東京湾岸開発の内幕や本質を鋭くえぐった本

〜朝日新聞千葉支局著『追跡・湾岸開発』〜


開発問題研究会



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■京葉埋め立て開発の知られざる実態を暴く

 発売されたばかりの増子義久著『東京湾が死んだ日――ルポ 京葉臨海コンビナート開発史』(水曜社)を読みました。
 この本は、高度経済成長時代の京葉臨海埋め立て開発の歴史を掘り起こしたルポルタージュです。浦安市から富津市にいたる京葉臨海開発のウラにどんな実態が隠されていたのか──。同書は、その一端を摘出しています。
 著者は、元朝日新聞記者です。千葉支局にも1970年から勤務していました。同書は、そのときの取材などを元にして書いたものです。


■朝日記者たちが総力をあげてとりくんだ『追跡・湾岸開発』

 ところで、京葉臨海開発の知られざる実態や本質をえぐった本としては、同じ朝日新聞千葉支局の記者たちが総力をあげてとりくんだ『追跡・湾岸開発』(同支局著、朝日新聞社発行、1987年刊)もおすすめしたいと思います。
 この本は、東京湾アクアライン(横断道路)、幕張メッセ、かずさアカデミアパークなどの建設や、漁業権放棄、大企業進出、土地ころがしなどをめぐる内幕、さらには保守政界の内部抗争などを鋭くえぐっています。浜田幸一氏(元衆院議員)がアクアライン建設、湾岸開発、山砂採取、土地ころがしなどに深くかかわったこともとりあげています。
 また、「千葉県最後の埋め立て事業」といわれていた三番瀬埋め立て計画(市川二期・京葉港二期埋め立て計画)については、「千葉の干潟を守る会」の大浜清代表や船橋漁協の大野一敏組合長などの話を紹介し、それまでの埋め立てがもたらしたものや、計画の問題点をわかりやすく記述しています。


■巨大開発がもたらしたもの
  〜“金権千葉”や環境破壊など〜

 同書は、「あとがき」でこう記しています。
     「もう一つの巨大プロジェクトである東京湾岸開発は、戦後まもなくから今日までずっと、千葉県開発の基軸であった点では、成田空港とはまた異質の問題をはらんできたといえる。つまり、かつて『江戸前の海』と呼ばれた千葉の東京湾は、30年足らずでほぼ埋め立て尽くされ、そこには日本最大規模の『京葉工業地帯』が造成された」

     「こうした工業地帯は、日本の高度経済成長の一因をも担ったが、一方で、海を離れて陸に上がった漁民は1万人を超え、自然破壊はもとより、『川鉄公害』などさまざまな公害も生んだ。また、この急激な開発は『土地のないところに土地を造る』ゆえに、さまざまな利権も生んできた」

     「もう一つは、湾岸工業地帯の造成が、地元の産業振興に必ずしも全面的に結びつかなかった点である。旧来の工業地帯、例えば対岸の京浜工業地帯は、明治以降徐々に発達してきたことから地元の中小企業とも密接に結びついていたが、千葉の場合は、30年代以降、急激に発達した省力型の素材型の重化学工業であり、『海外から原料を輸入して、製品にして、再び輸出する』といういわば“植民地型開発”だったからである。さらにいえば『金権千葉』といわれる政治的土壌にも、こうした湾岸開発が影を落としている」

     「千葉の開発に、こうした特徴と問題点があるとすれば、それは、とりもなおさず、戦後復興から高度成長、そして安定成長へと展開してきたこの国の開発路線の一断面を、端的に写し出しているとは、いえまいか。本書は、こうした問いかけを、開発の現場から考えてみようと企画した。具体的には、『中曽根民活』第1号ともいわれる横断道路をめぐって現地で何が起きているかのルポを手始めに、これまでの開発史を追い、開発が人々のくらしを果たして『豊か』にしてきたのか、また、開発行政を支える『保守王国』の土壌はどう形成されてきたのか、といった点を考えようとしたわけである」


■記者たちの奮闘ぶりを水沢渓氏が小説で描く
  〜『巨大証券の犯罪 第2部─ウォーターフロント作戦』〜

 この当時の朝日新聞千葉支局の記者は、自然を大規模に破壊して進められた野放図な大型開発や、それをめぐる利権政治に批判的な姿勢をもっていました。私たち研究会のメンバーも、同書の執筆に際し、記者から何度か取材を受けました。話をするなかで、乱開発や腐敗政治に批判的な記者の姿勢がひしひしと伝わってきました。
 そんな彼らの奮闘ぶりは、水沢渓氏の小説『巨大証券の犯罪 第2部─ウォーターフロント作戦』(健友館、1989年)でも描かれています。
 この本は、ウォーターフロント(東京湾岸)開発をめぐる巨大な利権と政治をえぐったものです。朝夕新聞千葉総局の浅田三郎記者と大沢秀夫記者が登場し、中曽木民活の欺瞞性や東京湾横断道路計画をめぐる利権・腐敗などをあばいています。
 「二人は、いずれ千葉・東京を中心に中曽木民活の欺瞞性をあばく単行本を出すべく密かに取材しているところでもあった」と書かれていますが、この単行本は前述の『追跡・湾岸開発』を指していると思われます。
 小説の中で、大沢記者はこう語っています。
     「リクルートなんて小物だよ。もっと大きな利権は、我々が手がけている横断道路や東京湾一帯の再開発利権だよ。大蔵省を巻き込んだ野田証券を中心とするインサイダー取引、重厚長大産業の鉄鋼、造船、セメントなどと一体の贈収賄による自然破壊のほうが、役者も金も桁はずれに大きいよ」
 浅田記者は、幕張新都心構想についてこう述べています。
     「千葉の沼田知事は、“このプロジェクトには1800億円の生産誘発効果がある”なんていっていますけどね、問題点は大ありなんですよ。企業が進出するといっても本社機能を移すところはないし、今のままでは企業数も不足していてガラ空きなんで、2期、3期で計画通り企業を誘致できるか疑問なんです」

     「それに、戦後の千葉の悪弊で、海を埋め立て、土地を造成して、それを超安値で三井不動産など巨大企業に分譲してきています。その利権をめぐって、千葉県政は、中央政界ともからんで、大揺れに揺れてきたんです」

     「漁民から海をとりあげ、漁業の街を壊滅させてきた、その総仕上げが、幕張新都心構想ですが、住民に何がプラスになるかは、全く未知数といってもいい。幕張メッセだって、計画のずさんさがいろいろ取り沙汰されているんで、結局儲かるのは、土地を造成し、建物をつくる、土建、セメント、建設、鉄鋼などの大企業だけで金を負担してきた千葉県は、最後に大赤字の運営を強いられる施設を押しつけられるだけじゃないかと懸念する人も多いんですよ」

     「手本はヨーロッパオンリーで、日本的なものは欠け落ちているんです。造成や建築の費用の資金を回収できればいい、企業が儲かり、一時的に景気が浮揚すればいい、という不動産屋的発想しかないからですよ。100年単位で街造りをする思想はこれっぱかりもないですからね。海を埋め立ててしまえば、もう元には戻らないし、失われた魚や貝や海藻や鳥や虫たちは二度と返ってこない。そんなことを少しも考えず、目先の利益だけを追求したピカピカビルに日本中がなっていく。それが中曽木民活で始まった日本列島改造計画なんです」
 これらは、埋め立て開発の本質をズバリと突いています。
 いまの記者も、当時の朝日記者たちがとりくんだようなことをぜひやってほしいと思います。

(2005年9月)   






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