税金ムダづかいと住民苦難の現場を見る

〜東京・江戸川区のスーパー堤防〜


中山敏則



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 (2012年)12月19日、東京・江戸川区のスーパー堤防建設現場を見学した。「スーパー堤防問題を考える協議会」座長の堀達雄さんと、「スーパー堤防・まちづくりを考える会」代表代行の森須蘭さんに案内してもらった。住民の話も聞かせていただいた。


完成まで400年かかる

 スーパー堤防事業は、200年に一度の大洪水に耐えられるよう堤防の幅を高さの30倍(200〜300m)に広げるというものである。特徴は、「まちづくり整備事業」(土地区画整理事業など)との一体施工を基本としていることだ。対象区域の地権者は、事業が完了するまでほかの場所で3〜5年仮住まいをする。盛り土と宅地造成が終わってから、スーパー堤防の上に新居を建てて戻ることになる。
 事業は1987年に始まり、首都圏と近畿圏の6河川の計873kmを整備する計画であった。だが、会計検査院の調べによると、整備済みはわずか9km(1.1%)である。スーパー堤防は完成まで400年、12兆円かかるとされている。そこで、民主党政権は事業仕分けで「廃止」と判定した。ところが東日本大震災のあと、事業規模を120kmに縮小して継続となった。
 江戸川区では、荒川、江戸川、旧江戸川、新中川、中川の5つの河川でスーパー堤防事業が計画されている。その総延長は44.3km、対象面積は591ha、事業費は約2兆7000億円である。


延長150m、面積1.5haで83億円

 平井7丁目の事業区域は延長150m、面積1.5haである。そんな小さな規模なのに、事業費は土地区画整理分だけで83億円である。そのうち国費は96%だ。事業着手前は72世帯が住んでいた。ところが、完成後にスーパー堤防の上に戻ってきたのは5割強という。いったん退去して3〜5年仮住まいし、さらにスーパー堤防の上に新居を建てて戻るのはたいへんな苦痛を強いられるということだ。
 また、この地区のスーパー堤防は奇妙な形になっている。本来なら堤防から200mくらい先まで造成されるはずである。ところが、100m先に高さ5mくらいの直立擁壁がつくられ、そこで土盛りが終わっている。その先は財務省の職員住宅である。「本来は職員住宅も対象区域に含めるべきだが、財務省の反対で区域から除外された」とのことであった。


治水には役立たない

 事業がはじまっている北小岩1丁目東部地区の事業も、延長120m、面積1.4haと、わずかな規模である。それなのに総事業費は43億円と見込まれている。
 そのように「点」でしかない事業予定区域が江戸川区にちらばっている。それらはつながっていない。それで治水の役割を果たせるわけがない。住民が反対している理由の一つはそこにある。
 北小岩1丁目東部地区は約80戸である。何人もの住民が反対している。スーパー堤防事業取消訴訟も起こしている。住民からこんな話が出された。
     「ここは、これまで洪水被害を受けたという記録がない。江戸川区にはゼロメートル地帯があるので、やるならそういう危険な地域を先にやるべきだ。役所にそう言うと、“やれるところからやる”と答える」
     「80代、90代の高齢者もいる。二度引っ越すのは無理だ」
     「ほかに優先してやるべき事業がたくさんあるはず。たとえば道路や橋の維持補修だ。また、東日本大震災の被災地復興にカネを回すべきだ」
     「政権を奪回した自民党はスーパー堤防の建設促進をうたっている。心配だ」
 現場をみれば、スーパー堤防は“壮大なムダづかい”であることが一目瞭然である。
(2013年1月)










完成したとされる平井7丁目のスーパー堤防。
本来は財務省職員住宅(右)も事業対象区域に含まれる
はずだが、除外された。堤防から100mくらいの場所に
直立擁壁(左)がつくられ、土盛りはそこで終わっている。




北小岩1丁目東部地区のスーパー堤防事業対象区域。住民をいったん追い出し、
更地にする。そのあとで盛り土し、スーパー堤防にするという。手前は江戸川の堤防



事業予定区域では、あちこちの住宅に反対のノボリ旗が掲げられている



超党派国会議員連盟「公共事業チェック議員の会」と江戸川
スーパー堤防に反対する住民の意見交換会=2009年12月







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