「公共事業を見直す」の選挙公約はどうした

〜伊収用委員会再開で公共土木事業を積極促進〜



千葉県政研究会




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 堂本知事は16年ぶりに収用委員会を再開することを決めた。堂本知事がこの時期に収用委再開を決めた目的は2つある。一つは、高速道路や鉄道などの公共土木事業を促進することである。具体的には、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東京外郭環状道路(外環道)、館山自動車道、東葉高速鉄道、常磐新線(つくばエクスプレス)などである。ちなみに、堂本知事は「成田空港には適用しない」と言っているが、これは眉唾物だ。
 もう一つは、来春知事選の再出馬で自民党の支持を得ることである。自民党は、堂本知事を支持するかどうかをまだ決めていない。こんどは「無党派」では勝てないと読んでいる堂本知事は、今年1月、“脱無党派”宣言をした。その心は、自民党の支持を得て、どうしても知事をもう1期やりたいということである。


■ 「用地取得の遅れで経済的、社会的損失を痛感」


 堂本知事は、収用委再開の必要性として、館山自動車や東葉高速鉄道などの用地買収が進まないことをあげている。知事はこう述べている。
 「全国で唯一収用委が機能していない本県では、つくばエクスプレスや東葉高速鉄道の建設をはじめ道路整備など公共事業の用地取得が遅れ、経済的、社会的損失を痛感していた」(千葉日報、11月19日)
 また、館山自動車については、地権者の反対で一部区間が未着工とになっているとし、「県観光の発展のためにも全面開通は不可欠」(朝日新聞、同)などと語っている。


■ 館山自動車延伸などで南房総の宿泊客は激減


 しかし、館山自動車道や圏央道、外環道、常磐新線などの公共土木事業を促進することについては疑問がある。県財政が破綻状態にあるなかで、なぜそうした土木事業の促進に血まなこになるのか。高速道路などは一体どのような効果があるのか。われわれ県民の税金を浪費し、ゾンビ企業であるゼネコンを救済したり、政治家や官僚、暴力団まがいの人間などを儲けさせるではないのか──などである。
 たとえば、常磐新線(つくばエクスプレス)は、開通しても大赤字必至である。また、館山自動車は、必ずしも県観光の発展にはむすびつかない。むしろ反対に、南房総の観光に打撃を与える可能性が高い道路である。短時間で南房総へ行けるようになれば、日帰り客が増えても、宿泊客は確実に減るからだ。

 この点は、10月29日付けの『朝日新聞』がくわしくとりあげている。同紙は、宿泊客激減に頭を悩ませている南房総の宿の状況をとりあげている。
 記事によると、東京湾アクアラインの開通や館山自動車道の延伸が宿泊客の落ち込みに拍車をかけているという。たとえば、房総半島の最南端に位置する白浜町は、一年中温暖な気候が売りでサザエやアワビが豊富な町である。かつては、半島を一周するバスツアーの中継地でにぎわい、最盛期の70年代後半には、町内に約40軒あった宿泊施設に年間約50万人が宿泊した。
 ところが1997年12月に東京湾アクアラインが開通すると、環境が一変した。南房総は首都圏の「日帰り観光圏」になってしまい、今や旅館は17軒に減った。同町で最大級の客室数を誇った「南国ホテル」も、売り上げ減で今年5月に自己破産してしまった。中規模旅館の経営者は「収入はピーク時の5割」とつぶやいているという。

 以上である。館山自動車道が全面開通していない状態でもこんな結果がでているのである。全面開通したら、もっとヒドいことになるのは目にみえている。


■ アクアライン開通で木更津市は悲惨な状態に


 このことは、東京湾アクアライン(横断道路)をみても明らかである。この道路は“夢の架け橋”と言われていた。開通すれば、対岸などから土地を求めてどっと人が来るなどということが盛んにブチあげられていた。また、この道路建設は、千葉県の産業活性化もうたい文句になっていた。
 しかし、道路が開通すると、地元の木更津市は、産業活性化どころか、経済がメチャクチャになってしまった。人口は減る一方で、「木更津そごう」「ダイエー木更津店」などは相次いで閉店である。
 アクアラインの開通後、買い物客は対岸の横浜市などに奪われてしまった。JR木更津駅前などに人の流れをもたらしていたフェリーが廃止されたこともあり、駅前商店街の閑散ぶりはひどく、あちこちの店がシャッターをおろしている。そのため、駅前通りは通称「シャッター通り」と呼ばれている。商業地としての基準地価は、4年連続で全国一の下落率である。
 アクアラインや「かずさアカデミアパーク」を見越して造成された広大な住宅地も大量に売れ残りである。開発行政を推し進めた須田勝勇・前木更津市長は借金を重ね、理事長だった土地区画整理組合の資金2億円余りを着服したとして業務上横領の疑いで逮捕・起訴され、懲役4年6月の実刑判決を受けて服役中である。

 こうした木更津市の惨状については、米誌『ニューズウィーク』(日本版、2002年11月6日号)も「不良債権にのみ込まれた街」というタイトルで大きく報道している。同誌はこんなことを記している。
 「(破産した木更津そごうの)周囲にも不況の爪跡が目立つ。シャッターを下ろしたままの店や空きビル、昼も夜もほとんど人通りのない商店街。港と向き合う小高い山の上にある新日本製鉄の社宅は取り壊され、広大な住宅地では家よりも雑草が伸びたまま放置された区画のほうが多い」
 「木更津には、日本経済のゆがみを象徴するランドマークがもう一つある。90年に着工し、97年に開通した東京湾アクアラインだ。木更津と川崎を海底トンネルで結ぶアクアラインは、当初は『夢の架け橋』と言われた。だが1日の交通量は1万台と、当初見込みの2万5000台を大きく下回り、累積赤字はすでに700億円近くに達している。開通によって商圏が広がるとの期待がはずれたことで、木更津の商業地の地価は3年連続で20%以上下落した」
 「帝国データバンク千葉支店によると、2001年にいったん減った木更津市内の企業倒産も、今年は負債総額ですでに過去最高を上回っている。(中略)倒産会社の多くは、ゼネコンの2次下請けや3次下請けといった建設業者だ。(中略)木更津で自己破産を多く扱う山田次郎弁護士は言う。『ひと昔前までは、不動産や株など本業以外の取引に手を出して負債に耐えきれなくなった会社が多かった。最近は本業の売り上げが減ってもちこたえられない企業が増えている』」


■ 選挙公約を破り、公共土木事業をゴリ押し


 要するに、高速道路などの公共土木事業が地域経済を発展させたり、県民生活を豊かにするなどというのは神話でしかないのである。莫大な借金のツケが県民・国民に回ることや、自然環境や住環境の破壊などを考えれば、デメリットのほうがはるかに高いといわざるをえない。房総半島では、高速道路などの大型公共土木事業はもういらないとはっきり言いたい。

 米週刊誌「タイム」アジア版はかつて、「日本は“公共事業中毒”にかかっており、“建設事業国家”との異名も持つ」と報じた。また、米紙ニューヨーク・タイムズは、「日本の破産への道は、公共事業で舗装されている」と書いた。この言葉は、ムダな公共事業を推しすすめている日本は、財政破綻や国家破産に突き進むしかなかろう、という痛烈な風刺と警鐘だった。

 国内でも、公共土木事業の見直しが叫ばれている。堂本知事も、公共土木事業の見直しを選挙公約に掲げて当選した
 ところが、知事に就任すると、コロリと豹変して高速道路や鉄道新線などの大規模開発を積極促進である。それも、収用委員会を16年ぶりに再開してまでゴリ押ししようというのである。厚顔無恥のとんでもない人物と言わざるをえない。
 堂本知事を「環境派」とか「改革派」「市民派」などと評価している人たちは、目を見開いてよく見てほしいと思う。

 最後に、圏央道もまったくムダな道路である。この点については、「圏央道(千葉・茨城区間)は不要!」をご覧いただきたい。

(2004年11月)   








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