最近読んだニュースから(2007年06月分)  

美しくなくなった日本(社保庁問題)(2007/06/24更新)
保険市場について思う(その33:06年度の生保決算−続々)(2007/06/17更新)
保険市場について思う(その32:06年度の生保決算−続き)(2007/06/10更新)
保険市場について思う(その31:06年度の生保決算)(2007/06/03更新)


○ 美しくなくなった日本(社保庁問題)

5000万件という膨大な年金の記録漏れという社保庁問題は、受給者である国民を唖然
とさせている。
 産経新聞の6/22日付の「正論」に屋山太郎氏が、「社保庁問題は国鉄問題にそっくり」と
断じており、全職員の賃金、3割カットせよと主張している。何故か?
 国家組織の中での労働問題は、昔の国労のストのように、一般国民に大きな迷惑をかけ
た事件ではない限り、一般紙に報道されることはなかったから、屋山氏の話は我々には知
られないものであって、今回の事件の根源をなす背景として、社保庁の管理者が組合に負
けた結果、電算化問題の解決を無責任にも先送りしたものであることを国民は理解しなく
てはならない。
 私が主計局で社会保険庁の特別会計を担当していた1964−7年を振り返って、その当
時は組織が労働問題で現状のように腐敗していたとは思えなかったが、屋山氏によると、
組織腐敗の根源は70年代にまで遡るという。社保庁の自治労国費評議会(今年4月に「全
国社会保険職員労働組合」と改称=組合員1万1千人)は、72年から79年まで合理化反対
のため、@オンライン化反対と、A身分を国家公務員から地方公務員に移せという闘争を 
激しく行っていたようだ。その結果、手抜きの中途半端な年金記録の処理が国民に知られ
ることなく先送りされてきて、今になって社保庁の民営化を契機として明るみに出てきた
のだろう。
 75年、国鉄では国労、動労が「スト権奪回スト」を行い、違法のストを8日間ぶち抜い
た。総評は共に運動に参加し、「国鉄が円滑に機能しないことは国の力を弱め、資本主義
を崩壊させるのに役立つ」と国労の富塚三夫書記長は覚悟のほどを披瀝していた。違法闘
争の後、国鉄は毎年赤字を2兆円垂れ流し、借金が37兆円も溜まっていたことが民営化
への改革のきっかけになった。同じように郵政も労働組合の強い状況で、私が75年に大
阪税関長として赴任したときは、郵政労組が非常に強いと聞かされていたが、それ以上に
全税関労組の大阪支部が強いといわれていた。2年間の闘争の結果、当局側が勝ち(負け
なかったというのが正しい)職場の紛争は正常化できた。
 国鉄と郵政とが民営化されたのは当然のながれであり、また今の国会に提出されている
社保庁改革法は非公務員型の「日本年金機構」を作って、6分割する主旨だが、国鉄の7分
割・民営化をなぞった解決策であるようだ。
 年金記録修正の動きの背景を、厚生大臣や社会保険庁長官を初めとする歴代幹部の責任
だけであると単純に理解するのは間違っており、もちろん彼等にも責任はあるけれど、我
々は国民のことを考えない労働組合運動のことを決して忘れてはならない。こんどこそ、
国民が心配しない体制を完備してもらいたいものだ。
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○ 保険市場について思う(その33:06年度の生保決算−続々)

 新聞記事などから生保決算について感想を記しているから、また読む記事の内容に経年
の変化があるから、感想に限界があることは当然である。各社の支払い余力(ソルベンシ
ー・マージン)を比較した記事が今年はないのかと気にしていたら、日経金融新聞の6/7
日付に16社の表が掲載されていた。
 それによると、朝日、三井生命の二社を除いて、すべて1,000%を超えている。しかも
各社の数値が昨年と比較して、アフラック(注)を除いて上昇している。日生、第一、住友、
明治安田の大手4社でみると、同比率は単純平均で1200%強である。
 (注)具体的な状況は開示されていないから分からないが、アメリカ側から見ると、1000
   %を超えれば、余力を株主配当に回すよう(本店に送金するよう)要求が非常に強く
   なるのは当然である。
 とにかく我が国のソルベンシー・マージンはとても甘い基準であるから、1000%を超
えているからといって数値を検討して、各社の支払い余力が十分であるか否かを判断する
指標に使えないことは明白である。当初、アメリカで開発されたRBCのを判断する指標
を参考にして我が国にも導入したが、アメリカでは200%以上あれば正常(優良会社でも
300%程度)であり、100%を割れば危機的な状態で、RBCを強化しなければならないと
されていた。しかしそのまま我が国に導入するなら金融バブル崩壊後に、大手会社にも経
営危機にあるとされる会社が存在したので、わざと基準を甘くして発足した経緯があった
と伝えられる。
 その当時の状態を考慮すると、アメリカの基準の倍ぐらいの状態。即ち、200%ではな
く、400%以上あれば、まあまあギリギリであると判断するか、又はやや危ない状況であ
ると私は思った。
 しかし、その後の経済環境の改善により、殆どの会社の財務内容が1000%近くかそれ
以上の状態になっているから、当然のことに、(新聞記事では批判されないけれど)社会常
識として、株主配当または契約者配当の増加に回すよう圧力が経営陣に加わってくるのは
当然になってくる。
 その甘い基準を是正することなく現在まで引きずってきたのが、やっと今日になって改
正しようとする検討がされているようだ。しかしながら、我が国独特(?)と思われる財産
利用(投資)として好調な株式運用がソルベンシーの改善に大きく貢献し、金利も少しばか
り持ち直してピーク時には9社合計で1.4兆円あったのが4456億円と三分の一以下に減
少したけれど逆ザヤの扱い、換言すれば予定利率関係リスクの扱い、さらに株式運用リス
クの扱いが今後の問題となろう。
 株式への運用を認めているイギリスの方式に習って、独立にレジリエント・テストを行
うかを考えなくてはならないだろう。保守的な経営を基本とすべき生保会計で、株式運用
を果たして無批判に大きく認めているのを続けてよいのだろうか。私が保険行政を担当し
ていたときには、株式運用益を財源として特別配当を実施したけれど、現在では逆ザヤ解
消のために契約者配当を極力抑えてきたから、その様な考えは消えてしまったであろう。
 契約者配当についての記事を見ると、「生保、配当を大幅増」(5/10日付朝日)で、日生
は死亡保障保険など今年度に支払う個人向け保険の大幅に増やす方針だと報じ、また「日
生、配当性向を開示・・・・契約者への利益配分昨年度5割超に」(5/27日付日経紙)と報じて
いるが、利益をどの程度契約者への配当に振り向けたかを示す配当性向を開示し、これま
で内部留保優先から契約者への利益配分を増やす方針に転換し、既存契約の繋ぎ止めや新
たな契約の獲得につなげるという。これが生保で初の開示であるという。保険種類別の配
当性向が分からないので何とも云えないが、昔の私の時代と比較すると、配当性向は恐ら
く何とも低レベルでの開示であることか。
 慎重に検討すべき課題は多く残されていることを指摘しておく。
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○ 保険市場について思う(その32:06年度の生保決算−続き)

 保険市場は大きく変貌してきている。良い意味でも、悪い意味でも、国際的な保険市場
の流れの中に巻き込まれてきて、残念なことに、ビックバン以前に世界を制覇していた保
険大国日本の面影が全く失われ、遠く霞んでしまってきた気がする。
   *   *
 一年前の05年度決算についてのHPを読み返してみると、事務的な点については、同
じ様なことを書いているのを読んで、私はたいして進歩していないことが分かった。年換
算保険料収入の統計が導入されたのは05年度決算からであった。
 さて、新聞による決算の比較分析には、保険料収入と年換算保険料収入とが並列して、
一般の人に分かり難くしている。その増減にどこような差異があるというのだろうか。損
害保険では、分割払い保険料は希で、殆どが年払い保険料であるから、単純に保険料収入
の比較だけで済ましていられる。しかしどうも生命保険や医療保険料では、広告などで見
ると、月払保険料が殆どであるようだから、わざわざこうした区別がなされるのであろう
が、余り(実態を解明する)迫力はなく、混乱させるだけではないかと思う。医療保険の広
告を見ると、安さや手軽さを誇示するためであろうか、月払い保険料を掲げている。月払
保険料と年払保険料との関係は、私の時代では、月払と年払換算の保険料との関係が1対
11となっていたのだが、今はどうなっているのか分からない。規制緩和の時代になって
いるから、各社各様の比率になっていてもおかしくないが、年払保険料がない会社は、月
払いを単純に12倍したものを年換算保険料としても、監督当局は規制しようがないだろ
う。我が国の1対11は世界的に標準化されたものではないからである。
 今回の決算数値が成長率から見て低迷している点を「生保9社4%減 不払い問題響く」
(5/31日付日経紙)と報じ、減収は二年ぶりであり、死亡保障ニーズの低下に続き、成長
分野とされる医療保険の販売も振るわなかったのは、保険金不払い問題が起き、今年二月
以降は営業より不払い調査を優先させたことも響いた、と解説しているが、果たしてそう
であろうか。経営陣はそう見たくもないし、弁解するであろうが、しかし簡保でも同じ様
な現象が起きているのは何故だろうか。
 6/6日付保険毎日紙によると、簡易生命保険業務の新契約の状況は、前年度比62万件減
の238万件、保険金額は同じく1兆5656億円減の6兆9041億円となったと報告されてい
ることからみても、問題は別の所にあるのではないかと思う。
 その一つの原因は、5/31日付の日経紙が報じているように、営業職員数の減少が続い
ていることではないか。国内大手9社の営業職員数は3月末で21万人と前年度より13千
人減(昔の最盛期と比較して半減している)と、景気回復による人手不足で、都市部などで
新規採用が難しくなっいるようだ。採用しても1−2年で大半が止めてしまい、営業職員
の定着率改善に取り組むが、成果は上がっていないようだ。従って、営業職員の確保と育
成をどの様に取り組むのかが経営の大きな課題となってきているようだ。一昔までは、営
業職員は親類縁者から契約を獲得すれば使い捨てとしてきた姿勢を改革し、デビット職員
のように、契約の維持活動に相当の努力を払い、それに見合う報酬を支払うように改める
時代になってきたと思う。それが可能となれるように、給与体系を一変することが求めら
れよう。それが出来れば、少し前に新聞報道されたような、昔からあったようなカラ職員
の存在、在籍していない職員の三文判がころころしていることがなくなるだけでなく、医
療保険の保険金不払い問題の解消にも大きく役立つのではないか。
 なお保険毎日紙の記事から気になったことは、簡保の決算では、追加責任準備金からの
機械的戻入額4012億円を三利源に加えて、基礎利益は5189億円になるとしているが、こ
の方法は簡保独自のやり方であって、法人税の扱いが異なるから出来るのである。今後民
保と同じ法人税の扱いになった時、どうなるのかを真剣に議論しなくてはならないと考え
る。私の考えでは、簡保のやり方のほうが正当であり、民保の処理が誤魔化しである。
 もう一つ、ソルベンシー・マージン比率の統計が新聞記事にならなかったのは、どうし
たことなのか。いたずらに高い比率を開示しても、契約者配当として十分に還元されてい
るなら別であるが、そうではない所に忸怩たる気持ちがあったとすれば、近い将来に適正
な新ソルベンシー・マージン比率に改正されるまでの扱いであり、また契約者配当制度の
ない会社の扱いを、契約者保護のためどうするかを含め、検討する課題が残されていると
考える。
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○ 保険市場について思う(その31:06年度の生保決算)

 生命保険の国内大手9社と外資系主要7社の2007年3月期決算が、例年の通り、5/30
日に出揃ったとの新聞報道(5/31日付)が行われた。それによると、国内9社の保険料収入
は、日生を除き、8社が減少した。それに対し外資系は、AIGスターとアクサを除く6社
は増加している。(国内会社の保有契約の年換算保険料では、大同生命を除き減少してい
る。)
 確か今年からか、業績を示す基本的な統計値が保険料収入額になったと思うが、銀行の
預金残高等と比較して、これが保険会社の基本的な実力を示すものになるのか、少しばか
り頼りない感じがする。恐らく業界側の多くの意見を踏まえて決定したのであろうが、保
険契約は毎年の保険給付の保障に応じて、保険料を毎年払い込む長期契約が主流であるこ
とから、また第一分野の死亡保険が停滞し、第三分野の医療保険は多岐多様な保険給付が
主流になり、それには死亡保険の死亡保険金のような主流となる保険給付がないことから、
外国の保険統計が保険料収入を基本統計にしているのに習ったのであろう。何十年となく、
保険会社の決算を眺めてきた私にとって、少しばかりの違和感を覚えざるを得ない。何故、
第一の保険分野、第二、第三の保険分野ごとに基本となる統計指標を変えれば良かったの
であろうが、第三分野の保険の扱いが独立の保険分野として確立されないままにされたこ
とが、諸統計の混乱を招いていると思う。
 私がアフラックのガン保険に免許を与えたときに、生命保険を担当する保険第一課が審
査するのか、または損害保険を担当する保険第二課が担当するを判断するのかが問題とな
り、この保険を審査するのは保険第二課では技術的に全く無理であり、またガン保険は純
粋の生命保険契約ではないけれど、被保険者の生存の状態に応じて保険給付を支払うもの
であるから、年金保険契約に準ずるものであり、アクチュアリアルな技法が活用されるか
らである。商法では年金保険の定義がなされていない状態で、明治に商法の保険契約法が
検討された際に、もし将来に年金保険を販売するような状況になれば、商法の保険契約法
に年金保険の定義を設定するとの経緯があったのに、生命保険会社が年金保険の販売を開
始していた(企業年金の販売を信託銀行が開始した際には、商法を改正しないまま、競争
上、生命保険会社が販売した経緯があった)状況から判断して生命保険会社が販売するも
のと決定した。アフラックに生命保険会社の商号が付されているのはそうした考え方の延
長線上からであった。
 昔の話をあえて持ち出したのは、新保険業法制定の際に第三の分野の保険が導入された
けれど、生命保険会社は、簡保の改正に準じて、生命保険に特約の形で医療保険を付加し
てきたから、第三分野の保険の統計が分離されず合算される結果になっている。このこと
は、ときの行政担当者がどう考えたのか分からないが、第一の分野と第三の分野の保険の
諸統計を一緒に合算して発表することは、生命保険会社の実際が分かり難くなっている。
 例えば、日経金融新聞で決算の特集(5/31日付)を行っているのを見ても、過去の膨大
な生命保険契約を保有しているなら、もし第一分野の保険成績が頭打ちで振るわないとき、
(第一生命の説明のように、人口減による死亡保障ニーズの縮小で契約を伸ばすのが難し
い環境にあるなら)それがない新規発足の会社の保有契約年換算保険料の増減額が大きく
表れてランキングの順位が上位を占めることになる可能性がある。
 従って、第三分野の保険契約の成績を、例えそれが特約形式であっても分離して表示す
ることが実態を明白にする効果が大きいのではないか。当然のことながら、監督当局が提
出を求める諸統計表では、第一と第三の分野の保険事業を分離していると思うが、もし私
の推察するのが正しいならば、それを新聞に発表しない限り、会社間のランキングが誤っ
たものになる恐れが強い。また財務諸表についても基礎利益についても同様に分離すべき
である。それを更に延長すると区分経理の発表となろう。そうすればいろいろな問題点が
明らかにされるだろう。

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