高尾山天狗裁判が提起するもの

〜千葉県自然保護連合が講演会〜




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 千葉県自然保護連合は(2013年)1月19日、「『日本一』の高尾山を守るために〜天狗裁判で明らかになったこと〜」と題した講演会を開きました。
 最初に当連合の中山敏則事務局長が「千葉の環境問題をめぐる現状」と題して報告しました。
 つづいてジャーナリストの辰濃和男さんによる講演です。辰濃さんは朝日新聞の「天声人語」を13年間執筆された方です。「三番瀬を守る署名ネットワーク」の呼びかけ人でもあります。


天狗裁判に立ちはだかった「行政裁量」の壁

 辰濃さんは長きにわたり高尾山を守る運動にかかわってきました。しかし、高尾山を守ろうとする人びとの意志を踏みたおす形で首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のトンネルを掘られてしまいました。
 辰濃さんは住民訴訟(高尾山天狗裁判)で明らかになったことや、自然保護で問われていることなどを映像を見せながら話してくれました。

 2012年7月19日、東京高裁で高尾山天狗裁判のひとつの控訴審判決がありました。12年も続いた裁判の最後の日でした。「天狗裁判」と呼ばれるのは、高尾山は天狗が棲む森といわれてきたからです。
 判決は控訴棄却です。原告側の敗北でした。辰濃さんはこう言いました。
     「裁判に立ちはだかったのは行政裁量の壁だ。この問題をなんとかしないと、住民が行政相手の訴訟で勝つのはたいへんむずかしい。ようするに、行政がやったことはよほどひどいことがないかぎり認めるという暗黙の約束である。裁判所と行政が一体となっている。天狗裁判ではそういうことがあらためて明らかになった」

     「道路やトンネルができあがった現状をみると、メチャクチャだ。山が無惨に削られ、“コンクリートの山”になった。20世紀の価値観は人間中心主義だった。人間がやることは何でも許された。そして、自然をどんどん壊した。これに対し、21世紀は人間と自然が融和しなければならない。しかし、人間中心主義と闘うのは容易なことではない」


植物の多様性では日本一の山

     「フランス・ミシュランの日本編旅行ガイドは、“日本のすぐれた観光地”として富士山と高尾山をあげた。そして、両方に三つ星をつけた。普通に考えると金閣寺や銀閣寺、温泉地などをあげそうだが、そうではなく富士山と高尾山をあげた。フランスの人は高尾山を訪れてたいへん驚いたそうである。たった標高600メートルの山に1300種類もの植物が生息している。“高尾山は日本そのものだ”“これが日本の山だ”ということを肌で感じたのではないか。都心から1時間くらいのところにすばらしい山があるということに驚いたのだと思う。植物の多様性では、高尾山は日本一の山である。そして、この多様性は私たちの祖先が守り抜いてきたものだ。高尾山は自然遺産であると同時に文化遺産である。世界遺産に登録してもおかしくないと思っている」

     「国交省の役人は、一日でもいいから高尾山をみるべきだった。そうすれば、高尾山がいかにすばらしい山であるかがわかるはずだ」

     「さきほど行政裁量の話をした。行政はコンクリート建造物をつくりだすと、どんどんつくっていく。裁判所も、行政がこれだけやったのだから仕方ない、と認める。これは、ほんとうに困ったことだ」

 最後に、辰濃さんは、道路やジャンクション、トンネルなどで高尾山の裾野の自然がメチャクチャに壊されている映像をみせました。そうしたら、参加者から「わぁ、ひどい!」という驚きの声がだされました。


国交省は費用対効果の分析資料をだせなかった

 辰濃さんの講演のあとは橋本良仁さんの話です。橋本さんは「高尾山の自然をまもる市民の会」の事務局長として大奮闘をつづけてきました。道路住民運動全国連絡会の事務局長も務めています。
 橋本さんはこんな話をしました。
     「わたしたちが天狗裁判で争ってきたことのひとつは“圏央道に公共性はあるのか”ということだった。具体的には、コストベネフィット(費用対効果)である。これはB/C(ビーバイシー)ともよばれる。道路の建設費を分母にし、時間短縮などの経済的効果を分子にして割り算する。たとえば100億円を投入して300億円の経済効果が生まれるとなると、B/Cは3になる。ちなみに、東京外郭環状道路(外環道)の市川区間はB/Cが1である。ようするに、外環道はつくってもつくらなくてもいい道路ということだ」

     「国交省は、高尾山のところの圏央道のB/Cを2.6としていた。ところが、専門家の協力も得て私たちが計算したら0.48となった。これにはマスコミもびっくりした。ところが国交省は、2.6の根拠となる資料について“保存していないからだせない”と言った。資料はあるのだが、だせなかった。私たちは“だせないのはおかしい”と徹底的に追及した。裁判官は判決文で“原告側が主張している0.48は直ちに採用できないが、国交省が言っている2.6も採用できない”と述べた。アセスメントの不備や圏央道による環境破壊も認めた。このように、もう一歩のところまで迫ったのだが、裁判官は私たちを勝たす勇気が足りなかった。結果として行政に屈服してしまった。今後、外環道などで裁判をおこす場合は、天狗裁判の教訓を生かせるのではないかと思っている」

 講演のあとは、参加者と二人の講師の間で活発に質疑応答が交わされました。




辰濃さんの話を熱心に聞く参加者



ジャーナリストの辰濃和男さん



1999年頃の高尾山インターチェンジ付近



現在の高尾山インターチェンジ付近



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