博物館・美術館の苦境打開の道

〜「冬の時代」を春に変えるために〜


新井博行





 「盤洲干潟と上総博物館で木更津市の地域おこしを」で県立上総(かずさ)博物館は運営方法などを抜本的に改善すべきと書かせていただきました。


●多くの公立美術館が苦境に立たされている

 この点は、ジャーナリストの大宮知信氏が、「美術館の苦境に見る日本の文化力」(『草思』2005年7月号)で述べていることが参考になると思います。
 大宮氏は、多くの公立美術館が廃止(閉館)の危機にたたされているとし、こんなことを書いています。
     「『美術館冬の時代』と言われている。入場者が減少しているところへ運営している自治体の財政難で企画展や作品購入費などの予算が削られ、多くの公立美術館が苦境に立たされている」


●一部の現場学芸職員の努力で何とか現状維持している

 たとえば、静岡県立美術館についてこう記しています。
     「今年3月末に出た評価報告書によると、静岡県立美術館は『県庁の、県庁による、県庁のための』施設でしかなく、通信簿を作っても役人だけでは見直しはできないだろうという」

     「(歴代館長は名誉職、研究のみで経営しなくてよいということで言い渡されてきた(これは県庁側が悪い。県の『規則』に違反)。歴代副館長は天下りの順送り人事。短期の任期で美術の素人ばかり。実のところだれも展望をもって経営してこなかった」

     「一部の現場学芸職員の努力で何とか現状維持しているという状況だ。美術館協議会は民間有識者を集めているが、ただのアリバイ会議。年に1回か2回開かれるだけで、あってもなくても同じ。地域と隔絶し『県立』を言い訳にあまり近隣住民と付き合わない。結果的にはマーケティングも怠っているのではないか――というのが報告書の要旨である」

 これは上総博物館にもかなりあてはまるように思います。同館も、一部の現場学芸職員の努力で何とか維持しているのではないでしょうか。また、同館に設けられている「上総博物館協議会」は、実態として「アリバイ会議」となっているのではないでしょうか。



●建物を作ることには熱心だが、中身の充実は不熱心

 大宮氏はこんなことも書いています。

     「美術館離れは無責任に入れ物だけを作り続けてきた行政のツケが回ってきたということだろう。財政的に余裕がなくなると、まっさきに経費削減の対象になるのが美術館や博物館などの文化予算である。選挙の票と直接結びつかず、議員の利権にもならないからだが、いまからでも遅くはない。豪華な庁舎(都庁舎や県庁舎など)を売り払って、浮いたお金を福祉や文化など本当に必要としているところに注ぎ込んだらどうか」

     「それにしても今ひとつ美術館を支援する機運が盛り上がってこないのはなぜか。一つはクオリティの問題。やっぱり中身が乏しいのである。(中略)建築費に金をかけすぎたために、肝心のコレクションや美術館の活動に回すカネがなくなったという本末転倒のケースもある」

     「公立美術館は建物を作ることには熱心だが、中身を充実させることには不熱心だった。(中略)日頃住民サービスの向上を言っているくせに、東京都現代美術館をはじめ公立美術館の多くはおそろしく不便なところにあり、気軽に見に行こうという気にならない。足の便が悪くて行き来くいところに建てる無神経さ、サービス精神の欠如が『美術館冬の時代』を招いた最大の原因ではないか」



●NPOやボランティアに運営を任せることも必要

     「ではどうすればいいか。公立美術館を復活再生させるには、組織のあり方、美術館の体制を変えない限りどうしようもないと上山氏は話す。『こうした役所直営ではもはや復活再生は不可能だ。組織のあり方、経営体制を根本から変える必要がある。ルーブル美術館にも行ったことがないような役人に美術館の運営はできない。従来のような天下り財団ではなく、NPOや美術に詳しいボランティアに運営を任せるなど、公立美術館も何らかの形で自立性をもたせた組織にしたほうがいいだろう』」

     「美術館の建設がブームになったとき全国各地に美術館があまねく分布する『美術館時代』の到来と騒がれた。所詮成金の道楽。バブルの崩壊とともに道楽は破綻をきたした。日本は文化国家、経済大国だなどと威張っているのは政治家や官僚ぐらいで、日本の国力、財力、文化力なんてこの程度だということだろう。現代アートの美術館すらまともに運営できないのだから、経済大国が聞いて呆れる。美術館の苦境は、図らずも日本文化の底の浅さを証明していると言えるのではないか」

 大宮氏らが美術館について指摘していることは、そのまま博物館にあてはまります。博物館も、運営に市民団体やボランティアの活力を取り入れるなどの抜本改革をすすめることが必要です。そうでないと、「冬の時代」を春に変えることは不可能です。
 この点では、「千葉県立博物館構想に関する県民提言」をぜひ参考にしてもらいたいと思います。


●美辞麗句で県民をだますのはやめて!

 千葉県はいま、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)や東京湾口道路、東京外かく環状道路、北千葉道路、成田新高速鉄道、常磐新線沿線開発などの従来型の大型開発を重点的に進める一方で、県立高校を何校も減らし、博物館の廃止も検討しています。
 それなのに、広報紙『ちば県民だより』(2005年7月号)では、「新たな“ちば文化”の創造」とか「地域特性を活かした文化づくりに取り組みます」などということを大々的に宣伝しているのです。
 「美辞麗句で県民をだますのはやめて!」といいたくなります。

(2005年7月)   





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