最近読んだニュースから(2007年09月分)  

保険比較広告(続き)(2007/09/30更新)
医療保険の原価(2007/09/22更新)
医療崩壊(2007/09/16更新)
信頼回復(2007/09/09更新)
保険市場について思う(その43:契約者保護とは:その8:保険比較広告)(2007/09/02更新)


○ 保険比較広告(続き)

 郵政民営化で10月1日に巨大な民間生命保険会社が発足する。保険業界としてはそう
変わらないと思うが、監督に当たる金融庁は大変であろう。よほど心構えと準備をして当
たらなければならないと思う。簡保の事業成績は、少子化や死亡保障のニーズの縮小など
で、平成19年3月期の新契約件数は前年同期比20・6%減の238万件と落ち込んでいるけ
れど、日本一の巨大な生命保険会社が発足して保険業界の仲間入りする。
     *   *
 9/2日付のHPで、「保険比較広告普及進まず」という日経金融紙の保険比較広告を読ん
で感想を述べた。その記事の中に金融庁が新しい保険会社向けの総合的な監督指針を7/5
に改正して発表したけれど、「あいまい」であると外資系生保を中心とした保険業界側が判
断して、比較広告は不可能な状態になっていると日金紙が解説している。そこで関係する
監督指針を手に入れてみたいと思っていたところ、ようやく手に入れたので、それへの感
想を述べたい。
 この問題は、保険業法第300条第6号でいう「・・・・契約内容につき他の保険契約の契約
内容と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げ、又は表示する行為」に
関する監督指針である。
 保険商品の比較については、比較の手段として、それぞれの商品の「契約概要」(現物を
見たことがないので一応フォーマルな解説文書であると受け取って)が比較広告に於いて
重要な役割を果たさせようとしていることは分かるとしても、他社の契約概要を比較に重
要な役割を果たさせていることは面白いけれど、これを他社が快く提供するとは考えられ
ないし、商品内容の比較が、どの様な効用を有し、またどの様なことを目的としているか
は、比較者が消費者に対し口頭でどの様な説明を(強弱を付けて)するかに係わっていると
思われるので、それを監督指針がどう規制するのは伝わってこない。
 とにかく、消費者に対し提供されている保険商品が現状では余りにも多岐多様化されて
いる現状からみて、正確な商品比較を求めれば求めるほど、また契約に結びつけようとす
ればするほど、募集担当者が商品比較資料を利用して消費者に口頭でどの様な解説・説明
をするかを併せ問題にして、それを契約締結の際の証拠として残さないと、商品比較のニ
ーズや実態の現場が私には伝わってこない。正確にしようとすればするほど、不正確な知
識しか持たないであろう消費者が混乱するのではないだろうか。
 例えば、法300条第1項第6号関係のAの中のエに「社会通念上又は取引通念上同等の
の保険種類と認識されない保険契約間の比較について、あたかも同等の保険種類との比較
であるかのように表示すること」は、法300条第1項第6号に抵触する行為として説明し、
注記として終身保険と定期保険のように保険期間の相違がある保険商品の比較を行うこと
は顧客が同等な保険商品と誤解することがないよう配慮するよう喚起している。
 この注記は現在に於いて自明であると云えようが、何故ここで例示として挙げているの
か分からないし、アメリカでは日本ではまだ売られていない保険料返還条件付き定期保険
が売られているようだが、これが出現するなら、定期保険の中に一括して含くましめるこ
とは問題であろう。終身保険や定期保険の名前を挙げているが、むしろ、最近広く売られ
ている第三分野の保険のことについて触れるべきではないか。
(この項目は次回に続く)
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○ 医療保険の原価

 9/18日付の日経紙に「医療保険の原価初公表」という記事が掲載されていた。その内容
は極めて興味深いものであると言えようが、一歩前進であるとしても不完全で中途半端な
ものであり、この公表が行われたことにより、消費者からの要望への対応がある程度果た
されたと考えているとしたら問題含みである。また同時に「確率で考える医療保険の損得」
という記事が9/16日付の日経紙に掲載されていた。これも医療保険に関係する基礎デー
ターを示したものとして非常に興味のあるデーターであることも併せて考慮しなくてはな
らない。
 医療保険の「原価」として、医療保険が年度中に支払った保険金や給付金を対象になる保
険料収入で除した数値で示し「発生率」と呼ぶそうで、金融庁が2006年度からの開示を求
めていたようである。対象となる保険種類は、医療保険やガン保険等「第三分野」の商品で
ある。
 それによると国内会社である大手四社(死亡保険についた満期のある医療特約が中心)の
発生率は31.8−38.3%であるのに対し、保障が終身継続する外資系はアフラックが22.9
%、アリコジャパンが20.7%とかなり低い。
 発生率と呼ばれる数値で医療保険の原価を金融庁が開示させた意図は分からないではな
いが、財務諸表から抜き出せる基本的な金額を用いて支払った保険給付の額を対象となる
収入保険料で除した簡単な割合であるから、その目的とする意図への方法論が正しいかど
うかは全く別である。
 この比率は損害保険事業で昔から広く行われているようだ。名前は忘れたが支払った保
険金額を収入保険料の額で除した比率に類似しており、それに事業費の金額を収入保険料
の額で除した率とを合算した率が90%とか100%であることで各社の経営効率を比較し
ている。第三分野の保険は大まかには損害保険と類似していることから、この発生率を公
表させることにしたのであろうが、保険期間が一年で更新可能を前提にしている損害保険
では、いわゆるエクスペリエンス・レーティングが可能であり、事故発生率の実績に応じ
て毎年調整できるのに対し、第三分野の保険ではそれが出来ないという特徴を持っている。
 そもそも公表された数値を見ると、第一印象として発生率が著しく小さく、保険会社が
儲けすぎているという印象を受けるのは否めない。もしこれにより、料率や配当の面で適
正化の動きを勇気を持って促進させようとする意図を金融庁が抱いているなら、誠に結構
なことだと思うが如何か?
新聞記事に掲載された会社側の意見として、第一に、生保側は「新商品を開発するたび
に保険料算出の妥当性を見直している」と反論しているようだが、最近の平均入院日数は
急速に短くなっている(9/16日の記事によると1994年:35日→2005年:20日)のは明白
であり、この大きな低下を特約保険料、特に過去の特約の保険料(特約に対する配当は実
施していないと聞いている)の引き下げに反映しているかどうかは不明であり、いささか
保険料が高いと非難されても答えられないであろう。また「保険料の一部が将来の保険金
支払いの財源として準備金に回っている面もある」と弁解しているが、その通りであり統
一的に(?)支持された方式の持つ理論的限界があることは事実であり、そうならば、「原
価」の算定方式を公正妥当なものに早急に改善させるか、さらに商品の契約条件を(既契約
者を含めて)契約者に有利になるよう変更しなければならないと思う。
 要するに、過渡的な原価表示である。
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○ 医療崩壊

 機会があって、9/5日から17日まで開かれている第92回の二科展を、六本木に新設さ
れた国立美術館に見に行った。昨年まで二科展は上野の東京都美術館で開かれてきたのを
毎年見てきたが、国立新美術館で初めて今年から開かれのだ。そこで初めて歩いた六本木
の近代的であるけれど私には異様な町並みに驚き、今年の二科展を見た。素人の感想で申
し訳ないが、そこに失礼だが狂気とも云える異様な雰囲気の絵画が並んでいるのに、改め
て日本の近代絵画の動向について何が基本的な要因なのか考えさせられた。
    *    *
 私が80歳を超えた高齢者になって感じることは、身体の機能が当然のことに次第に衰
えてきたことと、負担する医療費(過剰な医療を求めてきたわけではないけれど)の額が相
当に大きくなってきたことである。それは10年ほど前にはそうは感じなかったことだが、
厚労省が健康保険の医療費を抑制するため、患者の負担割合を1割から3割に引き上げた
こと等が原因だ。プライマリ・バランスを図るためには、国家財政に占める社会保証の国
庫負担が年々増加してくるのを、何とか抑制しようとするからであろうか。ところが自民
党が参議院選挙で大敗したのを受けて、格差の大きいと参議院選挙で焦点になった地方の
経済を嵩上げしようと、道路などの公共事業費をカットしないようにする声が大きくなっ
ているようで、国家財政に与える影響が心配だ。
 止まるところを知らない少子・高齢化による大きな影響が心配されてるが、思えば、と
にかく日本という小さな島国の人口が1億人を超えているのが不自然で、エネルギー資源
は殆ど輸入で賄い、さらに食糧自給率の悪化が懸念されているのは当然のことであり、今
後人口を半分ぐらいに縮小してバランスを図ってゆくことを考えるべきではないかと思う
が、その頃に私はこの世から姿を消しているだろう。
 最近の報道を見ても、我が国の医療システムが崩壊しつつある現実には光が当てられて
いない。厚生労働省の役人がだらしがないためか、医療システムの崩壊は大都会に住む我
々にはなかなかピンとこないが、地方に行くと病院から医師が逃げ出し、地域から病院が
姿を消してきている。最近632億円の負債を抱えて財政破綻した夕張市からは市営の病院
が姿を消し、透析治療を受けている市民が悲鳴を上げている状況が報道されたことを思い
出す。
 その反対の面で、社会保障である国の健康保険制度を補完し、現実の治療行為と密接に
結び付けることから始まった民間会社の医療保険は、派手なコマーシャルを展開して、国
の健康保険制度の崩壊を素知らぬ顔(?)をして医療保険を販売している。
 それほど国民のために良い保険であると自信があるなら、「現物給付」として医療サービ
スを提供するくらいの気構えを持ったらどうか。そうすれば国民、特に地方に住む国民か
ら絶大な感謝を受けることは間違いない。でも医療保険を販売している保険会社、特に外
資系の会社は、社会保障の健康保険が崩壊すれば、自分達が提供している医療保険の保険
給付は少なくなることを喜んでも、恐らく根っこの医療を自分たちが金を出して提供しよ
うとする気は全くないであろう。
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○ 信頼回復

 9/4日付の産経紙に「大手生保 信頼回復・顧客離れストップ 全契約者訪問を強化」と
いう記事が掲載されていた。日本生命など大手生命保険4社が、全契約者の自宅や勤務先
を営業職員が訪問して契約内容を確認して保険金不払いを予防する活動を展開中とのこ
と。各社はいずれも数百万人以上に上る全契約者への訪問を目指すという。大変な作業で
ある。
 その背景はコンプライアンスの遵守向上のためもあると思うが、実際は保険給付金の不
払いによる社会的非難を経営陣はできるだけ回避しようとしているのではないかと思われ
る。副次的には、訪問目標を与えて顧客との繋がりを維持して募集体制の崩壊を防ごうと
するのも狙いだと思うけれど、大都市における保険商品の訪問販売体制の維持がますます
難しくなっていることを示すものだろう。
 少子・高齢化の急速な進展は、その勢いは止まるところを知らない。その結果色々な変
化が生じている。労働環境の激減が進み、各社の営業職員数が大きく減少しており、私の
住んでいる練馬区大泉地区にも一等地に大手二社の営業所があったが、ここ数年の間に、
跡地の活用が決められないまま閉鎖されている。
 一方で、伝統的な生保会社の募集体制を真似できなかった外資系の会社は、猛烈に医療
保険のテレビ広告を展開して通信販売に賭けているのは、伝統的な会社の営業職員体制の
整備が真似できないの代替戦略だと思う。伝統的な営業職員による販売は、大都市以外に
おいてまだまだ必要不可欠だが、大都市地区では悪質な訪問販売の悪影響を受けて、今後
はますます困難になってくると思う。
  *   *
 スペインの諺に「タコにズボンをはかせるのは難しい」というのがあるそうだ。コスト比
較情報について前回で意見を述べたが、誠にスペインの諺のとおりだ思う。
 コスト比較情報の提供は消費者にとって非常に望ましいことであるが、ストレートな形
での提供は(保険商品に何等かの規制をしなければ)誠に難しく、不可能と云えるのではな
いか、というのが私の意見である。保険給付だけの比較は難しくないのだが、それにコス
トを結びつけた比較情報の提供は、誰が考えても困難である。現状は監督官庁が保険商品
への規制を大幅に(?)緩和してしまったことへのツケをいま受けているのだ。しかもコス
トが殆どかからない保険給付の追加を契約者サービスの大幅改善として宣伝するものだか
ら顧客は惑わされてしまうことがあろう。
 コスト比較情報の提供もさることながら、各保険給付ごとにコストを分解して提供させ
ることも考えてみてはどうか(契約年齢、10年や20年の比較期間を決めて、解約返戻金
、契約者配当があればそれを調整して)。そうすると、宣伝よりも非常に小さなコストで
提供している場合もあって、あれっと思うような結果が出てくるとおもう。これをディス
クロすることは問題があるなら、監督指導の資料に止めざるを得ないケースも出よう。  とにかく、医療保険は全世界に例を見ない保険であるから、全世界に対し立派な方式と なるよう、さらに出来れば実績と対比できるよう、コスト比較を慎重かつ大胆に展開し、 その結果、矛盾や疑問点が出てくれば、遅滞なく現状を改善させるところまで行かなくて は監督責任は果たせないと信じる。さて契約者保護のため、ここまでやれる監督官が出る だろうか心配だ。
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○ 保険市場について思う(その43:契約者保護とは:その8:保険比較広告)

 8/29日付の日経金融新聞に「保険比較広告普及進まず」という誠に珍しい記事が掲載さ
れていた。それによると保険業法は比較広告を原則認めているが「契約者を誤解させるお
それ」のある場合は禁じている。「誤解のおそれ」が何を指すか不明確なため金融庁はこの
7月に監督指針を改正したが、保険会社は「まだあいまい」として導入に足踏みしたままで
ある、と報じている。業界による自主的なルール作りの気運も盛り上がりに欠け、普及に
暗雲が漂っているという。
 改正された監督指針を手に入れておらず、まだ読んでいないのでここで批評するには限
界がある。前から私が予想してきたように、養老保険や終身保険のような伝統的でシンプ
ルな保険商品なら話はずっと易しく前進したであろうが、世界の保険市場に例を見ない複
雑多岐に発展してきた我が国の医療保険の世界となると、各社は単純に比較できないよう
に知恵を絞って保険給付や給付条件(例えば告知義務)を工夫して提供しようと努力(?)し
ているから、話は複雑になるのは当然であり、比較広告を広めようとする意欲も保険業界
に乏しいという。
 その意味で、各社による比較情報の提供はまかり間違うと風評被害を与えたと訴えられ、
訴訟を受けるリスクが想定されるのである。そもそも最近では各社の医療保険の設計上の
細部は秘密にされているようだから他社は正確な比較は困難であり、と同時にリスクを冒
してまで提供するのに躊躇するのは当然である。その環境を変えるには、監督官庁が@比
較しやすいように商品内容を大幅に規制するか、またはA商品の細部を公開し提供するの
か、等の工夫が考えられよう。
 そもそも比較情報として何を顧客に提供するのが重要であるのか。私は第一に保険料の
比較情報であると思う。しかし保険商品が複雑多岐になった現状は、監督官庁において規
制緩和方針の故に商品を標準化しようとすることを放棄してきたのが原因であるから、今
更これを標準化して統一することは困難であろう。しかし消費者のニーズが、何よりも保
険料が高いのか安いのかを知りたいことにあると監督官庁が判断すれば、比較情報の提供
を一番よく知っておるはずの監督官庁自らが提供せざるを得ないのではないか。監督官庁
が(むやみに高い保険料を承認したのではないかと非難されるのがいやという)やらないと
いう相当な理由があるなら、例えば国民生活センターに資料を提供して、そこから発表さ
せるということにしてはどうか。そうすれば、比較情報の提供以上に消費者保護の面で良
い効果が生まれてくると思う。
 例えば、各社の保険料の算定方法なり水準に相当なバラツキがあるとの噂を聞くことが
ある。その影響は各社の利益額のバラツキに反映されているはずだし、それを(全体とし
て)改善する上でも、保険料収入に対する利益額の比率を、先ず第一歩として、監督官庁
が公表することを考えてはどうか。
 私は保険料の比較情報を提供する方策として従来考えていたことは、各社が実際に販売
している商品ではなく標準的な給付の統一商品を予め決めておいて、各社に対し、その商
品の保険料を、販売している商品と同じ計算基礎・基準を用いて算定させ提出させて検討
する。これを監督官庁が開示することにより、各社の保険料算出システムの是非や過大で
あるか否か間接的に明らかになる。疾病率や諸給付の発生率の差異、ローディングの厚さ
等が明らかになるだろう。問題はアメリカのように契約後一定期間(例えば10年間)の平
均負担額を求めようとするとき、解約返戻金や契約者配当の控除等を是非とも考慮に入れ
なくてはならないから問題になり、また最近出た「健康祝い金」の存在などが複雑になろう。
さらに告反の扱いの差異も検討に入れなくてはならない。
 こんなことを考えていると、なかなか難しい問題で、監督官庁なり公的な社団法人が手
がけなければ、収まりのつかない問題だと考える。

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