★「常磐新線と沿線巨大開発を考える12・1県民集会」報告資料


常磐新線区画整理を考える


NPO法人区画整理・再開発対策全国連絡会議 事務局長 遠藤哲人



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1.全国に広がる郊外地区画整理の破綻
  〜理事がいつ首をつってもおかしくない状況、「終わりなき区画整理」の様相〜

 まちづくりの手法、都市計画の母とよばれる土地区画整理事業は、じつは不動産開発事業であり、不動産経営事業です。ある一定のエリアの面に道路を碁盤の目のように通して、もって宅地開発を進めるというものです。
 その士地区画整理事業、とくに郊外地の区画整理は、うち続く地価の下落の中で破綻に瀕しています。事業費を確保するための処分するべき土地が売れないか、かなり計画価格をダンピングしないと売れないのです。そのためにすべての保留地を売りつくしても事業会計に大穴があく、事業主体である区画整理組合の資金繰りがつかず、工事が中断したまま銀行からの矢継ぎ早の督促、連帯保証人への責任追及などの事態が各地で始まっています。いつ理事が首をつってもおかしくないような状況。──これが郊外地区面整理の現実です。
 他方、自治体や都市基盤整備公団などの行う区画整理では、保留地が処分できないことから、えんえん事業が長期化する様相を示して、まさに「終わりなき区画整理」の泥沼の事態が生まれています。
 このことは、私たちの全国連絡会議編集の本『区画整理・再開発の破綻』の中で詳述してあるところです。


2.郊外地区区画整理の破綻の構造
  〜保留地処分価格が地価下落に追いつかない〜

 なぜ区画整理は破綻するのでしょうか。どういう区画整理が破綻しているのでしょうか。 常磐新線区画整理はどうなのでしょうか。


(1)地価の下落が区画整理財政を直撃──そのしくみ

 郊外地型の区画整理では、事業費の大半を保留地を処分してまかないます。保留地とは、事業費を工面するために区画整理事業地区内に確保する処分用の土地のことです。
 地権者は平均4割の減歩(げんぶ。土地の無償提供)と言われていますが、この保留地のための土地もこの減歩の中から生み出します。
 この保留地の処分予定価格というものが「事業計画書」に書き込まれていますが、問題は、地価の下落でこの予定価格通りにとても土地が処分できなくなっているのです。造成工事などの事業費は、地価下落だからといって下がりませんから、収入と支出がつりあいがとれなくなっている、というのが今日の郊外地区画整理の採算上の最大問題です。


(2)柏北部整備の場合はどうなのか

 柏北部では、インター周辺地区(390ha)が事実上凍結となっており、実際に事業化されているのは、三井ゴルフのある中央地区252ha、大室や小青田など優良農地のある東地区170haです。合計面積422haで、東京臨海部開発400haより大きい大プロジェクトです。
 それでは保留地はどのくらい計画されているのでしょうか。
 それぞれ「事業計画書」に明記されていますが、中央地区で34ha、東地区で29ha、合計約64ha、東京ドーム球場の13.5倍に相当する面積です。
 これを事業資金の面からみてみましょう。
 柏北部整備の中央地区963億、東地区620億の総事業費となっています。この場合の総事業費とは、あくまでも都市基盤整備、道路などの整備、宅地造成や建物移転費用など区画整理事業だけの事業費です。
 事業地区内に柏市などが建てるビルや学校などの費用は含んでいません。
 2地区合計の総事業費は合計1583億円となります。
 それでは1583億円の支出を支える収入の見通しのうち、先にあげた保留地処分でどのくらいの収入を見込むのでしょうか。
 「事業計画書」によれば、中央地区で610億円、東地区で506億円、合計1116億円分を、保留地を処分して確保しなければならないお金です。これは900億円規模の柏市一般会計の財政規模を上回る巨大な額です。


(3)柏市内での保留地は計画どおり処分できるのでしょうか

 ここがそうとう危ぶまれていることの一つです。中央地区、東地区ともそれぞれ事業計画上の保留地処分単価が記されています。中央地区で平均17万8100円、東地区で17万1700円となっています。
 それでは最近の柏市杓の地価の動向はどうなのでしょうか。
 比較の原則は、保留地処分単価との比較ですから、今日の時点で「区画整理後の似たような事例」との比較ということになります。6m程度の道路に面した街区整然とした、駅から遠からずのところの地価と比較する必要があります。
 すると、例えば──
イ.北柏3-19-7(基準地地価柏7号)    北柏駅から60mの低層住宅地ら。16万円/m2 ロ.松葉町1-5-9(基準地地価柏6号)    北柏駅から1500mのマンション地。15万9000円/m2
 柏市内で公的な土地の標準的な時価相場としては、以上にあげた基準地地価調査(千葉県が7月の時点のものを調査)と、国土交通省が1月時点で調べる公示地価調査があります。調査地点は基準地地価調査が42カ所、公示地価譲査が100カ所あります。それぞれきちんとつきあわせてみる必要がありますが、サンプル的に比較しただけでも、すでに北柏駅という一定の都市集積のある駅からそれなりの距離の、それなりの整備水準の住宅地と比較しても、北部開発地の保留地処分単価の9割程度という状況となっています。

 かなり単純な言い方ですが今日の時点でみる限り、保留地処分金の1割程度、柏市内2地区で100億円程度は穴があくのではなかろうかと思わせる状況なのです。この先、さらに地価が下落すればこの差は広がってくるものと思われます。


(4)構造赤字は誰が埋めるのでしょうか

 区画整理組合の施行の事業では、この穴については、地権者からの追加徴収(賦課金徴収、再減歩、再々減歩)という形で埋めます。それらが組合で議決されない状態であれば、金融機関などが連帯保証人の理事などの責任追及へ動くということになります。現に、松戸市東松戸駅前、紙敷区画整理組合では、166億円の債務をめぐって金融機関が地元の連帯保証人の財産の差押さえ手総きに入っているところです。
 それでは千葉県施行や都市基盤整備公団施行など、公共団体施行の楊合は、これをどう埋めるのでしょうか。
 法律上の原則は施行者責任です。しかし都市基盤整備公団施行の場合は、事業を行うにあたって、地元の県・市に保留地処分の協力を義務づける協定書をとりかわして事業化するのが原則となっています。その点で千葉県、流山市、柏市などによる保留地買い取り等の負担を求めてくるものと思われます。施設内容も位置づけも不明確なまま公益施設用地(学校、市民ホール、運動場、保健施設、なんでも)として保留地の買い取りが迫られることはよくあることです。
 愛知県常滑市の中部空港関連の区画整理を都市基盤整備公団が施行していますが、市と公団との間で、保留地処分が難しい場合は、常滑市が事業計画書に載せてある保留地処分価格そのもので保留地を買い取るものとするという協定書が交わされていて、話題となっています(月刊『区画・再開発通信』2002年7月号)。


(5)保留地処分困難ということは、換地の資産違用も困難ということに注意

 区画整理は、農家が農業を廃業して土地資産を活用して不動産業に転ずることを促します。そういうことに期待をもって地権者もいます。しかし以上の状況は、アパートを建てても入り手がいない、駐車場も借り手がつかない、という状況と表裏一体のことです。固定資産税も新しい土地が使えるようになった段階(仮換地指定・使用収益開始日以降)からは、「生産緑地」以外は宅地なみ課税を受けることになっています。農地の頃から比べれば数十倍の増税となりますが、土地の「利活用」ができなければ、この税負担をどうやって負うのでしょうか。
 千葉ニュータウン関連の地域で千葉県施行の区画整理が行われていますが、ぺんぺん草が生えている区画整理での地主の最大問題は「土地の利活用ができない、税負担だけは数十倍」という事態です(『読売新聞』)。


3.見直しの必要性

 以上、事業採算面からの問題だけを述べましたが、もちろん、この区画整理事業計画そのもののいろいろな問題も検討する必要があります。
 しかし、さしあたり、事業採算面からみて、また地権者の家計という面からみて、基本的な見直しが必要なことには変わりありません。本格的な工事着工で膨大な経費を使う前に、「凍結する部分」、「長期に考える部分」、「短期に早くやる部分」など、分けて再検討する必要があるのではないでしょうか。その際は、住民地権者、市民の意見を聞き民主的な意向譲査を行い、また「見なおし委員会」のようなものを設置してとりくむべきでしよう。

 当面、区画整理区域(都市計画決定した施行区域)、事業地区(事業計画決定)のいずれも、そのまま手をつけずに措いておき、そこの中で「工区分け」を検討することが一つの方法として考えられます。柏市内では、南柏駅東口のように、事業地区のまま30年近く「凍結」させた経験もあります。

(2002年12月1日)





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