★「常磐新線と沿線巨大開発を考える12・1県民集会」報告資料


常磐新線の実態


東京工業大学大学院 教授 金川貴博



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1.JR線ではない

 常磐新線は、第三セクターが経営する鉄道、いわゆる「三セク鉄道」である。
 計画当初の1987年には自民党議員らからJR東日本に対し、第三セクターへの参加するように、強い要求があったが、JR東日本は、「長期間にわたって採算がとれない可能性が強い。第三セクターを設立したとしても、資本金を食いつぶして解散するだけのことになりかねない」として、参加を拒否した。
 その後、「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別処置法(宅鉄法)」が89年6月に成立し、計画が具体化したが、JR東日本は「6000億円(89年での見積価格)でこの事業はできないと考えられること、工事期間が予定(当時は2000年開通予定)より延びるおそれがあること、鉄道が完成しても採算ベースにのるように人口がはりつかないことが予想されること」から、参加を拒否した。
 これに対し、JR東日本の言い分は不当であるとして、国会で追及した議員もいたが、政府は「営利事業という立場から当然のこと(89年6月15日)」と答弁している。
 こうして、JRが参加しない中で、91年に関係自治体だけの出資で第三セクター「首都圏新都市鉄道」が発足し、結局、JRは一切関与しないこととなった。
 常磐新線は「JR常磐線の混雑緩和」をうたい文句の一つにしており、JRにとってはライバル会社である。そこで、JRでは常磐新線開通がJRにどう影響するかを検討したが、影響はほとんどないという結論を昨年度に出したということである。


2.「鉄道が来る」と「便利になる」は同義語か?

 私は「つくば駅(仮称)」の目の前に住んでいて、日々、工事の騒音に悩まされている。「鉄道が開通すれば便利になりますね」とよく人に言われるが、私はそんな単純な発想はしていない。鉄道が便利であるとは、「安い、早い、多い」つまり、運賃が安い、早く目的地に着ける、電車の本数が多い、という条件が満たされてはじめていえることである。


3.運賃は?

 三セク鉄道は、どこも運賃が高い。本日は、くしくも東北新幹線八戸延伸開業の日であり、これにより、在来線の盛岡─八戸間が、JRから三セクへ移管された。そして盛岡からの運賃は、隣駅の厨川までが280円(昨日までは180円)、八戸までが2960円(昨日まで1890円)と、大幅値上げになった。
 首都圏の三セク鉄道としては、千葉県に北総開発鉄道と東葉高速鉄道、埼玉県に埼玉高速鉄道があり、いずれも運賃はJRの2〜3倍である。鉄道を運営する第三セクターを倒産させないためには、高い運賃設定が避けられない。常磐新線では、競合するJR常磐線の最寄り駅までのバス代や電車代とJR運賃の合計額(流山なら流山電鉄+JR、守谷なら関東鉄道+JR、つくばなら関鉄バス+JR)と同額なら通勤の人も使うだろうが、それよりも高いと、会社が定期代を出してくれなくて、使えないという事態にもなりうる。乗れないような高い運賃なら、鉄道があっても使えない。


4.早く目的地に着けるか?

 常磐新線のパンフレットにある「つくば─秋葉原間45分」は最速の電車の場合で、通勤時間帯にも45分で走るとはどこにも書いてない。線路の構造をみると、快速が各駅停車を追い越せるのは、守谷、流山新市街地、八潮の3駅しかない。通勤時間帯には、八潮─秋葉原間に多くの電車が走っており、快速はこれを追い抜けない。したがって、通勤には快速でも1時間かかると考えるべきだろう。
 JR常磐線の特急電車の場合でも、上野着が10時以降のものは、土浦─上野間(66km)を43〜44分で走るが、9時台のは49〜51分、8時台のは56分、7時台のは57〜66分を要している。

 常磐新線では、つくば─秋葉原間(58.6km)を、電車があまり走っていない昼間なら45分は可能かもしれないが、常磐新線には、急カーブ(半径201m)と急勾配(3.5%)があり、しかも、守谷を境にして、つくば側が2万ボルトの交流、秋葉原側が1500ボルトの直流で電化されているため、特別な車内を新たに設計しないと、つくば─秋場原間の直通運転ができない。45分での走行をめざして、新しい車輌の製作が始まったばかりであり、試運転をしてみないと明確なことは言えないだろう。

 快速が柏市内に止まるのなら秋葉原まで30分で行けるが、止まらないと予想されるので、柏北部東駅から秋葉原までの所要時間は40分、柏北部中央駅から38分と推測される。途中駅で快速に乗り換えたとしても30分以内は無理である.


5.本数は多いか?

 平成8年度の「常磐新線整備計画の見直し」に記載された「ピーク時1時間の輸送状況」から、電車の運行本数を推定すると、開業5年後(平成22年度)のラッシュ時で、
つくば─守谷 4本(つくば発秋葉原行きが4本)
守谷─八潮  16本(守谷発秋葉原行きが12本)
八潮─秋葉原 24本(八潮発秋葉原行きが8本)
である。
 首都圏新教市鉄道は今年8月に、常磐新線用の車輌として、6両編成で30本(直流用14本、交直両用16本)合計180両の車輌を、320億円を上限価格として上限価格としてK製作所に発注した。この車輌数では、上記の運行本数は無理である。開業時(平成17年の予定)の運行本数はこれよりも少なくなるが、常磐新線のパンフレットには24本と書いてあるので、これを変更しないで、この車輌数(ただし、30編成のうちの1割程度は故障や検査に備えて残して置く必要がある)でやりくりするとなると、考えられる発車本数はラッシュ時で以下のとおりとなる。
つくば発 4本 (車輌8編成必要)
守谷発  4本 (車輌6編成必要)
八潮発  16本 (車輌12編成必要)
 これではバランスが悪いので、守谷発を増やすと以下のとおりである。
つくば発 4本 (車輌8編成必要)
守谷発  8本 (車輌12編成必要)
八潮発  8本 (車輌6編成必要)
 昼間はこの半分程度と考えられる。
 つくば発は守谷以降を快速運転すると鉄道会社幹部が発言していることから、柏市内に停車するのは、ラッシュ時でも6本が限度と推定される。


6.見直し作業

 首都圏新都市鉄道は、常磐新線の見直し作業を現在行っており、今月か来月中に公表されるはずである。

(2002年12月1日)





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