千葉市中心街の衰退と行政の責任

〜三浦展著『ファスト風土化する日本』を読んで思う〜


開発問題研究会



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 三浦展著『ファスト風土化する日本──郊外化とその病理』(洋泉社新書)を読みながら、千葉市を考えざるをえませんでした。


■千葉市の繁華街はさびれる一方

 千葉市の中心繁華街は目を覆うばかりの衰退ぶりです。
 おそらく、全国47都道府県の県庁所在地で、千葉市ほど繁華街に活気がないところはほかにないのではないでしょうか。いまは完全に空洞化してしまい、「繁華街」は名だけです。
 千葉市の繁華街は、かつては、JR千葉駅前から「扇屋ジャスコ」まで広がっていました。しかし、「扇屋ジャスコ」「緑屋」「ショッカー」「メディアバレー」などが次々と閉店してしまったため、賑わいはまったくみられません。老舗のショッピングセンター「セントラルプラザ」も、とうとう2001年10月に閉鎖しました。かつて賑わっていた「銀座通り」は、閑散としています。以前はここが繁華街であったということさえも感じられません。
 この「銀座通り」の北側にある栄町も同様です。この栄町は、かつては数多くの商店、飲食店などが並び、1日当たり3万人が通行するなど、“関東有数の繁華街”として栄えました。しかし、いまは衰退が激しく、1日当たりの通行量は2000〜3000人に減少しているといわれています。たいへんな衰退ぶりです。


■「ここは県庁不在地です」

 こうした中心繁華街の衰退をなげく声はたくさんだされています。たとえばこうです。
     「千葉県下一を誇った、千葉市中央銀座街、栄町の繁華街もついに忘れられたゴーストタウンとなっているように見受けられる」(『JOHOちば』2004年1月号)

     「『ここは県庁不在地ですよ』──味の良さで知られる飲食店の主人が思わず発した言葉が忘れられない。千葉市中央区の中心街。昼食時ともなれば、平日は勤め人たでいっぱいになる店内が、土日になるとウソのように閑散としている。(中略)『この界わいは休みになると人が居なくなる。メーンの建物がいつまでもあんな状態じゃ、しょうがないと思うけど。こんな中心街、全国にあるかな』。このあとに次いで飛び出したのが冒頭の一言」(『千葉日報』2003年7月27日のコラム「忙人寸語」)


■行政が中心街の空洞化・衰退を推進

 問題は、こうした中心街の空洞化や衰退を行政が積極的に推進していることです。
 たとえば「幕張新都心」開発です。県は、「21世紀の国際情報都市」をうたい文句にし、千葉市幕張地区の埋め立て地に新都心建設をすすめました。巨額の県費を投入した結果、超高層のオフィスビルやホテル、国際展示場(幕張メッセ)などが数多く建設されました。
 しかし、ハイカラなビルが林立し、豪華な公園、街路灯、歩道橋、公衆便所などがつくられたものの、賑わいはまったくありません。夕方になると、人気(ひとけ)がほとんどなくなります。昼間も、土日は、一部の地区を除くと閑散としています。まさに、ゴーストタウンです。
 このように、郊外につくられた“新しい街”の閑散ぶりと、中心街の空洞化・衰退は、三浦展氏が『ファスト風土化する日本』で指摘している問題点がそっくりあらわれています。
 三浦氏はこう述べています。
     「日本ではこの20年に旧来のアメリカ型郊外を日本中に開発してきた。その結果、旧市街地は壊滅し、都市のコミュニティも農村のコミュニティも空洞化してしまったのである。まったくバカげた話ではないか。しかも、日本のこの総郊外化・ファスト風土化が、日米構造協議以降の無意味な公共投資によって助長されてきたとすれば、バカバカしさを通り越して、怒りがこみ上げてくる」


■幕張新都心は、新日鉄が総力をあげて進めた巨大開発プロジェクト

 三浦氏は、「総郊外化・ファスト風土化」が「無意味な公共投資によって助長されてきた」と指摘していますが、幕張新都心も同じです。
 この新都心計画は、JAPIC(ジャピック。日本プロジェクト産業協議会)が千葉県から研究委託され計画の具体化を図った構想です〈注〉

〈注〉
JAPICは、不況で苦境におちいっていた鉄鋼や建設業界を中心にし、1979年に設立された団体です。いかにしたらたくさんの鋼材やセメントなどを使い、建設大企業を潤わせる大規模な土木工事ができるかというを考え、政府や自治体にあちこちで大型開発をやらせようと働きかけています。

 JAPIC会長の斉藤英四郎氏(新日鉄会長、当時)と沼田県知事(当時)は、1987年に次のような文書を交わしました。
     「当日本プロジェクト産業協議会は、21世紀を迎えるわが国にとって必要な社会資本の整備充実に民間産業の立場から協力し、その促進を図ることを目的に設立された協議会であります。とくに当協会は、東京湾横断道路を中心とする東京湾環状道路が、首都圏、なかんづく東京湾岸地域のバランスのとれた発展のために必要な大動脈であるとの観点から関係機関や民間団体等に働きかけることを通じてその推進に努めており、このことからかねてより千葉県に深い関心を持っていましたが、この度、幕張新都心構想についての具体化のための研究、開発推進に関する諸問題等を採り上げ、貴県構想推進の一助となることを期待し、民間産業の立場より研究協力の申し入れをいたします。(中略)幕張新都心構想を極めて枢要なプロジェクトと認識し、かつ自治体のみでは十分カバーし切れない要素を多く含んでいることに着目しています」(朝日新聞千葉支局著『追跡・湾岸開発』朝日新聞社より)
 つまり、「東京湾横断道路と同じく総工費1兆円規模のこのプロジェクトに、JAPICはかねてから大きな関心を寄せて」(同書)いて、それが研究協力にむすびついたのです。
 また、NHK報道局特報部ディレクターをしていた長谷川孝氏は、新たなビジネスチャンスとして都市開発をねらっていた新日鉄と幕張新都心開発の深いかかわりをとりあげ、こう述べています。
     「新日鉄の都市開発事業はすでに始まっている。その象徴は『幕張テクノガーデン』である。(中略)一方、『テクノガーデン』に隣接する多目的ホール、『幕張メッセ』は財界グループ・JAPIC(日本プロジェクト産業協議会)が開発を推進している。JAPICは東京湾横断道路を国の民活路線に乗せた母体として知られ、会長は、経団連会長であり、新日鉄名誉会長である斎藤英四郎である。つまり幕張新都心計画は、新日鉄が総力をあげて進める巨大開発プロジェクトなのだ」(『新日鉄は何をめざすか』福村出版)
 このように、幕張新都心開発には、巨大プロジェクト(公共投資)で大儲けをもくろむ大企業が深くかかわっているのです。


■中心市街地をないがしろにし、開発しやすい埋め立て地に巨額投資

 三浦氏はこんなことも述べています。
     「川向こうが開発される理由は簡単だ。農地だから土地が安いし、権利関係も単純だから開発がしやすく、開発すれば利益を得やすい。土地を売った者は濡れ手に粟で億万長者になれる。行政から見ても、民間資本から見ても、地主から見ても得なことばかりだ。だから、川向こうの田園地帯に幹線道路が敷かれ、住宅地が開発され、商業・娯楽施設が立地するようになる。(中略)そうなれば、中心市街地が衰退するのは当然だ。著名な都市計画家の蓑原敬も『県庁、市役所などの行政施設、音楽ホールなどの文化施設、病院などの医療施設などの公共的施設が何のためらいもなく郊外に移転してしまった。(中略)政治、行政の内部でも中心市街地をどう守るかという意識がほとんど欠如している』と述べている(『街は要る!』)。本来、行政が郊外開発だけを進めて中心市街地をないがしろにしていいはずはないのだが、行政が自ら進んで郊外に移転しているのが現実である」
 三浦氏は、「川向こうが開発される理由」として、「農地だから土地が安いし、権利関係も単純だから開発がしやすい」ことをあげています。「農地」を「埋め立て地」に置き換えれば、なぜ幕張新都心が埋め立て地につくられたかがわかるでしょう。
 三浦氏はまた、「政治、行政の内部でも中心市街地をどう守るかという意識がほとんど欠如している」と批判していますが、これは千葉県の行政や政治家にそのままあてはまります。


■「第三の都心」開発で、市街地衰退に拍車

 こうした姿勢は千葉市もまったく同じです。
 同市は現在、「蘇我臨海開発」という名の大規模な再開発事業を蘇我地区で進めています。ここは旧川崎製鉄千葉工場の跡地で、総事業費は1520億円です。市はここを、中心市街地、幕張新都心に続く「第三の都心」(蘇我副都心)として位置づけ、同市の大規模再開発事業の目玉にしています。
 しかし、この開発は成算がほとんどないといっても過言ではありません。確実なのは、千葉市の中心市街地はますますさびれるということです。
 前出のコラム「忙人寸語」や『JOHOちば』もこんなことを述べています。
     「ベイエリアは県の『幕張新都心』と『蘇我副都心』ががっぷり四つに組み、活気を競う。取り残された都心(中心市街地)の再整備が大いに気がかりだ」(前出のコラム「忙人寸語」)

    「幕張新都心や、川鉄跡地復興は金をかけてすぐやれて、千葉の中心地は計画だけで、すぐやれない行政は実に悲しい」(前出の『JOHOちば』)
 千葉市も、県と同じく、幕張新都心開発の実態などからなにも学んでいないです。これには呆れるばかりです。

(2005年1月)   





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