興味!ヒドラの生態
H12.4.22
札幌旭丘高等学校 杉山剛英
1.はじめに
ヒドラとはギリシャ神話に出てくる9つの首を持った海蛇の事で切っても切ってもすぐ生えてくる不死身の化け物として登場している。そして淡水に生きる体長1cm足らずのヒドラも細胞単位にバラバラにしても復活するという不死身の体を持っている。普通ヒドラというとエヒドラの事を指しており、北海道,東北の池に生息している。ヒドラはオランダのレーウェンフックによって1702年に学会に登場し、1742年にトレンブレーによって詳しく調べられている。飼育が簡単で、出芽,補食,卵の形成,移動の様子等、非常に興味をそそる生物教材である。ぜひ、自宅でも飼育してみたい生物である。
2.ヒドラについて
通常、ヒドラといっているのはエヒドラで、北海道から東北の湖沼や川に生息している。散在神経系の例として有名だが、口腔付近に2種類の神経細胞がある事がわかっている。大きさは1cm足らずで、シャジクモの節間細胞と同程度の大きさであるが、細胞数は数万程ある。触手にはクラゲやイソギンチャク同様の神経毒を持った刺胞があり、ミジンコなどは1秒ほどで絶命する。まれに触手を振り切るものもあるが生き残ることはできない。刺胞は触手にらせん状に配列している。触手をある程度伸ばすとわかる。ヒドラ自体は不死身で古い細胞は神経も含めどんどん置き換わる。基本的には出芽による無性生殖だが、水温が急激に変化{8℃位}すると異変を感知して雌雄にわかれる。卵巣と精巣を体表に作り受精卵を雌の体内に残すが老化しいずれ死ぬ。できた受精卵は乾燥に耐えるが孵化する日数は13日〜100日とバラツキを示す。これは一度に孵化して悪条件であった場合に絶滅するのを回避する知恵である。餌が捕まえられない時は尺取り虫の様に移動する。あるいは気泡を付けて浮き上がる。出芽で出来た新個体も一度水面に浮く。同じ場所に留まらないようにする知恵である。10億年生き続けているのは伊達ではない。
グリーンヒドラという少し小型のヒドラが京都科学で販売されている{20匹で¥9600}。これは体内にクロレラを共生させている緑色のヒドラで、飢餓に強いが飼育は難しい。小さなミジンコしか食べられないので海生の小型ミジンコであるアルテミアを用意する必要がある。触手の毒の強さ{刺胞の働きか?}は一定ではない様で、栄養が足りてる時はえさを取らない様である。私も20匹飼って、1週間で1匹しか生き残らず、真っ青になったが{¥9600が−−}何とか50匹に盛り返したが、99年の夏の暑さで絶滅してしまった。現在はやっと購入できた電気低温定温器で19℃に設定してエヒドラを飼育している。一時5匹までに減ったが現在数百匹になってこちらが真っ青になっている。えさが足りない・・・・
グリーンヒドラ{体長5mm}
移動の様子
3.入手・飼育方法
自然のものは湖沼や川の落ち葉や枯れ草の溜まっている所のものを丸ごと引っ張り上げて水槽に移し、かき混ぜると数時間でヒドラがガラス壁に張り付いてくる{北広島西高校遠藤孝一先生より}。発見が難しい場合は教育センターや飼育している学校からわけてもらう。または京都科学から購入する。基本的飼育法は小瓶に入れ1日〜2日に1回ミジンコを与え、直射日光をさけて静置することである。室温でよい。水は2日以上置いた水道水を使い、3日に一度はかえる。その時、びんを熱湯消毒するとよい。エアレーションはしなくても良いが、するなら弱くする。ビンに藻などが付着したらすぐにヒドラを別のビンに移す。元気なヒドラは触手を体長の5倍以上伸ばす。また、全滅しても卵を残している場合があるので、しばらく保存しておくと良い。どんどん出芽し調子が良いと5日で2倍に増える。えさのミジンコの量と相談しながら飼育しないとヒドラの人口爆発で食糧難に陥る。水が合わない場合はどんどん小さくなり触手を伸ばさなくなる。大抵は水道水中の残留塩素に原因がある。国産のミネラルウォーターも使ってみるとよいかもしれない。
補食の様子

4.観察ポイント
2日以上えさを与えていないヒドラを小型シャーレに数匹入れて生徒に与える。双眼実体顕微鏡でなくても10倍のルーペで十分観察出来る。{中村理科1500円,口径19mm}。また、小型シャーレに入れて顕微鏡で覗くと刺胞がはっきり見える(星園高校,松井洋先生より)。
・衝撃を与えると触手と体を縮める
・出芽しているところをよく見よう。ある程度大きくなると出芽の状態でもえさを食べる。
・伸びている触手と縮んでいる触手の違い
・刺胞のらせん状配列{伸びている時と縮んでいる時の違い}
・捕まった瞬間のミジンコの様子,運が良ければ突き刺さった毒針が見える
・口に運ばれていき飲み込まれる様子
・ヒドラの体内のミジンコの黒い眼がわかる
・消化には数時間かかるのでビデオに撮って見せるとよい
・消化されたミジンコの棒状の残骸
5.生徒の様子
最初は気持ち悪いとか言っているが、触手の見事な動きと体の滑らかさ、ミジンコ補食の残酷物語も、こんな小さな世界にも食物連鎖があると感心していた。1時間、熱中して観察できる教材である。畏れおおくも、昭和天皇陛下もヒドラの研究をなされていたそうである。
6.参考文献
週刊朝日百科・動物たちの地球61号{朝日新聞社}