■小櫃川の水を守る会第28回総会記念講演(要旨)


放射性廃棄物等撤去請求事件の概要

〜手賀沼終末処理場指定廃棄物一時保管の始まりから現在まで〜


広域近隣住民連合会事務局長
小林博三津(ひろみつ)さん



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◆広域近隣住民連合会の発足

 広域近隣住民連合会は2012年9月25日にできた。きっかけは、指定廃棄物一時保管施設の説明会だった。説明会で反対の意見を述べた方たちが集まり、連合会を結成した。一時保管場所となった手賀沼下水処理場の近隣住民22人による市民活動として発足した。
 今年(2014年)1月7日、一時保管施設に搬入された放射性廃棄物などの撤去を求め、千葉地裁松戸支部に千葉県を提訴して係争中である。


◆指定廃棄物とは

 2011(平成23)年3月11日に東京電力福島第一原発の事故が起きた。事故によって放出された放射性物質(主に放射性セシウム)がいろいろなものに付着したり濃縮したりした。ごみの焼却灰や下水汚泥、浄水発生土、稲わら、たい肥などである。それらのうち、放射性物質の濃度が一定量を超えたもので、環境大臣が指定したものを指定廃棄物という。指定廃棄物の濃度は、1kgあたり8000ベクレル超から10万ベクレル程度とされている。
 かりに1kgあたり8000ベクレルを超える廃棄物が自分のところにあっても、申請しなければ指定廃棄物にはならない。
 指定廃棄物は国が管理することになっている。放射性廃棄物に関することは「放射性物質汚染対処特措法」によって定められている。この法律は福島第一原発事故のあと、2011年8月に急きょ制定された。
 放射性物質はどこからきたのか。2011年3月11日、東日本大震災が発生した。そのときの大地震により、福島第一原発の1〜3号で事故が発生した。放射性物質が大気中に大量に放出された。その放射性物質が風に乗って200キロ飛んできた。飛んできたときに千葉県の北西部で雨が降り、大気中にあった放射性物質が地面に落ちた。県の北西部でいちばん濃いのが東葛地域、つまり我孫子、柏、松戸、流山の4市である。


◆指定廃棄物の保管

 指定廃棄物は、関東の1都6県に約2万3400トンあるとされている。栃木県1万3748トン、茨城県3643トン、千葉県3612トン、群馬県1187トン、東京都982トン、埼玉県264トン、神奈川県3トンである。
 これをどうやって保管するのか。国(環境省)は、宮城、栃木、茨城、千葉、群馬のそれぞれの県内に1カ所ずつ最終処分場をつくることにしている。
 このうち宮城県と栃木県について、最終処分場の候補地を環境省が発表した。だが、どちらの候補地も地元が猛反対している。残りの千葉、茨城、群馬については候補地が決まっていない。
 最終処分場ができるまでの間はどうするかというと、環境省のホームページではこうなっている。
     「指定廃棄物は、国による処理体制が構築されるまでの間、当該指定廃棄物を保管しているごみ焼却施設や下水処理施設などで事業者に一時保管していただいています」
 国の施設ができるまでは、もともと発生したところで保管してください、ということである。それが環境省の方針であった。
 ところが千葉県の東葛地域では、4市(松戸、柏、流山、我孫子)と1組合(印西地区環境整備事業組合)が、指定廃棄物保管場所の確保を県に要望した。2011年8月31日のことだった。
 県はこの要望を受け、手賀沼終末処理場の敷地に一時保管施設を設置した。そこに柏、松戸、流山の3市が指定廃棄物を運び入れた。その量は526トンである。
 5市が千葉県に保管場所の確保を要望したのは、それぞれの市に保管場所を確保できないためであった。だが、柏、松戸、流山の3市に保管場所がないわけではない。保管場所を確保する努力をしなかっただけだ。私たちはそうみている。


◆市民に知らせたのは2カ月後

 県が手賀沼終末処理場内に一時保管施設を建設するということを4市1組合に連絡したのは2011年10月31日である。ところが、4市1組合の要望も県の連絡も、市民には知らされなかった。
 手賀沼終末処理場は我孫子市と印西市の境にある。だから、我孫子、印西両市は、松戸、柏、流山の指定廃棄物を手賀沼終末処理場に搬入することに反対した。この反対も市民には知らされなかった。
 12月2日、我孫子市と印西市はこんなことを県に言った。
 「我孫子市と印西市の放射性廃棄物(ごみ焼却灰)を手賀沼終末処理場に置かせてほしい。しかし、松戸、柏、流山の放射性廃棄物は搬入しないでほしい」と。
 これは身勝手な言い分だ。当然のことながら、千葉県は「ノー」と言った。
 我孫子市長は、どうしたらいいか、と悩んだ。そして、やっと12月20日に事態を我孫子市議会に報告した。ここではじめて、市民に状況が伝わった。それまでの約2カ月間、我孫子市は市民にないしょでそういうことをやっていた。
 我孫子市も印西市も、いまだに市民といっしょに活動するということはしていない。「市は市として独自でやる」と言う。しかし、「要望書を出した」と言ってすませている。


◆参加者全員が白紙撤回を求める

 その後8カ月くらいたってから、県が第1回の住民説明会を開いた。2012年6月9日だ。対象は、一時保管場所(手賀沼終末処理場)から200m以内の住民と地権者である。
 手賀沼終末処理場の周りは田んぼと川が多いので、住民はあまりいない。私たちが問題にしているのは、自然災害が起こった場合にどうなるか、ということだ。
 第1回の住民説明会に参加したみなさんは、手賀沼終末処理場を一時保管場所とすることに強く反対した。その白紙撤回を求めた。
 ところが、その9日後の6月18日、県は一時保管施設の建設を決定した。それを新聞で発表した。県は「説明会を開いた」と言ったが、説明会に参加した人は全員が反対した。
 9月18日の夕方、3回目の説明会が開かれた。我孫子市民が対象だった。ところが県は、この日の日中に建築確認申請を提出した。夕方の説明会では、1回目と同じく、参加者の全員が白紙撤回を要求した。
 ようするに、県は説明会を開いたという記録を残したいだけだった。内容はどうでもいい、というのが県の考え方だ。
 そして、建築確認申請から3日たった9月21日に建築工事をはじめた。説明会は一方的に説明する場であって、意見を聴く場ではなかった。


◆1万6320筆の反対署名を提出

 そこで、私たちは9月25日に広域近隣住民連合会を発足させ、白紙撤回を求める署名活動をはじめた。
 11月16日、県に1万6320筆の反対署名を提出した。12月13日には、総務省公害等調整委員会に調停を申請した。申請人は19人、弁護士は19人だ。またこの日、県に対して要望書を提出した。
 一時保管施設への指定廃棄物の搬入は12月21日からはじまった。松戸市と柏市が、指定廃棄物を一時保管施設にどんどん運び込もうとした。私たちはそれを実力で阻止することにした。阻止行動には80人くらいが参加した。3時間以上阻止したが、最後は力で押し切られ、搬入されてしまった。翌年(2013年)1月8日、流山市も搬入をはじめた。
 2013年5月31日までに、3市は計526トンの指定廃棄物を搬入した。内訳は、松戸市が52トン、流山市178トン、柏市296トンである。


◆一時保管施設の問題点

 一時保管施設は次のような問題をかかえている。
  • 放射能汚染物質は発生元で保管するのが原則となっているのに、この原則に反している。
  • 保管施設はテント倉庫だ。建築基準では、建築物は風速34m/sまで耐えるようにつくりなさいとなっている。ところが、テント倉庫の場合はそれを弱めてもいいという特例がつくられている。そのため、手賀沼終末処理場につくられた一時保管施設は、風速27.2m/S以上でテント幕が破れる設計になっている。建築基準の特例は、テント倉庫の中に危険なものを置くことは想定していない。それなのに、この特例をそのまま適用している。
  • 放射能に汚染された焼却灰はフレキシブルコンテナといわれる塩化ビニール製の袋に入れてある。「工事現場で使うものより丈夫」と言っているが、強度に不安がある。
  • 施設は、利根川と手賀川にはさまれた場所にある。我孫子市と印西市のハザードマップによれば、これらの川が氾濫したら5m以上の浸水が想定されるとしている。5m以上の浸水だと2階建ての建物が水没する。そういう危険性がある。
  • 施設から300m以内に県立我孫子東高校がある。600人以上の高校生がここで勉強している。
  • 施設は手賀沼を埋め立てた場所にある。地盤はすごく軟弱だ。大地震が発生したら、液状化の可能性がある。


◆調停で求めた事項

 調停は、最終的には、申請人が46家族52人(我孫子・印西・柏の市民)、代理人が弁護士19人となった。私たちが調停で求めた事項は3点だ。
  • 保管施設は、放射性物質を外部に漏出させない構造とする。
  • 施設が完成し、かつ、最終処分場を確保するまで搬入しない。
  • 搬入済みの指定廃棄物は2015(平成27年)3月末限りで撤去する。
 調停は5回開かれた。5回目のとき、調停委員から「具体的な保管方法として何を望むのか」と言われた。私たちは、コンクリート製の保管庫や、ドラム缶による保管を求めた。これに対し、県はこう答えた。
「国の基準を満たしているので、安全上の問題はない」
 その結果、総務省公害等調整委員会は2013年12月19日、調停不成立を決定した。
 そこで私たちは今年(2014年)1月7日、千葉地裁松戸支部に県を提訴した。


◆裁判で求めていること

 裁判で私たちが求めていることは、一時保管施設に搬入している放射性廃棄物(放射性物質に汚染された焼却灰)を撤去せよ。元の場所に持ち帰ってほしい。ただそれだけだ。原告は45人(我孫子、印西市民)、弁護団(弁護士)は22人だ。
 裁判は、これまで口頭弁論が3回開かれた。原告の意見陳述と代理人(弁護士)の弁論要旨説明だ。今年8月8日の第3回口頭弁論では、裁判官にたいして現地検証を申し立てた。
 その4日前の8月4日、県と5市(松戸、柏、流山、我孫子、印西)の会議が開かれた。その席上で県は、搬入3市(松戸、柏、流山)に対し、指定廃棄物を持ち帰る準備をしてほしいと要請した。
 私たちは望んでいるのは、放射能汚染ごみ焼却灰が搬入される前の、安心できる生活環境をとりもどすことだ。また、国の最終処分場ができるまでは、自区内保管、つまりそれぞれの発生場所で指定廃棄物を保管してほしいということである。


◆我孫子市と印西市の現状

 最後に、私たちが住んでいる我孫子市と印西市の現状をお話ししたい。
 我孫子市には、指定廃棄物(8000ベクレル/kg超)に相当する放射性物質はない。8000ベクレル/kg以下で、業者(産廃処分場)がひきとらないごみ焼却灰を56トン保管している。草木枝葉は燃やさずにチップ化し、市外の埋め立て処分場(新井総合施設の君津環境整備センター)に搬出している。
 一方、印西市には約130トンの指定廃棄物がある。それを組合(印西地区環境整備事業組合)の施設内に保管している。現在、主灰は500ベクレル/kg前後、飛灰は1000ベクレル/kg前後が発生している。主灰は組合の埋め立て処分場で処分し、飛灰は埼玉県の処分場に運んでいる。
(文責・『自然通信ちば』編集部)












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