官邸前行動は原発全廃まで続ける

〜首都圏反原発連合の小泉兵義さんに聞く〜




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 首都圏反原発連合(反原連)は、毎週金曜日に首相官邸前で大飯原発再稼働に抗議する行動をよびかけている。昨年(2012年)3月29日にはじまった官邸前行動は1年以上続いている。それも数千人、数万人の規模である。昨年6月29日は20万人が参加した。この行動について、反原連の主要メンバーである小泉兵義さん(40)に聞いた。

 従来の運動と様変わり


 小泉さんは、官邸前行動の指揮をつとめている。警察とかけあったり、カチカチカウンターを手に持って参加人数を計測したりと、いつも忙しそうに動きまわっている。反原連がかかわるデモ行進でも、指揮をてきぱきとこなしている。どこで学んだのか。
     「ユニオン(労働組合)の役員をしていたときにデモの指揮や警察対応を覚えた。素人の乱でも指揮を手伝うようになり、“原発やめろデモ!!!!!!”の現場実務の集約を担当した。反原連には、それぞれのデモでそういう経験を培った人が集まっている」
 ちなみに、ドラム隊は美術関係者やミュージシャン、イラストレーターなどが多く参加しているという。
 反原連が主催する官邸前行動やデモ行進は斬(ざん)新(しん)で、従来の運動と様変わりである。その理由の一端がわかった。


 誰でも安心して参加できる場をつくる


 官邸前行動は、@非暴力を貫く、A終了は午後8時を厳守、B原発問題と関係ない幟(のぼり)やプラカードなどは遠慮してもらう、Cスピーチは1分間以内、などのガイドライン(指針)を設けている。小泉さんはこう述べた。
     「誰でも安心して参加できる場をつくることが目的だ。大勢の人が官邸前に集まることで、圧倒的多数の国民が原発全廃を求めていることを誰の目にも見えるようにしたい」
 官邸前行動には、社会運動に無縁だった人たちも続々とやってくる。子ども連れ夫婦、お年寄り、仕事帰りのサラリーマン、学生、女性グループなどだ。そのため、マスコミがひんぱんに報じている。ガイドラインが功を奏している。
 一方、そんな行動にたいし、「生ぬるい」「ガス抜き」「骨抜き」と批判する人もいる。小泉さんは言う。
     「現時点で再稼働しているのは大飯原発だけだ。伊方原発や泊原発なども再稼働の動きがあったが、食い止めている。そこには官邸前行動が大きな影響を与えている。また、官邸前行動に呼応した抗議行動が全国各地に広がっている。脱原発を求める国民世論も大きく高まっている。こういう事実をみれば、『生ぬるい』とか『骨抜き』という批判はあたらないのではないか。『骨抜き』と言うのなら、そうでない行動を自分たちでやってほしい」
 まことに明快である。


 政治的判断能力の高さに感服


 20万人が参加した昨年(2012年)6月29日の行動では、官邸前の車道が大勢の人であふれた。そして、暴動を求める人たちと反原連の間でいさかいがあった。反原連のミサオ・レッドウルフさんは、警察指揮官車のマイクとスピーカーを使って整然とした行動を訴えた。これにたいし、一部の人々が「おまえらは警察の犬か!」と罵(ののし)った。
     「私たちが常に注意していることは事故を起こさないことだ。死傷者がでたら、行動を続けることができなくなる。参加者も激減する。だから、私たちは暴力行為や暴動をしない。暴動を起こしたい人は、別のところでやってほしい」

     「この日は一部の人たちが路上座り込みを主張した。首相官邸への突入を叫ぶ人もいた。そんなことをしたら官邸前行動を継続できなくなる。数人が首相官邸に突っ込んでも何も変わらない。原発を全廃させることはできない。闘いをそこで終わらせてはいけない。そういうことを私たちは必死で訴えた」

     「ミサオさんが警察のスピーカーを使ったのは、音量がいちばん大きかったからだ。マイクは、とっさの判断で警察からマイクを奪い取ったものだった。『警察と癒着している』という批判もあった。だが、暴動や混乱は起きなかった。大勢の人が路上を占拠したのに、一人の逮捕者もけが人もでなかった。私たちの判断や対応は正しかったと考えている」
 小泉さんの話を聞き、反原連の政治的判断能力の高さに感服した。


 事故防止の用意も周到


 反原連がよびかけた昨年7月29日の「脱原発国会大包囲」行動でも、国会周辺を20万人が埋めつくした。午後7時過ぎ、歩道と道路を仕切っていた鉄柵が決壊し、国会議事堂正門前の車道に人があふれ出た。正門前に大勢の人が押しかけた。将棋倒しも心配された。
 そうしたら、正門から少し離れた道路にドラム隊がすぐにやってきて、ドラムや太鼓を打ち鳴らしながらコールをはじめた。大勢の人がドラム隊を囲むようにして唱和した。ドラムや太鼓のリズムにあわせて踊ったり拳を振りあげたりしながらコールする人も数多くいた。群集が分散し、将棋倒しは防がれた。
     「あの日も、子ども連れやお年寄りがたくさん参加していた。国会正門前に集中しすぎると事故の危険性が高まる。そこで、正門から少し離れた場所にドラム隊を繰り出し、分散を図った」

     「じつは、私たちは事前に鉄柵の決壊も想定していた。ドラム隊も、一箇所への集中を避けるための対策として後方にひかえていた。だから、すぐに対応できた」
 反原連の用意周到ぶりに脱帽である。


 野田首相と面会


 昨年(2012年)8月22日、反原連の有志10人が野田首相(当時)と面会した。これをメディアが大きく報じた。面会には小泉さんも出席した。
     「野田首相は原発再稼働への理解を求めたが、私たちは原発全廃を強く要求した。話し合いは平行線に終わった。だが、市民団体が首相と直接話しあったのは画期的だ。数千人、数万人規模の行動を毎週続ければ首相も無視できないということを示した」


 「原発全廃まで行動を続ける」


 若者が社会運動になかなか参加しないという見方について、小泉さんはこう述べた。
     「20代の人たちは仕事や勉学、個人生活に精一杯で、余裕がない。働いている人は、残業や外回りが毎日のように続き、家に帰って寝るだけという人が多い。だから、脱原発運動にも参加しづらい。でも、30代になると仕事や生活に慣れ、ようやく余裕がでてくる。反原連の運動に参加している若い人たちも30代の人が多い」
 最後に、「官邸前行動はいつまで続ける考えですか」の問いに、「全原発を即時に廃炉行程に入らせる法整備がされるまで続ける」と明言してくれた。
 反原連の運動は日本の社会運動史において画期的なものである。日本社会が閉塞感にとらわれている中で、反原連はひとすじの光だ。そう感じている人はすごく多い。学ぶことも多い。今後の運動に大いに期待である。
(聞き手・中山敏則、2013年4月)






小泉兵義さん



2012年6月29日の官邸前行動を報じた『東京新聞』



国会を取り囲んで脱原発を訴える人たち=2012年7月29日



2012年7月29日は、国会正門から少し離れたところに「怒りのドラム隊」も集結。
ドラム隊の演奏にあわせ、大勢の参加者がこぶしを振りあげながら「再稼働反対」を唱和した



毎週金曜夜の官邸前行動は、いまも数千人の規模で続いている。
写真は、3500人が参加した62回目の行動=2013年7月12日










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