県民が潤わない千葉の開発


開発問題研究会





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なぜ県財政は破綻状態なのか

 『稲毛新聞』2004年7月9日号のコラム「星雲録」は、千葉県の開発や経済について非常に重要なことを指摘しています。千葉県は環境にたいへん恵まれているのに、なぜ県財政は破綻状態なのかということです。


千葉に本拠を置く企業が少ない

 コラムは、その原因として、県に税金を納める企業が少ないことをあげ、こんなふうに書いています。
 「問題は商業、工業部門の税収である。京葉湾岸ベルト地帯を見ても日本を代表する大手企業が軒を連ねているし、内陸にも工業地帯がいくつもあって決して他県に比べて見劣りしないが、千葉県に本拠を置いて所得税を納める企業が少ない」
 「幕張メッセが完成したら地元に本拠を置く企業を誘致するという条件であった。ところが県企業庁は方針を変え、地元の商業に打撃を与える多国籍企業をどんどん誘致した。官制の街幕張メッセはどれだけ県の税収に貢献しているのか。県民の税収を地元の商業を潰す県外企業に投資したことになる」
 「地元に税金を落とさない大手スーパーやコンビニやチェーン店ばかり増え、酒屋、八百屋、魚屋、米屋など地元の商業は衰退する。こうした地域経済の仕組みを知らない政治家が多すぎるから財政も破綻するのである」


「開発は県経済に貢献」はウソ

 これは、核心をついた指摘です。埋め立て地に日本屈指の工業地帯が形成されたことなどをもって、「開発は千葉県経済に大きな貢献をした」ということが堂々と語られています。沼田県政や堂本県政もそのようなことを盛んに宣伝しています。
 しかし、これは真っ赤なウソです。
 京葉工業地帯の大工場は、大半が鉄鋼、化学、石油精製といった基礎資源型工業であり、しかも本社機能がありません。このため、出荷額は多くても、雇用力は小さく、地元産業とのむすびつきはほとんどありません。地元に収める税金も少なくなっています。地元に落ちる金は、みかけよりもかなり少ないのです。
 その一方で、企業の生産活動にともなう膨大な社会的損失や費用はすべて県民や自治体に負担として押しつけられています。住民にはかりしれない健康被害をあたえた公害や、市原の海底が全国一のダイオキシン汚染になっていることなどは、端的な例です。


県企業庁委託調査も、
  「臨海工業開発の効果は小さい」と結論

 だから、県企業庁が1975年に民間研究所に調査を委託して作成した「臨海地域開発の影響調査」は、臨海工業開発が千葉県にもたらした波及効果は意外に小さいという結論をくだしたのです(この調査報告書はおクラ入りにされました)。
 千葉県は「県民の平均的所得が全国7位」となっていますが、よくみると、東京通勤者の所得がものすごく貢献しています。また、大消費地に近いということで、千葉県の農業粗生産額は全国第2位を誇っています。内陸工業も大きな貢献をしています。全国7位の所得には、こうした東京通勤者や農業、内陸工業が大きく貢献しているのです。


地域経済の仕組みを知らない政治家が
  多すぎるから財政も破綻する

 しかし、この点を学者・研究者などがきちんと究明しないため、多くの県民がダマされています。大工場が林立する京葉工業地帯や、ハイカラな高層ビルが建ち並ぶ幕張新都心、そして日本最大の国際空港(成田空港)などをみると、巨大開発は千葉県の経済や財政に大きな貢献をしているかのように見えるのです。
 しかし、事実は『稲毛新聞』のコラムが指摘するとおりです。コラムは、「こうした地域経済の仕組みを知らない政治家が多すぎるから財政も破綻する」と述べていますが、まったくです。


「三番瀬再生計画案」も埋め立て開発を礼賛

 この点では、三番瀬円卓会議がまとめた「三番瀬再生計画案」も同罪です。同計画案の「三番瀬の歴史」にはこう書かれています。
 「工業化による経済の向上や都市化も進みました。三番瀬に面する人工化された海岸は、港湾が開発され大型船舶が出入港可能な大型航路が開削されました。港湾として活用され、大量の物資が出入りする場となりました。同時に埋立てにより確保した工業用地に第二次産業の企業が誘致され、多くの県民が働く工場が建設されました。その結果、三番瀬の背後地の企業は、千葉県の経済を牽引するエンジンとしての役割を果たしてきました。現在でも、京葉臨海部では約5万人が働き、年間出荷額が5兆6千億円に及んでいます。現在の千葉県は、県民の平均的所得が全国7位となり経済的な豊かさを手に入れました」
 まさに、埋め立て巨大開発の礼賛です。しかしそれは、物事の表面だけしか見ないものです。地域経済の仕組みに無知な学者や委員だけで無理やり作成したので、そうなりました。この再生計画案は、将来、どのような評価を受けるのでしょうか。


行政に無関心でいるうちに、
  県民は大やけどをしてしまった

 最後に、かつて千葉大学の学長をしていた井出源四郎氏は、千葉の巨大開発をつぎのように端的にいいあらわしました。
 「行政に無関心でいるうちに、県民は大やけどをしてしまった。それは大企業による京葉工業地帯の建設、国策の成田空港、東京のベッドタウン化、の3つです。こうした、県民がうるおわない開発は、もう必要なしといいたい」(『朝日新聞』1983年3月11日)
 意味深長な指摘だと思います。

(2004年7月)




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