最近読んだニュースから(2007年10月分)  

保険の銀行窓販(2007/10/28更新)
保険事業の活気喪失(2007/10/21更新)
保険給付金の不払い(2007/10/14更新)
保険比較広告(続々)(2007/10/07更新)


○ 保険の銀行窓販

   ゴルフにはゴルフ場ごとにローカル・ルールがある。各国の保険市場においてもそ
   の整備・発展等の状況が同じでないから、規制について適切なローカル・ルールが
   あるべきではないか。規制のグローバル化を考える前にも、我が国の保険市場にと
   ってまず最適・最善な市場のルールを求めるべきではないか。生命保険市場はドメ
   スチックなものであるだけに。
 保険の銀行窓販は、我が国の保険市場において画期的なことである。生保会社にとって
将来の運命を決めかねない。それだけに、監督面でも特別な監視と規制が必要であること
を考慮すべきである。銀行窓販について、新たに監督指針が出されるようだが、消費者の
ニーズ・懸念に適合した規制であることを求めたい。
 それにしても、銀行の保険代理店による販売とは言わずに、銀行窓販という言葉を使用
しているのは何故か? 銀行の店舗内に、保険商品を勧誘する専門の窓口を想定している
からなのか。
 銀行による生命保険商品の販売問題が出たのは、私が大蔵省の保険一課長のとき、ある
大手生保が系列の信託銀行の店舗で販売したいがどうであろうかと問い合わせがあった。
その時は、保険募集取締法による問題や独立な販売窓口(ファイヤウォール)の設置の問題
があるのではないかと断った。信託銀行との間で話し合いが大分進められていたようで、
非常に恨まれたと思う。
 銀行窓販は、保険会社の利益になるだけでなく、銀行の収益になるものであるから、金
融危機の際には保険商品の窓販による手数料稼ぎを狙っていたようだ。まだその頃は、保
険独自の販売網が強かったから、生保会社の方も、あまり乗り気にならなかった。ところ
が生保募集人の数が大きく減少してゆき、新契約高が期待するほど伸びなくなってから状
況は変わってきたと推測する。
 特に、専業募集人の組織整備が弱体な新規参入の外資系会社は、2002年の定額年金、
変額年金を中心とする第二次解禁以降、銀行の窓販に大きな魅力を感じてきたようである。
そこで激しい販売手数料競争が起こり、無茶な高率手数料(顧客の負担)を銀行に支払う外
資系会社が業績を伸ばしてきたようだ。
 保険の銀行窓販問題で、自民党の財務金融部会と金融調査会の合同会議は10/22日に、
銀行での定期保険や自動車保険、医療保険等保障性商品を含めた全保険商品の窓口販売に
ついて、予定通り12/22日に全面解禁することを了承したようだ。自民党の金融調査会の
幹部会が10/16日に開かれ、金融庁が契約者保護策を一層強化することを条件に、予定ど
おり12/22日の全面解禁を容認することを合意した。
 自民党の金融調査会は、金融庁が全面解禁に当たり銀行と保険会社が適切な顧客保護を
図っているかをチェックすることを監督指針に盛り込むなど、顧客保護策を提示したこと
で自民党も理解を示し、全面解禁を予定どおり実施する見通しとなった。監督指針の改正
のポィントは10/23日付の産経紙に記事があるけれど細かな点は分からないが、私に言わ
せれば、少なくとも、保険会社が銀行に支払う手数料(投資信託などと比較して相当に高
い会社がある)の規制が含まれているのか、また生保の医療保険の加入層は高齢者になっ
ていると思われるので、恐らくクーリングオフの制度の対象外になっているならば保護の
対象とするだけでなく、適用条件を大幅に緩和することを考えてはどうかと思う。
 外資系生保にとっては、銀行窓販の全面解禁は大きなビジネスチャンスであると受け止
めて意欲的であるに対し、国内生保は医療保険を中心とした第三分野商品は稼ぎ頭だが、
最近は販売一巡で頭打ち感も出てきていると感じており、全面解禁を機に保障性商品の販
売を盛り上げたいと考えているようだ。
 とにかく、地方は別として、大都会は営業職員の活動が衰退(?)しているので、銀行窓
販は営業促進の大きな手段となるから、今後、各生保会社の陣取り競争が熾烈になると予
想される。それだけに消費者保護の観点から、金融庁は弊害が出ないよう、きめ細かく監
視する必要があろう。
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○ 保険事業の活気喪失

伝統的な会社の生命保険事業が金融バブル時には相互会社の株式会社化あるいは相互会
社の持株会社化を通じて事業の国際化・多角化を目指していたのが、金融破綻後は急速に
元気・活気がなくなってしまった。その理由は何なんだったろうか? 外部にいる私には
正確なところは分からない。活力が無くなった一つの理由は、膨大な規模の含み資産が急
速に消滅してきたから、また多くの生保会社が破綻してきたからではないか。資産(主と
して株式・不動産)の含み益は、株主のいない相互会社にあっては契約者のものであるが、
実態的にはそれを生み出すのに努力した経営者・職員のものであるという意識が強かった
のは事実である。その含みが消えようとしたのだから、特に経営陣をはじめ職員の志気が
萎縮したてきのは事実であろう。
 そこで取った対策はリストラ(これが保険金の不払い問題の発生に繋がったかも知れな
い)であり、契約者配当の縮小やトンチンまがいの配当であった。資産運用利回りの低下
による逆ザヤの発生は不足責任準備金の存在となり、それを積み立てて解消しないまま現
在に至り、一方では、最初からおかしかった算定基準によるソルベンシー・マージン比率
は途方もない高水準を示したまま放置されてきた。生保経営の基本的なソルベンシーの確
保を放置して、この責任準備金不足状態を監督官庁が強制的に解消を迫ることをしないの
は、無税で責任準備金の正常化を図ることが出来なかったからかも知れない。
 放置してゆけば自然と正常な財務状態に回復すると、もし監督当局が安易に考えている
とすれば、それは無責任である。しかも一方では国際会計基準の審議が進み、我が国も負
債即ち責任準備金を時価基準にして国際化を図ろうと監督当局が考えているならこの不足
責任準備金の存在は許されないことになる。しかしそれには、法人税との関係を整備し正
常化する必要があることを忘れている(?)からではないか。 ソルベンシー・マージンの
正常化の問題も緊急であるが、特に法人税法上の扱いを整備する必要があろう。もっと基
本的には、責任準備金へ時価会計の導入は、法人税の問題を解決しておかないと机上の空
論になろう。さて誰がアプローチするのであろうか。
 一方でこの期間に、外資系会社の進出が活発化し、逆ザヤという負の遺産を持たずに、
また低金利による影響が少ない医療保険(計理的には定期保険に類似した性格を持つと思
うが?)を武器に、日本における保険市場を席捲してきた。テレビ広告を見ても誠に華々
しく、伝統的な生保会社のテレビ広告は影を潜め(最近少しずつ放映されてきたが)、外資
系の積極的な広告が世の中に氾濫してきた。監督当局の規制緩和をもろに享受して、問題
な設計、保険料の構造の曖昧化(自由化)が目立つようになってきたと思う。そして伝統的
な生保会社のような膨大な外野組織を整備せずに、通信販売に傾斜し、また銀行窓販に積
極的な姿勢を示している。
 死亡保険のニーズが頭打ちになり、新しい保険分野である医療保険に各社が積極的に参
入してきているが、もうこの分野への普及が頭打ちの状況に近づいてきたと思われる。
 この様な保険市場の状況を受けて、誰も発言していないが、保険業法上の外資系会社へ
の規制を再検討することが緊急な課題として浮かび上がってきたと私は信じる。それは何
か。私の古い(?)知識に依れば、ニューヨーク州における保険局の規制が参考になると思
うが如何か。
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○ 保険給付金の不払い

 いまの時代は消費者迎合の時代である。消費者であるだけで、その行動は善であると擁
護される時代のようだ。その反対に、官僚や大企業や金持ちであるだけで悪であると決め
つけられ、また弱者は弱者であるだけで清く正しいと決めつける。
 テレビでも新聞でも、問題が発生したとき、この方向で記事や論説を展開しているよう
だ。生保の保険給金不払いの問題も同様に、すべてこの方向で断じられ、大きな見出しで
「契約者の不信増幅」と断じている。保険会社はたまったものではない。
 保険給付金の不払い問題が初めて摘出されたのは、05年2月に金融庁が明治安田生命
に対して業務停止命令を発したのが最初であり、その後7月に金融庁が生保各社に対して
1回目の不払い調査命令を出し、10月に不払いで明治安田生命に2回目の業務停止命令を
出し、また12月に生保各社が追加の不払い調査に入った。今年になってから2月に金融
庁が生保各社に2回目の不払い調査命令を出した。その調査結果を10月5日に各社が発
表し、不払いの金額が38社で910億円だという。
 保険契約上、給付金の支払いは伝統的に顧客の請求により支払うとされているのだから、
保険会社側は不払いは顧客の怠慢によるものだと考えていたのが、それは間違いであり、
保険約款は読みにくく難解であり、それを顧客が読まないからと言って、保険給付金が不
払いになった責任を顧客に課しているのは通らないとするのが金融庁の方針であり、現代
社会であるようだ。しかし請求主義という原則は、絶対的・恒久的に正しい原則とはいえ
ないだろう。膨大な契約件数を抱える生保会社にしてみれば、請求によって初めて保険事
故の発生を知るのが実態であったのを逆転するには、契約の管理・維持体制を大幅に改革
しなくてはならない。これを知らされたのが、膨大な費用をかけて実施した今回の不払い
調査である。とにかく、保険給付金の支払体制に変更を求めることが分かったのは、これ
でもかこれでもかというように、多岐多様な種類の保険給付を付けてきた医療保険の発売
と変貌・宣伝であり、それに相応した契約の管理体制の整備が伴わなかったからである。
 そもそも生保会社における契約の管理体制(保険給付の支払い体制を含む)が遅れてお
り、そこの部署に配置された職員は立身出世コースではなかったことも見直さなくてはな
らない時代になった。
 今回の調査発表では失効返戻金の不払いという付随したが本質とは異なる問題が生じて
おり、これを不払いに含めるかどうかで各社の対応が分かれていると報じている(10月6
日付毎日新聞)。日本生命が5年分の30万件、明治安田が01年分の4万5千件を不払い
にしたが、第一と住友生命は「請求案内を十分にやった」として調査対象から外していると
いう。さらに昔から言われてきた架空契約の存在を表に出すかどうかで対応が分かれてい
るようだ(これなどは金融庁が事前に調整しておくことが望ましかった)。架空契約に関す
る不払いは昔から存在し、営業職員の給与システムに関係するもので、それにどう対処す
るかは今回の不払い問題とは本質的に異なるから、分けて別途処理した方がよいのではな
いか。けれど、新聞報道によると金融庁は、失効返戻金など調査が不十分な生保には追加
調査を求める方針だという。いやはや、不払い問題を、これからも金融庁は華々しい仕事
の成果として置きたいのだろうか。
 なお、保険給付金の種類別に、要支払金額に対する不払いの割合等の統計数値が分かる
ようにしたら問題の細部が明らかになると思われる、と私は考える。また今月から金融庁
の管轄下に入った簡易生命保険には、同じ様な問題が発生しているかどうかを知りたいと
思うがどうか。
 今回の調査結果を行政処分命令以外に、保険の監督行政に、行政のプリンシプルとガイ
ダンスにどう反映するかを、シッカリと検討して整備すべき段階に入っていると思うが如
何?
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○ 保険比較広告(続々)

 保険の比較広告は難しい。私は実際に比較をやったことがないけれど、実際にやってみ
ると難しいことが分かるだろう。各社は、保険監督法の規制緩和の影響を受けて、自社の
商品の有利性を出すよう、従って他社からの商品比較が出来にくいように創意工夫してい
ることが問題の背景にある。
 手に入れた監督指針を読んでみて、商品の比較がどの程度顧客のニーズが高いのか分かる
としても、指針が比較問題に的確に答えているかどうか疑問である。顧客は自分に関心の
ある特定商品が、他社の類似商品と比較して本当に優れているかどうかを知りたい気持ち
を抱くことは理解できる。各社はその商品を市場に提供するとき、自社及び他社の類似商
品と比較して、いままでより顧客にとって保険サービスが改善されているか、新たな特徴
が付加されていると判断していることも、他者による商品比較の難しさを加速している。
 インシュアランス生保版10月号第一集に「3協会、第2回保険商品の比較討論会」が開
催され、その発言の概要を紹介しているのを読んだ。損保協会・生保協会・外国損保協会
が、9月20日に開かれた「みんなが主役、保険商品の比較に関する自由討論会」を共催し
て、事前に発言を希望していた参加者五人による意見と、それを受けて会場から参加者の
発言内容要旨を掲載しているが、この問題は保険ビジネスの方向に直接影響を与えるだけ
に、この討論会からはどの様に解決するかの方法は見えていない。
 ある消費者は、「商品の特性が多様化し、消費者自身にあった保険を選択できるかは難
しい。現在の契約概要を各社並べて比較し、読みこなすことは困難で、論外である。誤解
させない比較の在り方としては、商品をシンプル化すること、消費者に保険知識を付けさ
せることで。その上で比較する方向に行くべきである」と述べ、また比較情報提供者は「保
険会社は分かり易い商品を提供し、ディスクロージャーをどうするかについて、どのよう
なデータを提供するか道筋を議論すべきである」と述べている。
 しかし何れも直接的な解決方法を見いだせないままにいたけれど、一つまともなものは
学識者の意見である。「公正な第三者として比較できるのは、能力的・権限的には監督官
庁だけであろう。比較情報の在り方としては、契約概要と保険料率の相関関係を比較しな
くては不適切な比較となる」と、私にはこれが一番まともと思われる意見を述べている。
 監督官庁は監督指針を書く以上、自らお手本を示すような気持ちがなければ、比較情報
の作成者は現状では尻込みするばかりであろう。けれど、監督官庁としてもお手本は作成
できないであろう。しかも、学識者の言うように契約概要と保険料率の相関関係を比較す
るとなると、恐らく出来ないであろう。
 保険の比較情報において保険料率の持つ役割は非常に重要である。顧客にとって保険給
付の差異だけの比較では不十分であり不完全である。しかし昔と違って保険料率の構成な
り算定方式は各社の秘密事項のようであるから、それを商品比較に保険料率を持ち込み解
析することは困難であろう。しかも医療保険の各給付の発生率は大きく変動している。例
えば入院給付は平均入院日数が著しく低下していることにより、原価は低下できることに
なるから、ある商品の入院給付の日数上限を高く改善(?)したといっても、保険料は高く
しないで済ませることが出来よう。さらに医療保険の原価は3割前後と極めて低いことも
見逃してはならない。
 私は、医療保険の商品比較には、解約返戻金と契約者配当の有無は重要な要素になると
考える。けれど現状では、この両者とも殆どが無いから、商品比較では無視しているのは
極めて遺憾である。
 そこで商品比較方法の当面の第一歩として、保険給付とその支給内容を各社の実際の商
品とは異なる「標準的な商品」に特定し(一つでなくても良い。給付対象とする疾病の大分
類に応じて複数の商品でも良い)、その保険料を各社の保険料率算定方法により算定させ
て金融庁が発表し、それを比較することにより、顧客は料率算定結果の高低を判断できる
ようにする。
 解約返戻金、契約者配当の有無を反映するためには、比較する保険の経過期間を10年
とか20年に限定して、解約返戻金等を反映させることは是非実施すべきである。なお最
近宣伝している健康祝金等は、解約返戻金とは異なるものであるから算定項目から除外す
る。
 とにかくこれができるのは監督官庁しかないので、監督官庁は実施して監督審査の現場
に反映すると同時に、一般へのディスクロージャーはその後で別途考慮するようにしたら
どうか。
 なおこの他に、誰が商品比較を作成し、誰が比較するか、外部の第三者が作成したもの
を入手して販売に利用できるのか、比較情報の中にソルベンシー・マージン比率を入れる
のか等の諸問題があろうが過去(戦前の問題を含む)の実績もあり、また別に意見を述べた
い。

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