最近読んだニュースから(2007年03月分)  

保険市場について思う(その22)(2007/03/25更新)
ACLI資料;拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その16(2007/03/25更新)
保険市場について思う(その21)(2007/03/18更新)
ACLI資料;拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その15(2007/03/18更新)
保険市場について思う(その20)(2007/03/11更新)
ACLI資料:拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その14(2007/03/11更新)
国際会計基準問題(2007/03/04更新)
ACLI資料:拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その13(2007/03/04更新)


○ 保険市場について思う(その22)

 最近の本の発行に一風変わった傾向があるようだ。新聞で話題を呼んだ記事を追いかけ
るように、保険の一般向けに注意を喚起する「解剖書」と言える本が出版されてきた。その
一つが「落ちこぼれ損保マンの保険金不払い日記」(江戸川損歩著:ダイヤモンド社刊)と、
「販売員も知らない医療保険の確率」(永田宏著:光文社ペーパーバックス)である。筆者の
永田さんは、医学博士で医学情報学分野の研究の専門家である。
 前著の腰巻きに「請求なければ払わない、知らないヤツには教えない、これが損保の常
識だ!」とある。後者の著書には、「安心を買う」のウソを徹底分析 読めば「人生設計」が
変わる!とある。
 医療保険を扱う保険会社や自動車保険を扱う損保会社は、膨大な広告料を支払ってくれ
る大切なスポンサーであるから、新聞社も深追いせずにすませるだろう。大口顧客にたて
つく馬鹿はいないはずだからだ。でも新聞記事の影響は極めて大きい。
 前著の「まえがき」を読むと、不払いの原因は、自動車保険のように一つの保険に3000
もの特約を作ったことと、約款を知らない管理職に支払い権限を持たせていたことが最大
原因だと言いきる。そして請求されないものは支払わない、知らないヤツには教えないと
いう損保特有の考え方が、この様に業界挙げての不払いに繋がる、と断じている。
 前著を全部を読んだわけではないので、パラパラめくって引っかかったところを紹介す
ると、「損保の代理店として登録するには、資格試験に合格しなければならない。この試
験は、受ければほとんど誰でも受かるんだ。テキストは持ち込みで、その中から問題が出
る。どこに書いてあるか探せれば、満点だって取れてしまうんだ。こんな簡単な試験で合
格させるから、ろくなやつが集まってこない。・・・・こんな連中だから、自分で約款な
んか読んでいるヤツはほとんどいない。保険が不払いになっているなんて、気づくわけも
ないぜ!」(p.38)
 これに対応する生命保険業界における募集員の試験制度も、全く同様な形骸化の問題を
抱えている実態を忘れてはならない。だけれど制度を合理化してレベルアップする意見が
金融庁の方から出てこないのは不思議なことである。消費者の利害に直接関係する募集行
為だけに、試験を3年か5年ごとに受けなけば募集できないようにする案が、なぜ言い出
されないのか。それは業界からは絶対に出てこない制度改正であるからなのか。
 後著の名前からして、保険数学の教科書のように見えるが、そうではなかった。しかし、
部外者、実は医療統計の専門家である筆者から見て、現在の医療保険を分析した結果の本
であるから、それなりに大変貴重な内容を含んだ本だと思う。それにしても、保険業界で
医療保険のアクチュアリアルな諸事項について標準化が遅れているのは全く残念である。
 また心配なのは、医者の技術に大きな差があるかも知れないのに(信頼出来る病院や医
師が一般に公表されている)、その点を無視してアクチュアリアルな計算をしているのだ
から、医療保険の実際は相当乱暴な計算が含まれているはずであり、それをカバーするた
め非常に大きな安全割増が含まれていると言われている。商品の認可をする際に、金融庁
は細心の注意を払うべき保険である。
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○ ACLI資料;拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その16

   A. 適用される基準
 GATSの第XVII条は次のように規定している。
 1.スケジュールにおいて記された部門(sectors)で、またそこで提示された条件と制限
   に従い、各メンバーはサービスの提供に影響を与える全ての基準について、自分の
   同様なサービス及びサービス提供者よりも不利にならない扱いを、如何なる他のメ
   ンバーのサービスとサービス提供者に対して提供しなくてはならない。
 2.如何なる他のメンバーのサービス及びサービス提供者に応じて、自国の同様なサー
   ビス又はサービス提供者に与えていると形式的に同等であるか又は形式的に異なる
   扱いの何れかを提供することにより、1項の要件を満たすことが出来る。
 3.形式的に同等であるか又は形式的に異なる扱いは、もしそれが如何なる他のメンバ
   ーの同様なサービス又はサービス提供者と比較して、メンバーのサービス又はサー
   ビス提供者が有利になるよう、競争の条件を修正するならば、不利であると考えら
   れる。
 二つの事例、EC--Bananas--III及びカナダ--自動車の例だけが現在の所、この規定につ
いて分析されている。またこの二つの中でEC--Bananas--IIIのパネル報告書は、GATSの
解釈について、上訴機構(Appellate Body)において全面的に支持されており、良いガイダ
ンスを提供している。上訴機構が暗黙裏に承認した初めての分析において、EC
--Bananas--IIIのパネルでは次の三つの判断基準が論証されていなければならないと述べて
いる。それは次のことを論証しなくてはならない。
 1.[国]は、関係する部門及び提供する方法について約束をすること。
 2.[国]は、その部門におけるサービスの提供及び(又は)サービスの様式に影響を与え
   る法令を成立させるか、又は適用すること。
 3.他の如何なるメンバーのサービス提供者に与える法令が、[国]自身の同様なサービ
   ス提供者に対し与えるよりも有利ではない扱いをすること。
 この三つの判断基準の全てが、この事例に当てはまる。
 B.日本は保険部門において国としての扱いを行う約束をした
 日本は保険及び保険に関連する部門の外国のサービス提供者に対して、その当初の1994
年4月のGATSスケジュールにおいて国としての扱いをする明確な約束をした(注)。特
に日本は、GATSの第1.2(c)条で確認する提供の方法を通じた保険及び保険に関連するサ
ービス、「他のメンバーの地域において商業上の態度を通じて一つのメンバーのサービス
提供者」により提供するサービスについて、また第1.2(d)条で、「あるメンバーの自然人が
他のメンバーの地域においての存在を通じてそのメンバーのサービス提供者により」提供
されたサービスについて、拘束力のある約束を行った。ここで問題となる外国の保険の提
供者は、後者の二つの方法を通じてサービスを提供している。日本の義務は、1995年1
月1日に発生している。彼らは、1997年12月に妥結した金融サービスに関する交渉の追
加交渉の結末において修正しなかった。従って第一の判断基準は、日本において提供する
保険サービスが、他のメンバーの「商業上の存在」によるか、又は「自然人の存在」によるか
の何れかを通じて満たしている。
 (注)メンバー国のXVII条による義務は、「スケジュールで規定した部門について、ま
   たそこで規定した条件と資格を条件としてのみ」存在する。GATS第 XVII:I条。
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○ 保険市場について思う(その21)

 3/15日付の各紙に、「損保 軒並み厳罰」という記事が掲載された。少し前までは、生
保会社の不払い問題が掲載されていた。これは金融庁が14日、保険金不払い問題で損保10
者に対し一斉に行政処分に踏み切ったことを発表したからである。
結果として、今回の発表は生損保のバランスを図ることになったと云えよう。  金融庁が最も問題にしたのは、正規の手続きを無視した損保各社のやり方だという。例
えば、契約者から支払い請求を受けた際に、医師の診断書などで裏付けを取らず、社員の
独断で「医療保険金の支払い対象ではない」と決めつけた事案がほぼ全社で見つかったとい
う。金融庁の検査官が不払いの事由を質問したところ、判断資料が不備なため、社員が独
断したと説明したのであろう。金融庁の検査官は医療保険の専門家ではないし、また教育
・訓練を特に受けたのではなかろう。  細かな資料がないまま、新聞の記事をベースにして断定するのは避けたいが、もし社員
の独断だ(これが一番簡便な説明であり、それで説明すべき事項全体がカバーされないだ
ろう)とするなら、判断資料を整備するよう契約者に問いただすか、契約者から追加の資
料の提出を求めるべきである。その過程にある案件は、処理中の案件として整理すべきで
ある。また約款の免責条項が曖昧であり、事務処理のマニュアルが無く保険会社による解
釈の自由度が大きいのが原因であれば、それは社員の独断だ、とばかり決めつけられない。
その様な約款を申請し、マニュアルの整備を怠った保険会社側に問題があるだけでなく、
申請を承認した金融庁にも問題があろう。新聞記事によると、損保各社と金融庁との間で
攻防があり、最終的に金融庁が不払いの事例を厳しく洗い出した結果、金融庁の認定分が
昨年10月に各社が自主公表した不払い件数を上回ったという。  私は前にこのHPで、金融庁の重点審査事項は、免責約款にあると指摘したことを思い
出す。それだけに免責約款をどの様に規定するかは重要である。特に医療保険では複雑で
あり、どう規定するかは、極めて慎重かつ明確に扱うべきである。ましてや他社の真似で
済ませられるものではなく、また募集パンフレットに分かり易く、かつ明確に説明してト
ラブルが起きないよう注意を払うべきである。  今回の新聞記事の特徴は、これは官製の風評被害であり、だれもそれを止められないこ
とである。もう一つの特徴は、外資系の会社、アメリカン・ホーム保険が僅か一社だけが
初めて顔をだしていることである。外資系の会社はおおむね真面目にやっているとは、到
底考えられない。街の噂として、他に外資系のある会社は酷いことをしているという声が
ある。日経紙には、処分の内容の公平性に課題があると書いているが、従って公平性はそ
れだけではないだろう。
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○ ACLI資料:拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その15

    ・税金の免除。日本郵政公社法(Japan Postal Public Corporation Law:JPPCL)は日本郵
      政が財務省に対し税金を支払うよう求めている。しかしながら、経営の健全性を保
      つために必要な金額を超えて剰余準備金(reserve surplus)を蓄積するまでは、その 
      支払いは免除される(注)。
      (注)JPPCL第37条
    ・予算上の自由。「弾力性と自主性」を以て運営するために、日本郵政は最早、国会か
         ら予算の承認を求める義務が無くなった。その代わりに、JPPCLは新公社に対し、
         その四年間の中期事業目標と計画を、監督機関MPHPTから承認を得た後で、国会
         に対し報告することを求めるだけになった。(注)
      (注)日本郵政公社法第38条
    ・大きな借入金をする自由。日本郵政は、MPHPT大臣の承認を得て、長期の借入金
      をし、また債券を発行することが認められる(旧システムの下では、国会の承認が
      必要とされた)。(注)
      (注)JPPCL法第38条
    ・民間会社への投資が可能に。JPPCL法は、日本郵政がユニバーサル・サービスを維
   持しながら、郵便配達事業に参入しようとする民間部門との増大する競争に応える
   ため、その郵便配達事業に密接に関係する投資ならば、直接、民間会社に投資する
   することを認めている。(注)
   (注)簡保と郵貯は共に、民間会社への直接投資を禁止されている。彼らの民間会社
     への投資は、民間の信託銀行を通じてだけ許される。JPPCL法第21条。
  ・商品提供の拡大。簡保は、その商品提供を拡大する上で、新法の下で本当に大きな
   自由を得た。MPHPTが承認した新商品を財務省は不承認に出来ない。また新商品
   提供が郵政保険法の改正を必要とする希な場合のみ、国会の承認が必要となるだけ
   である。(注)
   (注)簡保が公社に移行する前は、MPHPT大臣は彼の諮問機関である郵政監理審議
     会に審議を求めた後で、契約の条項の性格と保険料を算定する方法を決定する
     権限を持っていた。MPHPTの大臣は、民間の生命保険会社を規制する権限を
     有していた大蔵大臣が、簡保の商品拡大について、MPHPTの動きに介入して
     歪めることを認めていた。しかしながら、現在の改正郵便生命保険法は、契約
     条項と保険料算定方法とを設定することを、MPHPT大臣から承認を得れば良
     いだけである(郵便生命保険法第102−103条)。国会の承認は、もし簡保の新
     商品が郵便生命保険法の改正が必要となる場合に限られる。けれど、郵便生命
     保険法では、簡保が提供できる基本的な種類の保険カバレッジだけを規定して
     おり、契約の条項と保険料算定の方法の修正は、実際に、国会の承認なしに可
     能である。
 民間会社に対し課せられていると類似した比較的僅かな規制上の要件が、現在日本郵政
に対し課せられている。それらの大部分は、財務諸表の報告と監査の分野である。
 経営に大きな自由度を得た日本郵政は、簡保の運営を強化して利益を追求する計画を発
足した。新しい経営陣は民間部門から輸入された。活動部隊の効率性を向上するため日本
郵政は、既に乾いた衣類から最後の滴を絞り出す、トヨタ・スタイルの「just-in-time」ま
たは「カンバン」として知られる経営実践を導入した。その二年間の「行動計画」(2003-2004
財務年度)を2003年4月21日に発表した。その意図を日本郵政は簡保の運営コストを
2004財務年度に7.4%削減して6300億円にすることとした。民間生命保険会社と比較し
て競争を勝ち取るため日本郵政は、その意図を、顧客サービスを改善し、商品の提供を拡
大することだと発表した。特に日本郵政は、そのマーケットの努力を伝統的な貯蓄商品か
ら、既に民間生命保険会社がマーケットしている非貯蓄型の商品に移行するという。
 III. 日本の保険における差別的な規制体制はGATSに基づく国としての約束に違反
    する
 多国間の通商を扱ったウルグアイ・ラウンド(これはWTOを設立することになったも
のである)において、サービス関係の通商GATSを管理する新しい協定を決定した。特に
その中で注目すべきことは、GATSの署名国は、ウルガアイ・ラウンドの終わりに各メン
バーにより作成されたSchedule of Commitmentsで指定した部門について、サービスへの、
及び他のメンバーのサービス提供者への「国としての扱い:national treatment」の協定に、
各メンバーが取るであろう留保と条件をつけて、同意した。アメリカ合衆国は、生命保険
と損害保険を含む金融サービスの面で他のメンバーから国としての扱いの協定を行うこと
に、強く同意することを求めた。日本は、比較的小さな留保条件を付けて、他のメンバー
の保険サービスとサービス提供者に、国としての扱いの協定を約束した。この約束に直面
して、日本郵政/簡保に与えられた法的及び規制上の扱いは、明らかに国としての扱いを
否定するものであり、基本的にGATSの約束に矛盾する。
 この論文のこの節では、日本が国としての扱いへの約束を破っていることを、GATSに
基づく調査結果への法的基礎を説明する。また同時にそれは、WTOの紛争解決手続きを
通じて、メンバーによる日本の保険関係法令への挑戦は、審査委員の前に持ち出されるで
あろう。その実態は、日本郵政を実質的に転換することになる法的構造を立案するよう日
本の立法者達が適切に考慮すべきことである。日本がGATSの約束を遵守することは、
日本の改革者達が求めているように、日本郵政の抜本的な改革を必要とすることになろう。
それは簡保を含めて、如何なる保険の提供者に対して、何等特別な特権も無しにレベルプ
レーイング・フィールドを設定することである。
 日本における保険関係法令に対するGATSの問題は、その基本的な部分を次のように
述べられよう。日本政府は、簡保に有利なような日本の保険市場における競争状態を修正
して、外国の保険サービスの提供者に与えているよりも、もっと有利な扱いを日本郵政の
生命保険事業である簡保に与える法律を施行している。その結果日本は、GATSの第XVII
条に違反して、外国の保険提供者に対する国としての扱いを拡大している。日本郵政は、
「政府の権限の行使として」保険のサービスを提供しているのではないから、問題となる法
律はGATS第XVII条における国の扱いの要件に完全に該当する。更に、外国の保険提供
者に与えた差別的な扱いは、第XIV条に規定するGATSの義務への「一般的な例外」とし
て正当化できるものではなく、またGATSのAnnex on Financial Servicesによる適切な
"prudential"な法律として認められるものではない。
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○ 保険市場について思う(その20)

 産経紙(3/5日付)、日経紙(3/10日付)によると、(恐らく金融庁の強い要請により)支払
い漏れ調査のためか、各社は調査体制を大幅に強化しており、その他の日常業務は後回し
にされているようだ。日頃、保険金・給付金の支払体制は日の当たらない職場にしていた
のが、経営陣の首がかかっているためか、最近では不幸なことに逆になっているようだ。
 自主調査対象は入院・手術給付金などの不払い、及び請求がなかったケースとして3大
疾病特約の不払いであるという。日生では社員5000人超を投入しており、各社の調査人
員は内勤職員の3−4割に達しているようだ。
 この調査の裏には、生保会社に対する苦情件数が相当数にのぼっている事情があるよう
だ。この苦情件数は、私の時代(約30年前)と異なり、比較にならないほど大幅に増加し
ているようだ。私の時代には、苦情があればそれを経営管理に資するため、必ず担当役員
に報告するよう指導していたが、最近ではどうもそれが守られなくなったのか、または件
数が異常に増加してきたから、現場では「臭いものに蓋」の例えのように放置してきたので
あろうか。
 金融庁としても、新たに医療保険の申請を認めるにさいして、不払いの件数が増加する
危険性が想定されるから、例えば先駆者であるアフラックの給付金請求の処理体制を参考
にして、問題が発生する可能性を調査の上防止策の要項を策定して申請各社に指導を、例
えば毎年にように、給付金の請求手続き方法を通知し(契約ごとに担当職員・募集員・・・・
昔のデビット・システムのように決めて、その者を通じて通知させる)、もし保険事故が
発生すれば、その後の請求漏れがないよう担当者を決めて契約者に連絡すること等の注意
事項を予め徹底すべきではなかったか。その体制の整備が不十分とみなされるか、その整
備を忘れている申請会社に対しては、商品の申請を認めないことにすべきではなかったか
と思う。後になって、現状のような事態になってから、各社に対し不払い調査を命令する
なんて、監督官庁の果たすべき役割を考えていないと云えよう。
 ここまで問題が拡大すると、失われた契約者の信頼を取り戻すには時間がかかる。さら
に医療保険には、保険金・給付金の不払い問題だけではない。経営陣が早急に対処しなく
てはならない課題を多く抱えているのだ。
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○ ACLI資料:拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その14

  5.簡保との競争は市場の状態を歪める
 簡保の資産管理は、伝統的に市場の原則が適切な機能をしない環境の下で行われ、また
それの優遇した扱いが簡保をして、市場に基づかなかった価格を設定するという有利な扱
いが行われ、従って、生命保険市場の価格設定の構造を歪め、また民間の保険部門をして
危機に落とし込んでいる。
 1974年11月に、簡保はその予定利率を高くすることを含む、攻撃的な価格戦略を発足
した。簡保のこの積極的な価格戦略に対応して、その当時民間生命保険会社を監督する責
任があった大蔵省は「ガイダンス」を発表し、民間生命保険会社が簡保の追従して予定利率
を引き上げて、簡保と競争するよう推奨した。大蔵省の保険規制についての諮問会議であ
る保険審議会(Insurance Council)は、その1975年6月の答申書で次のように提議した。
  低料で低配の保険商品を望む声が大きくなっている現在、安全性を過度に見込み、予
  定利率を低く抑えて保険料を設定することには問題がある。一般の金利水準の動向、
  資産運用利回りの実績、昨年11月簡易保険が予定利率を5%(保険期間20年未満の
  ものは5.5%)に引き上げた等からみても、現在の4%中心の予定利率については、
  その引き上げを検討することが必要である。特に、保険期間が10年以下の契約につ
  いては、今後の資産運用利回りの予測もある程度可能と思われるので、更に高い予定
  利率を採用するべきである。(訳注)
  (訳注)この答申のこの部分は、私の昭和50年答申と真っ向から対立するものである。
     業界の希望は、簡保との競争から予定利率を大幅に引き上げるよう望んだであ
     ろう。しかし予定利率を決める理論的基盤は、グローバルに確立しておらず、
     企画関係者はアクチュアリが決めるものだと考えているかも知れないが、アク
     チュアリは一般の企画担当者が決めるみのだと考えている。従って、この答申
     による破綻会社の続出の責任を誰に求めるかは不確定である。恐らく、業界の
     強い要望に基づく答申である以上、責任は業界が取らなくてはならない。しか
     し、予定利率をどう決めるかの(金融工学でも)理論がないことから、長期(40
     年,50年)にわたる安全な経験数値に基づき保守的な予定利率を決める以外に
     方法はないことを銘記すべきである。
 普通は、民間の生命保険会社は、予定利率を決定するのに、市場の金利を含め、投資状
況を考慮するのであるが、簡保の積極的な料率設定と、大蔵省による簡保と競争するため
の業務ガイダンスを受けて、日本における殆どの民間生命保険会社は、その予定利率を引
き上げた。これは通常の状況ならば行わなかったであろう。
 その後の期間において民間の保険会社は、簡保の料率設定に競合することを繰り返し目
標とした。1984年4月に、簡保は再びその予定利率を引き上げ、その動きを再び民間の
生命保険会社が追従した。民間部門の簡保との競合は、1980年代から1990年代の初期を
通じて、高い水準の予定利率を維持させた。大手生命保険会社の幹部は、この時代を振り
返って、顧客の金融資金が簡保に移動する恐れがあり、民間保険会社は[簡保と我々の何
れかが最初に、予定利率を引き下げるかについて]耐久競争を強いられていた、と言及し
た(注)。
  (注)日本経済新聞1992年11月10日付、「簡保がその保険料を引き上げるのを遅らせる
   ことは、民間の生命保険会社をして困難に状況に追い込む」
 耐久競争は大きな災難をもたらした。1990年代における株価の下落と日本政府による
超低金利政策とが重なって、殆どの民間生命保険会社は、資産の投資により市場から実際
に得られた低利回りと、簡保との競争で引き上げた高い予定利率とのギャップである「逆
ザヤ:negative spread」の状態に苦しむことに追い込まれた。逆ザヤは、これら多くの会社
の資産を消耗させ、最後には、彼らの多くを支払不能に陥し入れた。1997年とその後に、
日本の七つの生命保険会社が破綻した。1993会計年度から2002会計年度の期間に、日本
の上位10社の逆ザヤ総額は13.1兆円に達し、また最近の新聞報道によると日本の上位10
社の「逆ザヤ」は依然として年間1兆円以上である。このしつこい問題は2003年に日本政
府をして保険業法を改正し、まだソルベントである会社が自主的に予定利率を切り下げる
のを認めた(注)。2004年1月に大手格付機関であるムーディーズが報告書を発表し、日
本の生命保険会社の状況は依然として逆ザヤの負担を蒙っているから、格付けはネガティ
ブのままであるとした。
  (注)保険業法を改正する法案は、国会に提出し2003年7月18日に成立した。2004年1
   月現在、民間生命保険会社は何れも改正法に基づいて予定利率を引き下げていない。
 簡保によりもたらされた競争上の圧力を受けて、民間生命保険業界の相当部分が敗退し、
これら民間会社の悲嘆とは対照的に、簡保は政府による保証に完全に支えられて自己の政
策を広報し続けた。破綻した民間会社の保険契約者を救出する財務負担は、残された民間
会社をして保険契約者保護プログラムに資金を払い込むよう求められ、公的部門と民間部
門の間の競争上の不平等を悪化させた。一連の会社破綻によりもたらされた民間部門の生
命保険会社が支払った負担の総額は8380億円に膨らんだ。簡保はこの支払いから免除さ
れたのである。
 E.新しい日本郵政公社のもとで簡保の民間部門への競争上の圧力は拡大された
 中央官庁の再編を目指す行政改革の施策の一環として、2003年4月に、日本政府は日
本郵政という新しい公社が設立され、これは日本郵政公社法とその関連する規則に基づい
て運営される。日本郵政が設立される前に、民間部門は簡保のサービスを設立当初の使命
に戻るよう、即ち民間部門を補完し、民間部門が提供するサービスとは競合しないよう主
張した。しかしながら、業界によるこれらの主張はどれも、日本政府による新しい法的枠
組みの最終結果に組み込まれなかった。日本郵政は、簡保と他の二つの郵政事業−−郵貯
と郵便事業−−を引き継ぎ、24,700の郵便局と43,620名の簡保職員を含む280,503名の職
員からなる全国ネットワークを構成し、また郵便生命保険法と他の関連条文は、この組織
変更を反映するよう改正された。この組織は、新しい企業に対し民間企業に良く類似した
運営をする権限を与えたが、簡保が公社の設立以前に政府の組織として享有していた特権
をごく僅かに変更しただけであった。日本経済新聞はその社説において、新組織の設立は
完全に自由な競争の場をもたらしたものではなく、また公社法は民間の競争相手に対し床
を積み重ねた。日本郵政が新法により得た有利な点は、下記のものが含まれた。
  ・税金の免除 ・・・・・・
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○ 国際会計基準問題

 保険事業への国際会計基準がそろそろ大詰めに近づいてるようだ。その中で日本がどの
様な取り組みをするかが伝わってこない。特にこの問題は、監督官庁にとって重要課題で
あるはずなのに、どういう方針なのかが聞こえてこない。まさか、国際会計基準が決まれ
ば、日本はその通りにする(コンプライアンスする)というのではないだろう。保険事業の
内容が世界的に共通のものではなのに、基準が一本化すると考えているのでは無かろう。
最初にこの国際会計基準制定の動きが始まると聞いたのは10年ほど前のことであった。
そのとき、真っ先に気になったのは、解約返戻金がフィックスされている国と、そうでは
ない国(例えばカナダや英国)とがあり、我が国は前者であるから、負債の最大科目である
責任準備金の扱いに注意しなくてはならないことであった(その後、解約返戻金がゼロの
契約が出現して多少事情が変わってきたが)。さらに純保が基準である国はないはずだが。
 またその当時、アメリカにおいて法定保険会計(監督官会計:SAP)が決まり、アメリ
カではSAPとGAAP会計の二本立てとなり、私はアメリカが国際会計基準をどう処理
するかを懸念していた。もしかしたら、アメリカはSAP会計とGAAP会計の二つを同
時平行して実施するのではないかと考えていた。
 その後英国の金融庁が、責任準備金の基準を二本立てにして、一つは現実主義的な責任
準備金を、もう一つは法定の責任準備金を定め、その何れか大きい方を正規の責任準備金
として計上するやり方を策定して各保険会社に通知し、国際会計基準の議論の行方を見守
っていることを知った。
 さて、アメリカの受け止め方がどうなるかが分からないまま、日本としての対応をどう
するかを提示すべき時期になっていると考えるのだが、日本では審議会も開かれないまま
現在にいたっているのが心配である。老人の取り越し苦労に終われば幸いである。
 アメリカの法定会計基準の持つ一つの特徴は、ソルベンシーを考慮して、「容認資産」と
「非容認資産」とを区別し、後者は法定会計の中では計上しないことであるが、我が国にお
いてもそのことを議論すべきであると思うし、また我が国の第三分野の保険については、
保険給付の内容が我が国独特であると思うので、ソルベンシーの観点から、またディスク
ロの観点から、どの様な制限を設けるべきかを検討すべきである。さらに、会計基準は当
然のことに法人税との関係を整理しなくてはならないが、我が国においては議論を避けて
きた状態にあるのが心配である。
 その他にも、区分経理の扱い、不足責任準備金の扱い、IBNRのこともある。
 最近、「2009年 国際会計基準の衝撃」(橋本尚著 日本経済新聞出版社刊)という本が
出たので、中身はまだ読んでいないが、テーマが気になったので話題として取り上げた。
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○ ACLI資料:拡大する日本の簡保事業(2004年3月):その13

 総合して簡保は、これらの分野において更に競争を図ることが、被保険者一人あたりの
カバレッジ総額に上限(1千万円/13百万円)を法律上課せられていることから制約され
ている。それにもかかわらず簡保は、その保険契約者のカバレッジ総額が上限に達するま
では民間の保険会社と完全に競合し、また簡保はこの制約の下でカバレッジにおいて高い
占率を占めることが可能である。更に簡保は、上で記したように、これら幾つかの保険種
類において、特に医療関係の種類を拡大する上で明確な法律上の制限を受けている。
 要約すると簡保の保険商品は、日本の保険業界及び民間保険会社と簡保により報告され
た保険の最終需要カテゴリの各面で、激しく競争している。簡保の民営化により起こりう
る影響を考える時、以下に検討するようにこの法的な制約がなければ簡保は更に高い市場
占率を獲得するであろう。
     c.簡保の新商品は、民間部門の有期定期、終身生命保険と直接に競争しよう
 MPHPTにより承認され、2004年1月から簡保が引き受ける「五重の給付を持つ終身生
命保険:Whole Life With Five-Fold Benefits」は、民間部門の有期定期保険、終身保険と直
接競合する。両方の商品は、給付において極めて類似している(注1)。同じように簡保の
医療特約(例えば、疾病入院特約)のついた新商品は、民間部門の医療カバレッジ特約の付
いた有期定期保険、終身生命保険と極めて類似している。日本の有名なファィナンシャル
・プラナーの一人は、簡保が医療特約を付加できることが、死亡と医療のカバレッジを持
つ安価な契約に興味を抱き、また簡保の新商品に切り替えるよう消費者が勇気づけられる
であろう、と予想した(注2)。
 (注1)簡保の商品は、適度の終身保険に一定年齢(例えば、60歳)で終了する定期死亡給
   付を組み合わせたものでり、終身保険の死亡給付は当初の死亡給付の五分の一に減
   少する。この定期部分を付けることにより、通常の終身保険商品よりも60−70%
   安い保険料で、一定の年齢に達するまで、かなりの死亡給付が受け取れる。
 (注2)新商品の最も注目すべき点は、特約の形で付加できる医療費カバレッジである。
   これまで簡保は、割高な終身生命保険だけを提供してきたが、ハイブリッドの商品
   は特約が付加されていても高価ではなくなろう。高価な簡保の商品を避けてきた人
   達も、改善された医療給付を希望して切り替えるであろう(週刊現代2003年12月
   13日号)。
  4.簡保は民間会社のようにその商品を積極的にマーケットする
 民間会社のように、簡保はTVやラジオのコマーシャル、チラシ、及びパンフレットを
使用し、またその商品とサービスをウェブサイトで動き回るインターネット・サービスで
推奨している。また同時に日本の有名人と漫画のキャラクター達を、広範囲な顧客層を引
きつけるためにイメージ・キャラクターとして使用している。その広告は、日本の法律に
基づいた特別な特権の結果を享受していることの有利性を強調している。従って簡保の契
約は政府が保証していることからもたらされる「安全性」と「信頼性」を、これら広告の手段
を通じて強調されている。簡保のインターネット・サイトは、その保険商品の情報だけを
提供するのではなく、ホテルと他の施設を含めた「保険契約者への福祉施設」についてもP
Rしている。これらの施設では、温泉や伝統的な食事を格安な料金で簡保の保険契約者に
提供して、また従って保険を販売するマーケッティングの手段として役立っている。
 「簡保がそんなに巨大になったかを説明」する上で見逃せないのは、簡保は厳しい販売体
制を持っていることが知られていることだ。2003年3月に、簡保は27,258名の販売職員(外
野職員と呼ばれる)を抱え、その全てが政府の職員である(注)。それでも、民間会社と同
じように、これらの職員の給与は二つの要素、基本給と販売実績に依存して支払われるボ
ーナス(又は特別な業績手当)からなっている。また同時に各販売職員は、厳しい販売目標
を課せられており、それは民間生命保険会社における販売目標よりももっと厳しい。目標
を達成できない職員は、伝えられるところによると、厳しいペナルティ、例えば「保険契
約の販売と役割演技の訓練」と同時に厳しい終日の教育を受ける。その様な実践は職員に
対し過度なプレッシャーを課し、また伝えられるところによると「風評被害による販売促
進」(その中では民間の生命保険会社経営への懸念が掻き立てられていた)、職員の親戚へ
の販売、及び販売目標を果たすため保険契約の完全なでっち上げが勧められていた。
  (注)27,258名の販売職員の他に、簡保は16,362名の「内勤職員」を抱えている。彼らは、
   顧客サービスを提供し、また管理業務に従事する郵便局か又は七つの郵便生命保険
   業務センターで勤務し、給付金の支払いと返戻金の承認、及び契約の解約と変更業
   務を扱っている。
 民間の生命保険会社と比較して簡保の販売活動に対し適用されている厳しくないルール
は、以上のような長期間にわたる職員への強圧的なやり方を、長期間にわたって継続する
ことに役だった。2003年に簡保が日本郵政に変更される前は、郵便生命保険法は保険業
法第300条・・・・民間生命保険会社が虚偽の文書の使用、募集に際しミスリードさせる比較
をすること、またリベートのような特別な給付の提供のような一定の募集行為を行うこと
を厳しく禁止している・・・・に類似した規定を含んでいなかった。日本郵政が設立された際
に、MPHPTの役人は、簡保と民間の生命保険とは性格上著しくは異なっていないことを
認識していたから、保険業法第300条と同じ規定が組み込まれた。
  郵便生命保険法に基づいて市民に対し提供される郵便生命保険は、民間の生命保険会
  社を規制する保険業法の対象になっていない。それにもかかわらず、郵便生命保険は、
  性格からみて、民間の生命保険とは著しく異なっていないから、その保険募集に際し
  秩序を維持し、それによって簡保事業の健全な発展を達成することが必要である(注)。
  (注)簡保の姉妹組織である郵便生命保険の保険契約者協会が2002年10月号の保険展
   望で示した解説による。
 郵便生命保険法には一定の募集行為禁止規定を含んでいるけれど、簡保による不法な募
集行為への適用水準が競争相手の民間部門へのそれと同等であるかは疑問である(注)。例
えば、MPHPTの業務運営への監視体制が検査官室に限定され、僅か12名の陣容で簡保
と郵貯の検査に当たっているのに対し、金融庁は460名の検査局を保持している。実際に、
詐欺や他の募集行為違反が伝えられているけれど、MPHPTが簡保に対し何等かの規制措
置をとったとの証拠はない。最近、簡保の職員による繰り返された不法な募集行為が明ら
かにされた。例えば、2003年4月から10月の期間に、三つの郵便局の職員が彼らの募集
成績を膨らませるために700名の架空名義を使用したことが発覚した。また同時に2003
年3月に、5万件に近い資産貯蓄型の契約が全国の郵便局で資格のない個人に対し販売さ
れた。2003年12月に、大阪と京都地区にある九つの郵便局で31名の販売職員が、1995
年から2003年8月の間に行われた210件の偽造保険契約の販売により、ボーナスを受け
取ったと報道された。
 (注)例えば、民間の生命保険会社は、その募集が第300条に違反したとき、保険業法と
   施行規則に基づき金融庁に報告するよう求めている。もし後になって金融庁の検査
   により、会社の募集について報告していない違反が見つけられた時、民間の生命保
   険会社は業務の停止を含む罰則が課せられる。郵便生命保険法とその関連規則には
   簡保に同様な報告義務や罰則を課しておらず、さらに、前節で記したように、簡保
   は監督官庁であるMPHPTと密接な関係を維持し、また金融商品販売法からも適用
   除外を受けている。

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