■書籍・書評


本澤二郎著『腐臭列島 房総半島の闇』


開発問題研究会



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・著 者:本澤二郎
・書 名:腐臭列島 房総半島の闇
・発行所:データハウス
・価 格:1500円


 本書は今年(2001年)1月に刊行された。ゴルフ場開発申請をめぐる中小業者と県とのやりとりなどを元ジャーナリストの本澤氏が取材し、千葉県政がいかに腐敗し、利権まみれになっているかを、具体的事実をあげて明らかにしたものである。


●「ゼネコンと癒着した県が、中小業者 のゴルフ場開発計画を押し潰す」

 1987年、安房郡丸山町に「嶺岡カントリー倶楽部」という名の会社が設立され、ゴルフ場開発が計画された。会社の設立者は市川市の中小建設業者である中山茂樹氏である。同社はこの年、県に対してゴルフ場建設許可のための事前協議を申請した。しかし、県がつぎつぎとクレームを出したために、同社はこのゴルフ場計画をあきらめざるをえなくなり、中山氏は大損をした。著者の本澤氏はそのいきさつをくわしく書き、つぎのように記している。
 「単純に外形だけをみると、これは利権に走った町民と業者の暴走に対して、緑を保全する県が待ったをかけた見事な成果とうたい上げられそうである。しかし、実態は全く違う。千葉県・房総半島の貴重な自然は千葉県の怪しげな行政によって、100を超えるゴルフ場乱開発で既にズタズタに切り裂かれハゲ山のようになってしまっている。歴代の千葉県知事は、自ら率先して利権あさりをしてきたとも指摘されている。巨大腐敗の中心人物として君臨してきたとすら決めつけられかねないのだ。知事だけではない。中央政界の実力者、地元の有力代議士、有力県議もまたゼネコンのばらまく金を懐に入れていたのである。おぞましいことにその一部は暴力団にも流れていた。」
 中小業者の中山氏は、「ゼネコンや大手商社に操られる千葉県行政から徹底していびられ続けた。その結果、決定的とともいえる痛手を受けた」。その最大の理由は、ゴルフ場開発の手法が通常のゼネコン方式とまったくちがっていたからだという。工事資金は、ゼネコンによるものと比べて2分の1から3分の1の安さである。もし、こうした中山方式が認知されると、ゼネコンはたいへんな打撃を受ける。さらに、中山氏は、政治家へのリベートなど、賄賂もいっさい使わなかったが、これはゴルフ場開発で多額のリベートをもらっていた政治家にとっても脅威であった。こうしたことから、ゼンコンの意向を受けた県幹部などが中山方式の開発計画を断念させたのだという。
 この点について、著者はこう書いている。
 「中山は県や議会、国会議員への賄賂工作を拒絶し、公正なルールに乗って事業を推進してきた。元建設相秘書の弁を借りると、正にそれゆえにゴルフ場建設計画は押し潰されてしまったのだ。正直者ゆえにバカをみたのである。」


●「大手土建屋と不動産屋に乗っ取られた千葉県庁を徹底分析」

本書の宣伝文句は、「大手土建屋と不動産屋に乗っ取られた千葉県庁を、初めて徹底分析」である。この文句のとおり、著者は、中山氏や県幹部OBなどの証言をもとにし、腐敗や利権の実態を数多くあばいている。一部を紹介しよう。
  1.  バブル経済が崩壊するまでのゴルフ場建設はおいしい利権のひとつであり、有力政治家には多額の利益(リベート)が確実に約束された。また、工事を担当するゼネコン、建設資金を融資する銀行、ゴルフ場経営者の3者に莫大な利益をもたらした。
  2.  強大な権限をもつ県知事に対する業者からの裏金はたいへんなもので、金はいくらでも集まる仕掛けになっている。その結果、知事は私産を天文学的にふくらませている。
  3.  県知事側近幹部は、料亭に仲間を呼び、血税を湯水のように浪費し、接待に明け暮れていた。
  4.  県環境影響評価審査会の委員は、“県の意向に従順な学者たち”によって占められている。
  5.  大手ゼネコンは、ゴルフ場用地を獲得する際、暴力団をよく使う。首長、議員、地元有力者を買収して、根回しの先頭にたてるが、それでもラチがいかない地権者にたいしてはヤクザをむけるのである。
  6.  市原市に計画されたゴルフ場開発を中山氏が請け負い、苦労して用地買収をまとめあげたところ、ゼネコンの熊谷組が造成工事から設計までを横取りしようとした。それを拒否したところ、熊谷組の意向を受けた県農林部長が、「熊谷組の言うことを聞かなければ、中山に関わる開発申請は認めない」と脅しをかけた。そこで、「農林部長がそんな脅しを言っていいのか。告訴するぞ」「やるならやってみろ」と、二人の間で大ゲンカになったという。これについて著者は、「非はあげて農林部長にある。こんなことが通用する千葉県庁とは一体、何だろう。沼田人事に問題ありだ」と書いている。

 以上のほか、三井不動産と県政の癒着についても、かなりくわしく述べている。友納武人元知事は、三井不動産から3000万円の選挙資金をもらって知事のポストを手中に納めた。以来、友納と三井のコンビは、房総半島の自然を破壊しまくり、巨額の利権や利益を手にした。このコンビは「友納の後継者」である沼田知事にもそっくりひきつがれた。県政と三井との癒着について、著者はつぎのように述べている。
 「いってみれば、友納は三井の操り人形でしかなかった。三井が千葉県利権、主に東京湾埋め立てによって天文学的な利益を手にした理由である。」
 「東京湾の巨大かつ広大な埋め立て事業は、ことごとく三井によって強行され、房総の貴重な自然を奪い去った。友納と三井の後世に残した恐ろしいほどのマイナスの“成果”といっていい。」
 「三井と友納の深い仲は、今日の県政にも継承されているのである。元ジャーナリストの言を借りるならば、三井は3000万円で千葉県の埋め立て利権を買いとったことになる。」
 「“三井の友納”は、“三井の沼田”へと継承される。千葉県が環境保護の潮流に反して、埋め立てに突進する真因は、全てこの一点に尽きるのである。」


●「汚職構造を継承するような知事の誕生を許してはならない」

 本書を読んだ知人から、「千葉県政がずいぶんひどいことを知り、ショックを受けた」という感想を聞いた。しかし、この本がとりあげていることは、県政をめぐる利権や腐敗のほんの一部でしかない。著者は、知識人やジャーナリスト、県民の無関心が、不正と腐敗の政財官ゆ着を許しているとし、勇気をもって無関心から脱却することの大切さを訴えている。また、今年春におこなわれる知事選について次のように言っているが、まったく同感である。
 「千葉県民も先の長野や栃木県民の投票行動に学ぶ必要がある。汚職構造を継承するような知事の誕生を許してはならない。不当な行政と腐敗談合のゆ着を容認するような知事を選んではならない。」
 これまでとりあげられなかった闇の世界を分析した本書は、称賛に値する。千葉の行政や政治、環境などを考えるうえで、多くの人に読んでほしい一冊である。
       

(2001年2月)  






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