研究室に在籍しました。
 楡井さんの口癖(くちぐせ)は、「湾岸に埋め立て地が広がり、住宅が密集する千葉県の地震対策で、最も重要なのは液状化防止策」でした。
 そして、県内の建設6社などに声をかけ、防止工法を開発する「液状化防止技術研究会」を発足させ、1993年に「ヘチマドレーン(排水)工法」を完成させました。これは、100平方メートルあたり約200万円という日本初の安価な工法であり、じっさいに液状化防止の成果が上がったそうです。


■「自然が発する怒り(地震)に人間はもっと
  謙虚にその声を聞くべきなのではないか」

 ところが、千葉県はこの新しい工法を受け入れませんでした。楡井さんは、「自然が発する怒り(地震)に人間はもっと謙虚にその声を聞くべきなのではないか」と県の姿勢を批判しています。

 まったくそのとおりだと思います。その意味では、今回の千葉県内における大規模な液状化被害は人災ではないでしょうか。県が防止策を怠ったからです。

 参考に、11年前(2000年)の新聞記事を転載させていただきます。楡井さんが液状化対策に警告していることを紹介した『毎日新聞』の記事です。
(2011年3月)




《『毎日新聞』千葉版、2000年1月11日》

〔未来へ託す風─21世紀・ちば〕(10) 都市防災


 液状化対策に警告
  「自然が発生する怒りに人間はもっと謙虚に」

地質環境学者 楡井 久さん

 長く延びる人工海岸線。街路を隔て海岸線に沿って中高層住宅群が整然と建ち並ぶ。東京湾岸の浦安から千葉方面にまたがる湾岸人口は県人口の3分の1以上を占める過密地帯だ。

 「東京湾の地下は地震が頻発する“地震の巣”そのものです。過密地帯に埋め立て地も目立つ。水分を多く含む沖積層の上に埋め立ての砂層がのっているため、その地盤は弱い。あの地震の記憶が時とともに風化し、その後の都市防災に教訓として生かされていない」
 昨年募れ。地質環境学者の楡井久さん(59)は幕張新都心を遠望しながら、こう悔やんだ。

 楡井さんは、茨城大広域水圏環境研究センター教授。「現場」にこだわり、現在も“湾岸パトロール”を続けている。  教授になる前の30年近くを地質環境のエキスパートとして、県環境部地質環境研究室一筋に生きてきたが、楡井さんの防止策は受け入れられず、定年まで3年を残し、一昨年、県を去っている。

 「湾岸に埋め立て地が広がり、住宅が密集する千葉県の地震対策で、最も重要なのは液状化防止策」。楡井さんの口癖(くちぐせ)である。

 楡井さんには脳裏から離れない「記憶」がある。1987年12月に起こった「県東方沖地震(マグニチュード6.7)」だ。死者2人、重軽傷者144人が出た。楡井さんは現場に急行し、埋め立て地調査も行った。数十カ所で液状化現象の被害を目撃。その光景が自身の液状化研究の原点となった。

 液状化現象とは、地震の揺れにより、地層内の水圧が高まって泥水が噴出し、地盤が支持力を失って、大地がぐにゃぐにゃになる現象。地盤の弱い埋め立て地で起こりやすい。楡井さんは震災後、間もなく排水性の高いポリプロピレン(合成樹脂)製のヘチマ状くいの抗に注目した。早速、県内の建設6社などに声をかけ、防止工法を開発する「液状化防止技術研究会」を発足させた。

 93年、「ヘチマドレーン(排水)工法」が完成する。ヘチマ状のポリプロピレン抗(直径12.5センチの円筒抗、長さ6メートル)の外側に水は通すが砂は通さない透水フィルターを巻き、何本も埋設するというもの。しかも、100平方メートルあたり約200万円という日本初の安価な工法。地下水が上昇しても、ポリプロピレン抗が砂や泥の噴出を防ぎ、水をけちらすため、液状化防止の成果は上がったという。

 しかし、楡井さんの環境畑と、防災対策を管轄する政策畑、実際に工事をする建設畑。「縦割り行政」の弊害が、新しい防止策の導入にブレーキをかけた。

 「瞬時に発生する防災問題と、長時間かけて起きる環境問題は時間のスケールは異なりますが、本質は同じ現象。同じ過ちを二度と繰り返してはいけない。自然が発する怒り(地震)に人間はもっと謙虚にその声を聞くべきなのではないか」

 楡井さんは力を込めた。自然の成り立ちを尊重することを前提とした都市防災の在り方が重視されている。そこには21世紀に求められるベき科学の在り方も問われているように思える。【福沢光一】



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