半分以上の区間で堤防決壊の恐れ

〜利根川と荒川〜


中山敏則




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 安全基準を満たしていない区間は
  利根川62%、荒川57%


 防災の日の(2010年)9月1日、NHKがスペシャル番組「首都水没」を放送しました。
 衝撃的な内容でした。国交省の調査によって、利根川や荒川の堤防は半分以上の区間で決壊の恐れのあることが判明したのです。堤防強度の安全基準を満たしていない区間は、利根川が62%、荒川が57%です。


 死者6300人、孤立者110万人


 今年4月、国(中央防災会議)は報告書「首都圏水没」を公表しました。荒川や利根川の堤防が決壊して大規模水害が東京を襲った場合の被害状況を想定しています。最悪の場合は、死者6300人、孤立者110万人です。
 その対策と一つとして堤防補強をあげました。しかし、国交省の官僚は「決壊の恐れのある堤防をすべて手当てするのは不可能。優先度の高いところから手当てしていくということになる」と弁明です。


 堤防補強放置の原因に突っ込まない


 番組をみていて、肝心なことを見過ごしていると思いました。決壊の恐れのある堤防が半分以上も放置されているのはなぜか、ということです。それは、巨大ダムに膨大なカネをつぎ込んでいるため、堤防強化にカネがまわらないということです。
 この点で、番組スタッフの勉強不足や突っ込みの弱さを感じました。


 ダム建設優先で堤防補強を放置


 国交省が巨大ダム建設を優先し、堤防強化を後回ししていることについては、たとえば『ダムが国を滅ぼす』(今本博健+『週刊SPA!』ダム取材班著、扶桑社)で今本博健氏(京都大学名誉教授)がこう記しています。
    《今最も必要なのは破堤を防ぐことなのです。現在の堤防は土砂を盛り上げただけのものがほとんどですので、洪水が越水した場合だけでなく、流れにより堤防が洗掘されたり、水が堤防の中に染み込んだりして、容易に破堤します。
     堤防は補強すれば破堤しにくくなります。しかし、堤防の補強は長年放置されてきました。補強したのに破堤すれば責任を問われると思ったのでしょうか。ダムに回す予算が少なくなると思ったのでしょうか。それとも計画高水位を超えて流せば流下能力が大きくなるからダムが要らなくなると言われるのを恐れたのでしょうか。とにかく、これまでの日本の治水行政は、堤防を補強することには消極的でした。》


 破堤防止が緊急課題


 今本氏は治水の専門家です。淀川水域流域委員会の委員長も務めました。
 氏は、堤防補強と避難対策が治水の最優先課題とし、これらを徹底するだけで壊滅的被害は確実に減ると強調しています。
 しかし、国交省は巨大ダムの建設を優先し、堤防補強はおざなりです。NHKは、この点をまったく追及しませんでした。

(2010年9月)






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