サイエンスとの共生を求めて
アトリエ はし
 Searching for the Symbioses

「サイエンスと私」
                       
橋本 勝

 拙作には建物・都市や機械、さらには電子部品など数々の構造物が登場しますので、それをご覧戴いた方々から「橋本さんは設計のお仕事をされていたのですか?」と尋ねられることが多くあります。また「このようなテーマは珍しいですね」というお言葉もいただきます。

 そのご質問には「いいえ、設計の業務とはまったく関係ないのですよ。材料分析業務をやっていました」とお答えしていまいりました。

 このたび、中央美術協会広報部(セントラル編集部)から「橋本作品のテーマについて」のお尋ねがありましたので、上記のご質問へのご回答も兼ねて、若干のご説明をさせていただきます。

 拙作のテーマについて簡潔に表現すれば、「私は、かねてから現代生活とサイエンスとのかかわりに興味を持ってきました。それはサイエンスへの挽歌ではなく、賛歌という視線からです。サイエンスの中に発見する美を通じて現代社会との結びつきが描けたらと思っています」ということになります。(…………これは私のホームページ‘アトリエはし’の冒頭に記載した文章です。)

 私の出自は‘材料分析屋’です。昨今の社会生活の加速度的進展は金属、半導体、プラスチックなど材料分野での研究開発の成果によるところが大きいことはご承知のことと思います。私は永年、これらの材料の研究開発に不可欠な材料分析業務に携わってきました。このため電子顕微鏡などの観察画像や分析装置からアウトプットされる各種データなどの美しさ、さらには分析機器の構造物としての機能美、つまり現代のサイエンスの中に存在する‘美’に接してきました。

 また私は当然のことながら、現代のサイエンスを肯定する立場に立っています。対極には現代社会の病巣を構成する要因の一部に現代の科学があり、それを糾弾する手法として絵画を用いるという立場がありますが、私はその立場にはありません。

 私は「人間社会とサイエンスとが共生している」シーンを‘メカニズム絵画’として表現したく制作しています。そして、当然のことではありますが、その画面から漂う雰囲気の解釈はご覧いただく皆様お一人お一人に委ねたいと思っています。

 つまり、「サイエンスと現代社会との共生」が私のテーマなのですが、皆様にはどのようにご判断いただけますでしょうか? どうぞ、拙作に関してのご意見、ご批評を賜りたくお願い申し上げます。

上記の文章は中央美術協会 機関誌「セントラル」 通巻139号(2009.7.31)に掲載したものです。

 


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